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5.12.一角狼


 四匹の一角狼は、隊列を組んで構えていた。

 先頭の一角狼が一番体が大きいが、角はそこまで大きくない。

 他二匹も同じような感じだ。

 一番角が大きいのは、一番体の小さい奴一匹。


 そいつの角からは強めの雷が放電されている。

 近づいただけでダメージを喰らってしまいそうだ。


『ベンツ』

『敵は四匹。角の短い奴は魔法自体に攻撃力は無いけど、長い奴は魔法の威力が桁違い。スピードでは僕の方が上だけど、魔法の発動速度は向こうの方が上だね』


 まぁ雷魔法だもんな。

 この魔法の中で一番発動速度が速い。


 しかし雷か……。

 一回でも当たってしまえばそれから動けなくなってしまう可能性がある。

 結構危険だよなぁ。


 まだ雷魔法を防げる魔法が一つしかないので、俺は必然的に土魔法で戦って行くことになるかもしれないな。

 ベンツは音を聞いて回避できるようだし、俺は魔法のごり押しで戦って行けば勝てるかもしれない。

 とは言えこちらは数で不利。

 俺も土魔法を極めている訳ではないので、満足に戦えるか怪しい所だ。

 まぁやるしかないんだけどな!


 と、そこで一角狼が話しかけてきた。

 一番角の長い狼だ。


『……君がそっちのリーダー?』


 子供っ!?

 っぽい声だな……。

 子供がこんな所にいるわけないわな、うん。

 とりあえず返事しとこう。


『そうだが』

『じゃあ君を倒せばいいのね』

『山のヌシの座が欲しいってんならそうだが、俺もただやられるわけにはいかんでな』

『大丈夫。僕も楽して勝とうだなんて思ってない』


 角の長い一角狼は、雷を強く放出し始めた。

 近くにあった木に雷が当たると、一瞬で焦げてしまう。

 随分と強力な魔法だ。

 雷の魔法適性が二つくらいあるんじゃないかこれ。


 すると、その強い雷は仲間に当たって繋がった。

 前線に出ていた三匹の一角狼は体を震わせてから構えを取る。


 おっと……?

 これ……ドーピング的なあれですか……?

 補助魔法だ!! すっげぇ!!


 感心していると、三匹の一角狼がとんでもない勢いで俺とベンツに接近してきた。

 だが見えないことは無い。

 とは言え、少し油断していたので土魔法を発動させるだけの時間がない。

 とりあえず風で吹き飛ばす。


『そいっ』

「グルルルッ!? ガルァ!?」


 風魔法でつむじ風を吹き起こし、二匹の一角狼を巻き込んで遠くに飛ばしていく。

 それそれ~。


 残りの一匹はベンツを追いかけているようだが、逆にベンツに遊ばれている。

 まぁベンツだったら勝てるよな……。

 あれくらいの速度では、ベンツには勝てない。


 一生懸命追いかけて爪と雷魔法を放っている様だったが、最後には隙を見せてしまい、ベンツに思いっきり蹴飛ばされた。

 蹴り飛ばされた一角狼は、大きく後退して角の長い狼の所によろよろと下がる。

 それを見て苛立ち覚えている様だ。


「グルルルル……」

『大したことないよ兄ちゃん』

『ああ……。いやでもあの補助魔法面白いなぁ……。俺にもできるかな』

『え?』


 丁度雷魔法に適性のある奴が目の前にいる。

 俺はベンツに向けて雷魔法を放つ。


『うぉおおっちょ!? 何!?』


 びっくりするくらい高速で回避された。

 説明するの忘れてたすまん……。


『いや、あいつの真似できないかなって思って……』

『一言言ってよ!!』


 あ、ごめんなさい。


『仲間割れとはいい度胸だな!』


 そう言いながら、残った二匹の一角狼が突撃してきた。

 角の長い狼の身体能力は他の狼に比べると低い様だ。

 足が遅い。


 とりあえず怪我させないようにしたいから……うん、さっきみたいに風魔法で吹き飛ばそう。

 俺は風魔法を発動させる為に、息を大きく吸った。

 だが、ベンツに止められる。


『僕が行くよ』

『……まぁいいか。よろしく』


 ベンツが低姿勢を取る。

 あれだけベンツに遊ばれて、それでも飛び掛かってくるのは立派な事ではあるが……。

 多分こいつら勝てないだろうな。


 ベンツは爪をガッと地面に突き刺し、しっかりと地面を蹴って二匹の一角狼に向かって突撃した。

 相手が一歩進む間もなく、相手に攻撃を仕掛ける。


『雷伝』


 そう聞こえた瞬間、大きな体をした一角狼が顎をかち上げられていた。

 ベンツが足で蹴ったようだ。

 それを見た角の長い狼はすぐにベンツに攻撃を仕掛ける為、魔法を放つ。


『っ!? 雷針!!』


 雷の針をベンツに向かって放ったのだが、それは易々と回避される。

 その瞬間、面白いことが起こった。

 確かにその攻撃はベンツに向かって放たれたのだが、それは体の大きな一角狼に直撃する。


「ガガガッガッガッガガガガ!!?」

『!? な、なんで!?』

『雷伝は雷の強い方に引き寄せられる魔法。僕が纏っている纏雷より、君が繋げてる雷の方が強いから、その攻撃は仲間に飛んでいく。雷魔法限定の防御技』

『!!?』


 いつの間にか後ろにいたベンツに驚き、距離を取ろうとするがもう遅い。

 既に雷で作られた大きな爪が腕についており、ベンツはそれを乱暴に振るう。


『雷爪!!』


 雷爪は一角狼を傷つけることなくすり抜けた。

 不発かと思ったが、それはすぐに効果を発揮する。


『ガガッガガガガガガガッガッガガ!?』


 一拍遅れて雷撃が体を突き抜ける。

 暫くそれは続き、ようやく止まったと思ったら、一角狼はどたりと地面に倒れてしまった。


 ベンツは腕を軽く振って、ドヤァという表情で俺を見る。

 あんまりこういう姿を見たことがなかったので、一瞬反応に遅れてしまったが、とりあえずよくやったと褒めておいた。


『おっ』


 吹き飛ばされた二匹が丁度良く戻ってきたようだ。

 だが、この場を見て現状を理解したらしく、ガックリした様子で頭を下げた。

 もう戦意は無いらしい。


『とりあえず、もう大丈夫か』


 俺は話を付ける為に、二匹に回復魔法をかけてやったのだった。


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