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4.30.ヌシの座を巡って


 床にある程度の凹凸をつけて、子供たちが滑ってしまわないように調整した。

 洞窟の広さもあって、皆ではしゃぎまわっている。

 今はそれどころではないんだけどなぁ。


 ま、いつまでもピリピリしてなんていられないよな。

 息抜き程度の休息は必要だ。

 俺も眠い。


 ようやく落ち着ける場所に来たんだ。

 考えなければならないことが無くなって、俺は疲労しているという事に気が付いた。

 この体になって日が浅い。

 今までは随分と無理をしてきたようだ。

 座ってからは一気に疲れが流れ込んできたような気がして、立ち上がる気力もない。


『兄さん、大丈夫か?』

『……とりあえずな』

『今日は休んでろ。ヌシがいなくなって森中の獣が騒いでるけど、今すぐに襲い掛かってくるって訳じゃないからな。俺とベンツもいるし、子供たちも戦えるまでになってるから、守るくらいは兄さんが居なくてもできるさ』

『助かる……』


 それをガンマから聞いたと同時に、俺は目を閉じた。

 自分でも驚く程早く眠りに落ちてしまったようだ。

 子供たちは依然としてはしゃいでいるようだが、もう声は耳に入っていなかった。



 ◆



 Side-ベンツ-


 洞窟の奥には何もなかった。

 卵の殻があったが、水場もないし使える様な場所ではない。

 探索を早々に切り上げて、皆のいるところに戻って来た。


 ラインは初めての探索でおっかなびっくりだったようだけど、しっかりと付いてきてくれていた。

 離れるのが怖くて仕方ないといった様子ではあったが、よく頑張ったほうである。

 皆といるときは元気なのだが……。


 帰ってみると、兄ちゃんが寝ていた。

 珍しいなと思っていると、ガンマが僕に話しかけてくる。


『おかえり。どうだった』

『何もなかったよ。そっちはどう? なんか色々変わってるけど……』


 床が綺麗になり、寝床となるような台座まで作られている。

 外の方を見やれば、緑が増えているように感じられた。

 大方、兄ちゃんが魔法で生やしたのだろう。


 だがそれ以外は特に変わっていない。

 子供たちも遊んでいるようだし、元気そうだ。


『こっちは変わりない。兄さんが寝ているくらいだが』

『何かあったの?』

『いや、随分と疲れてたみたいだ。体も大きくなった途端に長旅だ。疲れるのも無理はない』

『そうだよね』


 しっかりと休んだ時と言えば、ニアが病気になった時くらいだ。

 だがその時もずっと看病してるから、休んだとは言えないだろう。

 それに、あの体になって食べる量も増えた。

 満足に食べられた時も数えるくらいしかない。

 慣れない体に、慣れない旅。

 消耗は激しかったはずだ。


『まぁ、多分山のヌシは兄さんになるだろうけど、あの調子だとちょっとな』

『だね……。暫くは獣たちが戦いあうだろうし、相当な量の食べ物が手に入るはず。とりあえずそれを兄さんに食べてもらって、体調を整えてもらおうか』

『そうするか。俺はここを守る。ベンツが狩りをしてきてくれ』

『わかった』


 ガンマであれば、その辺の獣は相手にならないだろう。

 ヌシですら吹き飛ばしたのだ。

 洞窟の中で戦わない限り、危険なことは無い。


 それに、子供たちもいるから大丈夫だろう。

 もう実戦で使える程に魔法を使いこなせている。

 もし僕とガンマが居なくても、小さい子供たちを守ることはできるだろう。


『その前に、子供たちには現状を話しておかないとね』

『ああ』


 子供たちはこういったことに経験がない。

 勿論僕たちも経験はないのだが、今度からは僕たちが居なくても自分の身は自分で守ってもらわなければならない。

 僕たちは、暫く外に出て戦うことになる。

 子供たちは必然的にここに残ってしまうことになるのだ。

 その時の事を話しておかなければならない。


 とりあえず、子供たちを全員集めてそのことを伝えておく。

 僕たちは子供たちとあまり会話はできないが、言いたい事は伝わっているはずだ。

 子供たちも集中して話を聞いている。


『とりあえず、シャロが皆を引っ張ってくれ。子供たちの分の獲物を狩ってくるのは、君たちの仕事だからね』

「わふ!」

『俺もできる限りは此処にいるように努めるが、無理なこともある。その時はお前らで協力するんだ。いいな』


 ガンマの言葉に、全員が大きな声を出す。

 子供たちは狙われる可能性が高いので、極力ガンマは此処に置いて起きたいが……。

 状況によっては無理なこともある。

 だが、この子たちであれば自分の身は自分でも守れるだろう。


『じゃ、ヌシ兄ちゃんにしてもらう為に頑張るか』

『だな』


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