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5.20.冬ごもり


 本格的に雪が積もって来た。

 もう既に俺の足首は埋まってしまっている。

 基準が俺ではよく分からないと思うので、ガンマで例えると……。

 肘辺りでいいのかな?

 そこまで雪が積もってきている。


 雪が降り始めてあまり時間は経っていないのだが、これは本格的に降り始めた時が怖そうだ。


 魔物の群れを倒してから一ヵ月。

 あれから特に何か起こったわけでもなく、今は皆で暖を取っている。

 割と平和です。


 洞窟は風を完全に遮ってくれているので、外にいるよりかは全然暖かい。

 だがやはり火が欲しいというのも事実。


 そこで俺は炎魔法を研究してみることにした。

 炎魔法は炎を出すだけではなく、温度自体を変えることが出来るという事を最近知った。

 殆どレイのお陰ではあるが。


 氷魔法は炎魔法で水を冷やして使用する。

 となれば、全く反対のことが出来てもおかしくない。

 という事で、俺は炎魔法を使って周囲の温度を暖かくしようとして見たところ……。


『あったかーい』

『すぅ……』


 めっちゃうまくいった。

 自分でもここまでうまくいくとは思っていなかったので、少し驚きである。

 もう誰も洞窟から出たくないと言わんばかりに地面に引っ付いている。


 一ヵ月も一緒に過ごせば仲良くもなる物で、スルースナーがリーダーの群れと一角狼たちはすっかり打ち解けた。

 今は別の洞窟ではなく、皆で一緒の洞窟に寝転がっている。

 子供たちの面倒はアリアが見てくれている為、俺たちの負担はぐっと減った。

 やはりお母さんって必要だよね。


 しかし……。

 約一匹、この暖かい空間に慣れない狼がいた。


『あーつーいーのー!』

『あ! ちょっとレイちゃん! 勝手に外に出ない!』

『あついんだもーん!』


 レイはぴょぴょーんと外に飛び出し、雪に埋もれて動けなくなった。


『むぐぐぼぼ……』

『レイちゃーん!?』


 暴れてどんどん雪に埋もれていってしまったらしい。

 声がどんどん小さくなる。


 レイは氷魔法の使い手だ。

 水魔法と炎魔法を持ってはいるが、何故か個別には使えない。


 そしてこの氷魔法、ちょっとわかった事がある。

 氷魔法を使うと体温が少し下がるのだ。

 俺は炎魔法で温めなおすことが出来るが、レイはそれが出来ない。

 その代わり、レイの体温は少し冷たくなっていた。


 触るととても冷たいのだ。

 そして、レイは毛並みの色が変わっていった。

 元々は黒の毛並みの中に白い線が何本か入っていたのだが、今では淡い水色をした毛並みになっていたのだ。

 白色に近いのだが、よく見てみると水色になっている。


 魔法の適性で色が変わったのは初めて見た。

 スルースナーの群れはそれが色濃く出ているようではあるが、俺たちにはあまり出ていない。

 生活の環境とかで変わったりするのだろうか?


『ぶはぁっ!』

『もー、危ないでしょー?』

『だって暑いんだもん。雪の中くらいが丁度いいの!』


 いやそれは流石にどうかと思うぞ……。

 てか、この温度で暑いって言ってたら夏どうなるんだ?

 レイ大丈夫かな……。


 まぁ俺も氷魔法が使えるし、暑がっていたら冷ましてやろう。

 ……あれ?

 俺もしかしなくてもエアコンになってね?

 皆が快適に過ごしてくれるのであれば、それでいいけども。


 因みに、あの時の魔物の群れで回収できた食料だが、これが結構多い。

 来年の冬も越せるんじゃないの?

 っていうくらい多い。

 まだまだ全然減っていません。


 おかげさまで洞窟の奥が埋まってしまいました。

 無限箱って大きさは小さくすることが出来るけど、消すことはできないんだよね。

 ま、これで食料の心配は完全に無くなった!


 だけどね。

 皆はやっぱり狩りたての方が好きらしく、今でも狩りには行くようにしている。

 晴れている日か、曇っている日。

 どちらにせよ天候が荒れていない日であれば狩りに行って獲物を探している。


 だがやはり冬。

 なかなかいない。

 空振りで帰ってくる事も多いので、残っている食料には本当に助けられている。


 俺も満足するだけ食べられるくらいあるしな!

 これが一番大きい気がするぞ。


 俺たちの冬ごもりはこんな感じ。

 意外と快適で驚いているが、慣れてしまえばそれも日常。

 時々狩りに出て、ご飯を食べてゴロゴロしてます。


 冬の間は敵も動かないようなので、戦うといったことはしなかった。

 今は冬の序盤。

 後半にかけて積雪が増えてくるかもしれないが、俺たちは冬を越すことが出来た。

 冬の時期も獲物がいないわけではない。

 もしこの食料が無くなったとしても、生きていく分に困らないだけの食料は手に入るだろう。


 そして、気が付けば雪が解け、春がやって来た。


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