5.23.魔法練習
春っつても寒いなぁ。
ま、まだ冬の寒さが尾を引いている感じだし、まず山だし、仕方ないのかもな。
『ふんふん~』
『寒い……』
『レイちゃん? もう少しそれ抑えれない……?』
『無理なの。調整が利かないの』
あれ?
原因ってレイじゃね?
なんか今日は氷魔法の調子がいいのか、いい感じに体の周りに氷を付けている。
冷気がこちらまで伝わってきて少し寒い。
いや、少しどころじゃないな、めっちゃ寒い。
レイの作り出す氷は少し特殊だ。
体につけている氷は空気に触れて解けるのだが、その時大量の冷気を放つ。
ドライアイスみたいな感じだ。
そして、その冷気も周囲を凍らせる効果が微弱ながらある。
それにより、レイは暑さから難を逃れているようだ。
こうしないとレイは動けなくなってしまうので、仕方がない。
だがしかし寒いなおい!
『俺の毛も凍ってるな。割と強い冷気みたいだ……』
『すごいでしょ!』
『凄いのは凄いが、それで味方を傷つけているという事は忘れるなよ?』
『ハッ』
そこまでは考えていなかったらしい。
俺の言葉にハッとしたレイは、すぐに皆と距離を取る。
それにより三匹はほっとしたようだが、レイは一匹だけになってしまった。
なんだか悲しい。
なので、俺はレイと三匹の間に入る。
俺の幅があれば、ニアたちには冷気はこないだろう。
『オール兄ちゃんは大丈夫なの?』
『俺も氷魔法は使えるからな。問題ないぞ』
『あ、そっか!』
まぁ冷たいっちゃ冷たいんだけどね。
暫く東の方に歩いていくと、広い空間に出た。
平原が少しだけ続いている場所なので、魔法の練習にはぴったりの場所である。
俺が暴れるとこの辺の地形が変わりそうなので、手加減はしている。
住処から近い場所はあまり荒らしたくないからな。
とりあえず、この辺で魔法の練習だ。
『よし、じゃあまずはニアからやってみてくれ』
『はいはーい』
ニアは光魔法と闇魔法を使う。
流石にこの二種類の複合魔法は思いつかないので、とりあえずは単体でしっかり使えるようにと練習をさせていた。
さて、一体どんなものを見せてくれるのだろうか。
ニアは構えを取り、光魔法、太陽の杭を展開した。
俺が初めて教えた魔法である。
それをばらばらの方向に飛ばす。
何故ばらばらの方向に飛ばしたのかはわからなかったが、次にニアは闇魔法の零距離移動を使って、太陽の杭をワープゲートに入れた。
その後、違う所にワープゲートを数か所出現させて、殆ど同じ場所に太陽の杭を撃ち込んだ。
器用なことをするなと感心していると、ニアがこちらを振り返る。
『凄いな。使ってる魔法は二種類だけか』
『うん、これだけよ。それくらいしか使えないし、私は攻撃魔法を持ってないから……』
『光魔法は拘束を重視したものだからな。だがアンデットにはそれが攻撃になるはずだ』
『ねぇねぇ、他には何か出来ないかな?』
『むぅ? じゃあこれはどうだ?』
ニアのあの動きを参考にするのであれば、違う事も結構できるはずだ。
だがニアの使える魔法は二つ。
となれば……。
俺はワープゲートを二つ展開させる。
そして、そこに太陽の杭を打ち込んで入れた。
太陽の杭はすぐに違うワープゲートから出現するので、それをキャッチするようにまたワープゲートを出現させる。
後はこれの繰り返し……。
とは言ってもこれだけだ。
同じ位置に向かい合うようにワープゲートを出現しておけば、半永久的に太陽の杭が走っていく。
太陽の杭は光魔法で作られている為か、距離減衰などは全く生じず、飛ばしている限り落下もしない。
ただただ何かに当たるまで真っすぐ飛んでいく。
『なんか普通だね』
『今はな。これをこうするとー……』
俺は数十個の太陽の杭を同じワープゲートにいれる。
すると、ほぼ絶え間なく太陽の杭が行き来するようになった。
後はワープゲートの大きさを変えてやれば、任意の方向に太陽の杭を飛ばすことが出来る。
まぁこれは予備の武器だな。
使うのであれば、太陽の杭が行き来している場所に一つワープゲートを置いておけば、連続で太陽の杭を射出できるというくらいである。
勝手に飛んでくれるので、俺がやることはワープゲートの角度調整のみ。
『こんな感じ?』
『難しそう!!』
『いや、ニアがやった奴よりは簡単だぞ』
俺の簡単だもん。
ていうか、零距離移動を使った物だとこれくらいしか思いつかない。
『ニアは闇魔法をもう少し増やすといいかもしれないな』
『んー、どんなのがいいかな?』
『俺だと闇の糸だな。結構便利』
『それ使って何かやってみて!』
『あー、そうだな』
それならとても簡単だ。
闇の糸を出現させて、太陽の杭を持たせる。
これだけで攻撃回数は多くなるし、闇の糸でも拘束はできる。
形的には不格好だが、一本の闇の糸に数個の太陽の杭を取り付けておけば、鞭のようにもなるので使い勝手は良い。
『そい』
鞭を振る様な要領で、太陽の杭を地面に撃ち込む。
等間隔に太陽の杭が撃ち込まれた。
『うん、ニアはやっぱりもう少し光魔法と闇魔法で使える物を増やそうか』
『数が少ないのね……』
『数が少ないとできる事も少なくなるからな。多ければ多いほどいいぞ。だがあの零距離移動の使い方は凄かった。俺じゃ真似できん』
『本当!?』
いや、これまじまじ。
絶対できないと思うもん。
流石、感覚で戦う動物は違うぜ……。
ふと後ろを見てみると、次は私だ私だとじゃれ合っている三匹の姿が見て取れた。
これは一匹に時間を掛けてはいられなさそうだな……。
俺もできる事少ないけど、まぁ出来る限り教えてみよう。




