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4.26.山脈


 小屋を取り壊し、獲物の在庫を確認し、全員がいるのを確認して出発する。

 小屋はすぐに建てることが出来るので、特に問題ない。

 獲物は普通に食べれば四日間くらいもつ分だけの量があった。

 これだけあれば、ベンツが見つけたという場所までは持つだろう。


 ニアの体調もすっかり良くなり、外で走り回れるようになった。

 暫く寝込んでいたから、体を動かすのが楽しくて仕方ない様だ。

 ただ、魔法では少し後れを取っているので、早く魔法を練習したいと意気込んでいたな。

 良いことだぞ。


 小さい子供たちは相変わらず俺の頭の上。

 レイが魔法を使えるようになったので、もしかすると他の子たちも魔法を使えるようになるのはそう遠くないかもしれない。

 なので、頭の上で魔法の練習をするのは禁止した。

 この子たちが何魔法を使えるのか分からない状況で、頭の上で練習させるのは俺が怖い。

 怪我するの俺だもん。


 それに何匹かの子供たちはブスッとしていたようだが、聞き分けは良い様で、素直に従ってくれた。

 今は団子になって外の景色を楽しんでいる様だ。


『ベンツ。どれくらいかかりそうだ?』

『二日くらいかな。あの山を越えた先にあるよ』


 そう言って、ベンツは一つの方角を見つめる。

 同じくその方向を見てみると、確かにそこには大きな山があった。

 他の山も周囲にあるようだが、そんなに高い山は無い。

 そんな中に一つだけ大きな山が鎮座しているのだが……霞が見える。


 簡単に言うと……めっちゃ遠い。

 あそこに着くまでに二日間を要するのは確かかもしれないが、それってベンツの足でだよね……?

 俺たちの場合四日くらいかかりそうだけど。

 その距離であそこまでしっかりと見える山も中々ないだろうけどな……。


『ベンツの足ならそれくらいか……?』

『? 僕は半日で行けたよ?』

『あ、そんな遠くなかったわ』


 しっかり俺たちの足並みを考えてくれていたらしい。

 見ただけの感覚じゃ分かんないもんな。

 すまん、ちょっと疑った。


 とは言え二日。

 結構遠いな。

 まぁもし獲物がいなかったとしても、無限箱の中にある分があれば問題ない。

 後は襲撃に備えるくらいだなぁ。


 今の所、旅をして一度も大きな動物に襲われたという事は無い。

 俺らが肉食という事もあり、天敵という敵はそもそもあまりいないのだ。

 前に土狼は襲われたけどな……。


 あんなのばかりいたら気が滅入る。

 まぁいたらいたで子供たちの安全の為に殺すんですけどね!


『…………』


 んん?

 ガンマが何かしてる。

 何してんだろう。

 先頭を歩いてもらってるから、何してるかよくわかんないな。


『ガンマ、何してるんだ?』

『いや、特に何も』


 俺が声をかけた途端、ガンマは何かを引っ込めたような気がした。

 よく見えなかったのでなんとも言えないのだが、何もしていないというのは嘘だろう。


 まぁ、別にいいか。

 ガンマなりに何か考えて、俺たちに隠しているんだろう。

 ここは見て見ぬふりをするぜっ。

 声かけちゃったけどな!



 ◆



 ―二日後―


 特に何事もなく、俺たちはベンツが見つけたという場所に来ることが出来た。

 そこは一言で言うなれば……山脈だ。

 渓谷……みたいなのもあるし、広い牧草地の様な所もある。

 森も深いところと浅いところがあったりして、様々な生物が住んでいるだろうなという事が分かった。

 普通に良い所だ。


 匂いを嗅いで周囲を確認してみると、それだけで相当な数の動物がいるという事がわかる。

 立地的には最高な場所だ。

 よく見つけたぞベンツ!


 そして今の季節は秋。

 日本までとはいかないが、それでも紅葉と呼ぶにふさわしい光景が広がっていた。

 渓谷は色とりどりの草木が舞っている。

 もうそんな時期か。


『すごーい!』

『わぁあ!』

『ベンツ、よく見つけたなぁ』

『でしょ? ここなら冬は越せると思う』


 確かに冬は余裕で越せそうだ。

 水場もあるらしい。

 そこは溜め池などではなく流れのある川なので、凍るという事は無いだろう。

 凍ったとしても、水魔法があるので何とかなるがな。


「────」

『ん?』


 突然、なにか聞こえた気がした。

 妙な音だったように思えるが、どことなく不気味だ。

 音の大きさからして、随分と遠くから聞こえたが……。

 何の音だろうか?


 最近ベンツは耳が良いという事を知ったので、先程の音について聞いてみることにする。

 そう思って振り返ると、ベンツは毛を逆立てて警戒態勢を取っていた。

 それに驚いて、俺も周囲を確認するが、近くには何もいない。

 今のところは安全だという事を確認した俺は、少し警戒を緩めてベンツに恐る恐る話しかける。


『ベンツ。どうした』

『……ここ……。ヤバイのがいるっぽい……』


 やばいの?

 それは俺より??

 自分でやばい奴認定してたらマジでやばい奴になるから、今のなしで。


 だけど真面目な話、先程の音がそんな危険な物だという感じはしなかった。

 警戒し過ぎな気もするのだが、ベンツの様子を見る限り、そうとも言ってはいられなさそうだ。

 まずは詳しく話を聞こう。


『何だヤバイのって』

『僕が最初にここに来た時はこんな声しなかったし、悪意も感じなかった。だけど、今のは僕たちを狙いに来てるってのがわかる声だった気がする』

『声? あれがか?』

『うん。もしかすると……僕たちが邪魔だと思ったのかもしれない』


 ……んー。

 ベンツが来た時も、相手がベンツの事を認識していたかどうかは分からないが、要は肉食獣である俺たちがここに住むと、自分の取り分が無くなるから追い出そうとしているのかもしれないな。

 まぁ確かに俺たちの方がよそ者となるわけだが……。

 俺たちも棲む場所に困ってるんでね。

 邪魔するなら受けて立とうじゃないか。


『!! 近づいてくる!!』

『マジかよ!』


 いやちょっと早くなーい!?


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