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4.14.小さな子供たち


 ベンツが襲撃した馬車を見てみれば、そこには旅に使う道具が入っていた。

 俺たちには何も関係ない物ではあるが、人間の物資はいつか必要になるかもしれない。

 なので、馬車ごと無限箱に収納しておく。

 中身はあまり詳しく見ていないが、食料があれば万々歳である。


 それと、人間は燃やしてから埋めておいた。

 これで足が付かなければいいのだが……。

 まぁ大丈夫だろう。


 後は、馬。

 俺が食べる分には少ないが、ベンツとガンマが食べる分には十分すぎる大きさだ。

 後で二匹に食べて貰うことにしよう。


 だが、この場所で食べるのは危険なので、これも無限箱に収納しておく。

 本当に便利である。


 ていうかこの冒険者……結構いい防具着てたなぁ。

 随分と上の立場にいる冒険者だったんじゃないかな。

 そんな冒険者たちが帰ってこないってなったら問題になるかもしれないけど……。

 まぁどうでもいいか。


 食料と物資を無限箱に詰めたら、すぐにその場から離れる。

 どうやら少し行かないと森はない様だ。

 だが、そこまで行けば暫くは問題なさそうだ。

 何故なら、遠くに広がっている森がとても広大だから。


 ここからでもその森の大きさが分かる。

 もしかしたら、あそこで拠点を構えることが出来るかもしれないな。

 今日中には行けそうだ。


 そう言えば……小さい子供たちの名前聞いてないな。

 聞く余裕もなかったし、今のうちに聞いてみるか。


『お前たち、名前なんていうんだ?』

『僕はー……』


 それから、一匹一匹の名前を教えてもらった。

 全部で六匹。


 一匹目はウェイス。

 オスで灰色と茶色の毛をしている。

 魔法とかがまだ使えないので、どんな子になるのか楽しみである。


 二匹目はドロ。

 こいつもオスで黒茶色っぽい色をしている。

 他の子に比べて少し大人しい感じがするね。


 三匹目はバッシュ。

 オスで少し体が大きくて真っ黒な毛並みをしている。


 四匹目はヒラ。

 この子はメスで黒と白の毛をしていた。

 こういう毛並みは今までに見たことがないので、少し珍しい気がする。


 五匹目はリッツ。

 この子もメスで灰色の毛並みをしている。

 ガンマよりは少し暗めの色だ。


 最後の六匹目はレイ。

 メスで黒に一線の白色が入っている。

 ラインと似ているな。


 以上六匹、小さな子供たちでした。

 この子たちが一体どんな魔法を使うのか、今後が楽しみである。


 あー……そろそろやるか。

 狩り見学。

 ベンツは速過ぎて分からないし、ガンマは力加減ができないから、今現在は狩りに向いてない……?


 てなると俺か。

 俺しかいないですね?

 また風刃でやればいいかぁ。

 子供たちは頭に乗っけておこうかな。

 そんなに激しく動くわけじゃないし、問題ないだろう。


 じゃあ次に獲物が見つかったら俺が狩りに行くかぁ。

 って言う事を、しっかりと皆に報告しておこう。

 報告は大切だからな。


『いいんじゃない? 任せるぜ』

『僕もそれでいいと思うよ。出来るだけ安全にね』


 二匹にも賛成してもらったので、後は獲物が出てくるのを待つだけだ。

 言うて一発で終わってしまうから、参考になるかどうかは分からないけど……。

 子供たちが見える様に攻撃しないとなぁ。

 

