4.23.復活
子供たちの狩りのお陰で、生活は安定していた。
狩りの作戦はあまり変わっていないが、その精度は上がっているように思える。
シャロの炎魔法は火力は上がっていないが、その範囲はとても広がっていた。
炎魔法の広範囲攻撃。
森の中ではなかなか使えない魔法ではあるが、シャロは火力の調整ができる。
そしてばら撒いた炎を全て操作できるらしい。
ただ炎をぶちまけるだけの俺とは大違いだ。
そんなシャロは、自分で新しい技を編み出したらしい。
炎を地面一杯に広げる魔法……炎の草。
シャロは炎を草に見立てたようで、このような名前を付けた様だ。
更に、吹き火という口から炎を噴き出す技も作り出していた。
最近はこれで肉を焼いている。
攻撃には使っていない様だ。
デルタは気張らずに土魔法を操れるようになっていた。
少し土魔法の精度が上がったというくらいだろうか。
著しい成長は見られないが、狩りでは随分と貢献している様だ。
そんなデルタは今現在、複合魔法を練習中。
土魔法と闇魔法で人形を作り出している。
まだぎこちないが、二体までは操れるようになったらしい。
俺もこれを参考に何か魔法を作りたいものだ。
そして、デルタと完璧に息を合わせながら狩りをしているライン。
纏雷をほぼ完ぺきに使いこなせるようになったようで、デルタが土魔法を発動させる場所に追い込む役を担っている。
広い場所で全力で魔法を使い続けていたおかげか、コツを掴んで来たらしい。
ラインは纏雷を足に集中させて、瞬発的に素早くなる。
緩急が激しくてなんだか面白いが、追われる側からしたら、いつ速度が上がるのか分からないので堪った物ではないだろう。
そのおかげか、獲物もライン一匹で狩ることが何回かできていたようだ。
素晴らしい成果である。
レインは水魔法の練度を上げていた。
一番強い水刃の発動速度を上げようと頑張っていたようだが、これがなかなか速くならない。
始めのうちは速くなっていたり、遅くなったりを繰り返していたのだが、ある程度の速度からは一切発動速度が変わらなくなっていた。
恐らく水刃は発動する時間が決まっている技なのだろう。
まぁ、タイムラグ無しであんなのボンボン撃たれたら、俺でも怖いもん。
大魔法はそれなりの代償があるっぽいな。
だが、狩りではそれでも充分であった。
足元に水刃を撃ち込めば、足が両断されて獲物は倒れてしまう。
そこからは水を生成して、それを顔に接触させる。
溺死を狙った狩りが、レインは多いような気がするな。
こっちの子供たちはこんな感じだ。
ベンツが探索に出てから数日しか経ってはいなかったが、その成長速度は目を見張る物がある。
流石子供。
成長速度は俺たちよりも早い。
そして、少し長引いてしまったが、ニアが復活したようだ。
『ふっかーつ!』
『まだ無理はするなよ。病み上がりなんだから』
『やみあがりー?』
『あー……。病気が治ってすぐの時に言う時に使う言葉だな。まだ体力は回復しきってないだろうから、あんまりはしゃぐなって事』
『はーい』
時々通じない事があるので、ちょっと焦る。
まぁこれは仕方のない事なんだけどね……。
とりあえず、ニアはまだ外には出さず、部屋で安静にしてもらう。
子供なのではしゃぎまわっているが……まぁ大丈夫か。
ベンツももう少ししたら帰ってくるだろう。
帰ってきたら、出立することにする。
そろそろ旅もひと段落つきそうだ。
油断は禁物なんだけどね。
新天地に何があるか分かった物じゃないからな。
植物に襲われるかもしれないし、俺よりでかい生物がいるかもしれない。
ここは異世界なんだから、最悪な状況ってのは常に想定しておこう。
『『『オールにーちゃーん!』』』
あらマジで可愛いねー!
なんだいなんだい小さき子供たちよ!
えっと?
入ってきたのはウェイスとドロとバッシュ。
オスの子供たちだな。
『どうしたー?』
『レイがすごいの!』
『そう! すごいのすごいの!』
『レイが冷たいの!』
……?
どういう事……?
レイと言えば、小さい子供たちのメスだったよな。
あの黒の毛並みに一線の白色が入ってる子。
ふふふ、子供たちの名前と特徴は全て記憶しているのだ。
可愛いからな。
覚えちゃう。
で、レイが何だって?
冷たい?
『待て待て、何が言いたいのかよくわからん』
『僕たちも分かんない! オール兄ちゃん来て!』
『来て来て!!』
んー、これは子供たちから話を聞くのは無理そうだな。
素直について行って見た方が速いだろう。
百聞は一見に如かずという奴だな。
俺はニアをここに待機させ、子供たちの後ろをついて行く。
レイのいる場所はそんなに離れていないようではあったが、何やら三匹が団子になっている。
団子になっているのはメスの子供たちだ。
俺がレイが見える場所まで来ると、オスの子供たちは一斉にレイにくっついて団子になる。
見慣れた光景だ……。
俺の頭の上でお前らこうなってんのね……。
『で? なんだ?』
『そうなの! これなの!』
すると、レイが大きく息を吸ってから、息を強く吐き出す。
一体何をするのだろうかと見ていると……。
レイから少し離れた地面が凍ってしまった。
ほぼ一瞬の出来事で、何が何だかよくわからなかったが、それを見て俺は大いに驚いた。
『氷魔法だと!!?』
そう、氷だ。
これは確実に俺の持っている魔法とは違う。
氷魔法は何かの合成で使う事が可能だとは思っていたが、俺は今まで使えた試しがない。
何か特別な条件が必要なのかと思っていたのだが……。
まさか子供たちが最初に作り出すとは思っていなかった。
って、レイ魔法使えるようになったのか!?
今!?
風刃より先に!!?
どうなってんだよ!
『れ、レイ! お前の中にある光の色を教えてくれ!』
『ひ、光? えーっと……』
レイは目を閉じて、自分の中に灯っている光を見る。
すぐにそれは分かったようで、少し戸惑いながらも教えてくれた。
『オレンジと……水色なの』
…………。
え?
その色って……。
炎魔法と水魔法じゃん……。




