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5.29.延長戦


『何て数だよ……』


 幸い距離はまだある。

 ここにいる魔物の軍隊を殲滅してもここにはまだ辿り着かないはずだ。


 俺が担当してた敵は大方やっつけてしまった。

 周囲を見渡してみても、起き上がるそぶりを見せる敵はいない。

 ベンツの方でも雷撃は止まり、周囲を走って取りこぼしがないか確認しているようだ。

 さすが、動きが違う。


 ガンマの方はもう少しかかりそうだ。

 大きな音が鳴り響いているのがその証拠。

 足遅いからな、あいつ。


 水狼の王は既に敵を殲滅していたらしく、いつの間にか消えていた。

 役目を果たしたら勝手に消えてくれるようだ。

 有難い。

 もう一回使うかもしれないけどな。

 そん時は頼みますよ水狼の王さん。


 とりあえず、ガンマの方へ加勢に行くか。

 ベンツも同じ考えだったらしく、俺が動いたとほぼ同時にガンマの方へと駆けだしたようだ。

 まずは完全に殲滅してしまうとしよう。



 ◆



 敵自体はそこまで強くない。

 数が多くて的が小さいというのがネックだったが、それも魔法で対処できた。

 ガンマは地形を壊さない事だけに集中して戦っていたようなので、どうしても動きが遅くなってしまったのだという。

 ちょっと制限を設けすぎたかもしれないな。


 そんなこんなで、俺たち三匹は第一波の魔物の軍勢を殲滅することに成功した。

 これをまた無限箱に入れなければならないというのが面倒くさい。

 ま、今はそんなことを考えている場合ではないのだがな。


『どうする……? 結構な数だけど……』

『初撃はガンマに任せるしかないな……』

『なんでちょっと嫌そうにするんだよお前ら』


 だってガンマが暴れた後、後片付けするの俺だもん。

 それが面倒くさいし、木は全部折れてしまうだろうし……。

 森じゃなかったらガンマに暴れてもらってもよかったんだけどな。

 この状況では力を振るってもらわなければならないのだがな。


 今回は地形の事は考えず、とにかく敵を壊滅させることを目標にしよう。

 しかし、問題は上空の敵だ。

 匂いで感知してみたところ、そいつらは随分と大きかったように思える。


 ガンマとベンツは地上戦に特化した魔法しか持っていない。

 俺も似たようなものだが、使える魔法は沢山ある。

 だけど強力なのは無いなぁ……。


『歩いている奴らはお前ら二匹が。上空のは俺が何とかするって事でいいか?』

『僕はそれで良いよ。空の敵は手が出せない』

『俺も問題ない。跳躍で届きそうなもんだが、飛んでるときに総攻撃かけられたら敵わんからな』

『よし、じゃあ作戦はそれで行こう』


 対空魔法……。

 俺、どれくらい持ってたっけ。

 えーと……。


『……風魔法でいいじゃん』

『ん?』

『え?』


 そうじゃん!

 風魔法で全部吹っ飛ばそうぜ!

 はっはっは何でこんな簡単なことに気が付かなかったんだ!

 いろんな魔法使いたいからって接近戦にこだわってた!

 そんなの捨て置けば全然行けるじゃねぇか!

 肉は全部捨てることになるかもだけどな!


『おし! 俺だけで行ってくる!』

『嘘でしょ?』

『ああ、行ってら』

『ガンマ!?』


 何かガンマだけは了承してくれた……。

 どうした。


『いや、兄さんが出来るって言って、出来なかったことって無いからさ。任せてもいいんじゃね? 俺だって兄さんの力全部知ってるわけじゃねぇし』


 ただ使う機会がなさすぎるだけなんですけどね。


 ベンツはガンマの言葉を聞いて、納得する部分もあったようだが、やはり心配なのだろう。

 考えこんでいる。

 だが、諦めた様にため息をついてから、俺の方を向いた。


『……じゃあ任せるよ。僕たちは皆が心配だから帰るからね?』

『おう。任せろ』

『っしゃ! じゃあ兄さん任せたぜ~』

『ガンマこら! 先に行くなって!』


 ガンマが跳躍で飛んでいき、ベンツはそれを追うように走って帰った。

 俺は敵陣の方へと向かう。

 魔法を使えばすぐに到着した。


 そこには、森を埋め尽くさんばかりの魔物が進軍してきていた。

 蟻の大群の様で少し気持ちが悪い。

 よく見てみれば、その群れもやはり隊列を成しているように見える。

 これで実質三回目の魔物の進軍だ。


 一体何がこの魔物の群れを動かしているのだろか。

 魔王でもいるのかこの世界。

 まぁなんにせよ、子供たちや仲間に危害を加える奴は許さん!


『父さんから教えてもらった風魔法……。俺がやると一帯が吹く飛ぶとか言われてたから、使うのはこれが初めてだな』


 オートから教えてもらった風魔法は四つ。

 竜巻、台風、つむじ風、風圧だ。

 これは一度も本気で使ったことがない魔法だ。


 今回は手加減する必要は全くない。

 使うの魔法は竜巻だ。

 山なので竜巻は普通は発生しないが、無理矢理発生させる。


 イメージは前世で見たことがあるから問題ない。

 テレビやニュースなどでも結構見て来たと思う。

 その中で一番デカい竜巻を想像して、魔法を使うために魔力を体の中に取り入れる。

 今まで見て来た中で、一番大きかった竜巻は映画で見た奴だ。

 どんな映画かは忘れたが、それが印象に残っている。


 森を破壊することになってしまうが、後で土魔法を使って元に戻してやろう。

 幸い今は春になって来たばかり。

 丁度新芽が出始める頃だ。

 成長を使えば、すぐに同じ規模の森を生やすことが出来るだろう。


 という事で……!

 殲滅開始!


『竜巻!!』


 敵陣の先鋒がいる場所に向けて、竜巻を作り出した。


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[一言] ……あっ(察し)(被害状況やばそう)
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