5.31.三匹の狐
急に背中から声が聞こえた。
それも三匹分だ。
一体何がいるのかと思い、首を背中に向ける。
だがいない!
『何だお前ら!? 何処に居る!』
『『『毛の中に居りまする』』』
『ざっけんなこらー!!!』
全力で体を振るって、背中に乗っているであろう三匹を振り落とす。
すると、何かが毛の中から飛んでいく感覚が分かった。
それが三回ほど続いたのを確認した後、そいつらを見る。
すると、そこには小さな狐がいた。
赤、緑、黄色という変な色をしており、まるで信号機だ。
丸っこいフォルムをしているので、団子の様にも見て取れるのだが、食欲はそそられない色をしている。
全く違う方向に飛んでいった狐は、ササッと集まって俺の方を向く。
『『『何をするのですか!』』』
『こっちのセリフだわボケ! 貴様らいつの間に俺の背中に乗りやがった!』
『『『貴方様が竜巻を起こす直前でございます』』』
マジかよ。
全然気が付かなかったんだけど。
ていうかこいつら一体何なんだ。
狐っていうことは分かるけど、無駄に息ぴったりだし。
兄弟か?
『えーと、お前らも山のヌシの座を争ってる一派なの?』
『『『初めはそうでしたが、貴方様を見て諦めました。あんな馬鹿みたいな竜巻を起こせる敵と戦いたくはないのです』』』
『馬鹿みたいは余計だぞコラ』
まぁ確かにそう言う表現が正しい攻撃だったとは思うけどな。
あれが一番簡単だったし、殲滅もできた。
後で掃除しに行かなきゃだけど、それくらい簡単に終わることだ。
えーと?
で、こいつらは何で出てきたの。
戦う意思はないというのは分かったけど……。
『で? お前らは何が目的で俺の前に出てきたの?』
『『『よくぞ聞いてくれました! ですがまずは名前をお教えいたしましょう! とうっ!』』』
三匹は一度跳躍してから俺の前に立つ。
すると、赤い狐から話始めた。
『私は天! 気候魔法を得意とする日天狐にございます!』
『私は界! 空間魔法を得意とする狭間狐でございます!』
『私は冥! 深淵魔法を得意とする闇悪狐でございます!』
一匹一匹が背伸びをしながら、そうやって答える。
とても自慢げに話しているのだが……その魔法を俺は全く知らない。
なんだそれ。
『知らない魔法ばかりだな……』
『『『それもそうでしょうそうでしょう。私たちが考えた魔法なのですからっ! へっへっへ』』』
『笑い方気もち悪っ!』
なんでそんな丸いフォルムから気持ち悪い声が出るんだよ。
お前ら笑うな黙ってろ。
『『『そして、私たちは貴方様の配下に収まろうかと思っております! お名前をお聞かせくださいませ!』』』
『…………まぁ、戦闘しないで仲間になってくれるってんなら別にいいか。俺はオールだ。他にも仲間がいるが、それでも問題ないのか?』
『『『問題ありません』』』
なら別に断る必要は全くないな。
だが、普通は戦ってリーダーの肉を食うのが成り代わりの条件。
こいつらはそんなことはしない様だ。
まぁ、ただでさえ数が少ないしなぁ。
ていうか狐か。
前世では結構上位の存在として存在していたと思うが、ここではどうなのだろうか。
知らない魔法ばかり持っているし、もしかしたら結構強いのかもしれない。
ちょっと魔法でも見せてもらうことにするか。
『俺の知っている魔法の中に、お前らの魔法はない。それ教えてくれないか?』
『『『構いませんが、条件がございます!』』』
『お? なんだ?』
三匹はお互いの顔を見合わせてから、何度か頷いた。
そしてもう一度俺の方を向いて、三匹が揃って声を発する。
『『『竜の群れを鎮めて欲しいのです』』』
俺はこいつらが何を言っているのか全く理解が出来なかった。