 まぁ今は何もいないし、平原をずっと歩いているだけなので、早い所森へ行くことにするか。



 ◆



 周囲が暗くなる前に、なんとか森の中に入ることが出来た。

 随分と昔からある森なのだろう。

 俺たちがいた場所と同じような木が何本も生えている。

 ここなら……本当に理想の場所が見つかるかもしれないな。


 ちらりと子供たちを見てみると、随分と疲弊しているという事が分かった。

 歩き方も遅くなっているように感じる。

 無理をさせてしまっただろうか……。


 本当であれば、もう少し森の奥に入って休みたかったが……。

 仕方がない。

 今日はこの辺りで休むことにしよう。


『ベンツ、周辺の警戒を頼む』

『了解っ』


 ベンツに周囲の探索を任せ、俺は土魔法で皆が休める大きさの建造物を作る。

 その中に子供たちを入れて、暖炉で火を焚く。

 これも慣れたものだ。

 もう火加減の調整は出来るようになったので、今度からは獲物を調理したいと思う。

 これくらいの楽しみがないとな。


 だが、家の中で調理は難しそうなので、今晩は普通に無限箱から出した獲物を食べてもらうことにした。

 無限箱の中の時間は止まっているので、まだ暖かい。

 だが、今晩の分で貯蔵分は無くなってしまった。

 また何処かで狩って回収しておかないとな。


 暫くすると、ベンツが帰って来た。


『どうだった?』

『うん、すごい深いね。周囲の状況も大きな木が邪魔で中々把握できない。鼻と耳を頼りに行動していった方が良いかも』

『変なものはあったか?』

『特にないよ。危ないところもなさそうだし、この辺には獲物もいないみたい』

『そうか』


 とりあえずベンツの前に、先程狩った馬を置く。

 ガンマも同様だ。

 俺はいつも通り、水だけを飲む。


 今一番頑張ってくれているのはベンツだからな。

 しっかり食べてもらわないといけない。

 ガンマにも先頭を任せているし、俺はそれなりに楽しているからな。


『……兄さんも食べなよ』

『俺には少なすぎる。お前たちは体を使ってくれるんだから、逆にしっかりと食べてもらわないと困る』


 俺が使うのは接近攻撃ではなく魔法による攻撃だ。

 なので体力はそこまで必要ではない。

 ベンツは走り回ってくれるし、ガンマは接近攻撃しか持っていないのだから、二匹にこそ食べてもらわないとな。


 食料が十分に集まっていたら、俺も食べるけどな。

 今はこれがギリギリなんだ。

 俺が我慢して皆が動けるのであれば、それでいい。


 とは言え、皆が食べてる中で俺一匹が食べていないというのはちょっと居心地が悪い。

 なので、のそっと歩いて外に出ることにする。

 俺がいると皆食べにくいかもしれないからな。


 外に出てみると、もう完全に日は沈んでおり、星が空に輝いていた。

 綺麗な星空だ。

 空気も冷たい。

 今は季節的に秋だろう。

 もう少ししたら、雪が降るかもしれないな。

 その前には、冬を越せる場所を探しておきたい所である。


「ん……?」


 森の中から動物とは違う匂いが漂って来た。

 すぐに目を閉じて匂いを辿り、その存在の確認を急ぐ。

 頭の中で一気に周囲のマップが形成され、状況が明らかになる。

 暫くは太い木が立ち並んでいるようだが、それは外回りだけの様で、中にある木は細い物ばかりだ。

 細いとは言っても、外回りにある太い木に比べれば細いというだけで、細すぎるという事は無い。

 草木も地面に生えており、日光が地面までしっかりと届いている様だ。


 その木の上を、何かが走っていた。

 何かはこちらに向かってきているようだったので、早く姿を確認したかったが……。

 速い。

 匂いは辿れるが、早すぎてその姿が確認できない。

 大きさ的には俺たちより小さいという事が分かる。

 だがその大きさであそこまでの速度を出せる生物を俺は知らない。


 目を開けてそいつが来る方向へと進んでいき、待つ。

 匂いはどんどんとこちらに向かってくる。

 そして、止まった。

 その匂いがするのは、今俺がいる頭上。


 顔を上に上げて、その存在をしかと目に入れる。

 そこには人の形をした生物が立っていた。


 だが、普通の人間ではない。

 肌は黒く、耳は長く、着ている服は森の中で捕まえたであろう獣の皮を合わせて作られている物だ。

 手には石槍の様な物を持っており、葉っぱが巻き付けられている。


 俺の知識にある中では、こいつはダークエルフという存在ではないかという事が真っ先に思いつく。

 そのダークエルフは男ではあるようだが、か細い女性のようにも見えた。


 さて……どうする……?

 俺は警戒心を強め、魔素を取り込んで魔力を作った。


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