5.2.地形情報収集
まずは地形を把握しておかなければならないな。
何にしたって今いる場所の周辺を知るのは大切なことだ。
何かあった時に素早く動けないといけないからな。
俺は目を瞑って集中する。
匂いで周囲の状況を確認していく。
まずは東側だ。
東側には小川が続いており、進んで行けば河口に辿り着くだろう。
山を下りている為か、周囲は平らな土地が続いている。
しかし森が深い。
隠れられるところは沢山ありそうだ。
何かあったらそちら側に逃げるのが良いだろう。
南側には崖があって、そこから山が続いている。
今いるこの洞窟はその崖に作られてるものだ。
山はそれほど高くはないが、斜面が急だ。
登るのはお勧めできない。
奥の方も同じように山が続いているだけの様だ。
西側には、小川が続いていて、進んでいけば滝壺が何個かあるようだ。
ここが渓谷になっているらしい。
ヌシはこの道を通って俺たちに襲い掛かって来たのだろう。
所々がボロボロである。
小川は随分と奥まで続いている様だ。
後は見に行って確認したほうが速いな。
北には森がただただ続いていた。
だが傾斜が緩い為、歩くにはそんなに不自由しなさそうである。
その辺にも動物が何匹かいる様だ。
後で狩っておこう。
とりあえず俺が把握できるのはこの辺までだな。
後は見て回った方が良いか。
周囲の状況はなんとなくわかった。
敵が来るとしたら、東か北か西のどれかになるだろう。
南の山から来ようものなら転がり落ちてくるしかない。
まぁそうなったら俺たちは奇襲を喰らうことになるけど、相手も負傷はするだろうな。
流石に動物や魔物もそこまで馬鹿じゃないんだろう。
安全な方向から来るに決まっている。
とは言え、西からはこないかもしれないな。
西には渓谷が続いているのだが、歩けるようなところはあまりない。
サルの様な生物であれば、容易に来られるだろうが、四足の生き物は進むのに苦労するだろう。
橋なんてないしな。
となると、注意するべき方角は北と東。
東は平原と森があるようだし、北の山は比較的歩きやすく緩やかだ。
こちら側に注意しておけば、とりあえずは問題ないだろう。
防衛にはガンマじゃなくて耳の良いベンツを置いておいた方がよさそうだな。
仮に予想していなかった方角から来たとしても、音であればすぐに察知することが出来る。
俺は集中するが、風の流れで乗ってくる匂いしか辿れない。
役立たずである。
ガンマは力以外に特に長けた能力はなさそうだし、俺と一緒に行動した方が良いだろう。
子供たちにも戦闘を経験させるいい機会だ。
少し危ないが、何匹か連れていくことにしよう。
初回はシャロとデルタで行くか。
シャロは炎魔法と身体能力強化の魔法。
デルタは土魔法と闇魔法だったな。
俺はそれのサポートとしてバックについておけば、気兼ねなく戦えるはずだ。
何かあってもガンマがいるし、俺の魔法もある。
大丈夫だろう。
『シャロ、皆が帰ってきたらデルタとガンマとで見回りに行くからな』
『……え!? 本当!? やったぜ!』
あら、意外な反応。
嫌がるかなって思ってたんだけどな。
『俺も戦えるって認めてもらえるぅー! 頑張るぞー!』
ああ、そう言う事ね。
是非とも頑張って欲しい。
小さな子供たちを守っていくのは、これからは子供たちになるからな。
勿論俺も守るけど、外出することが多くなるかもしれないから確約はできないんだよね。
頼むぜマジで。
すると、皆が帰ってきているという事が匂いで分かった。
それぞれが一匹ずつ獲物を咥えている様だ。
狩りの成果としては十分すぎるな。
ガンマの持ってんのはなんかでかいし……。
『シャロ、皆が帰って来たから火でも付けとけ』
『わかった!』
じゃ、皆が食事をし終わったら、今度は周囲の探索だな。




