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転移ウサギのリアルワールド  作者: 山田太郎
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第六話「コネクトターン」

「なぜか料金が高いとこほど信頼しちゃうんだよねえ。」

 そんな独り言をつぶやきながらサイトをチェックしていると、下の方からせりあがるようにして黒枠の広告が出てきた。

「邪魔な広告だなあ。」

 画面をスライドして、それを下に追いやる。

しかし、それは粘り強く調べものの邪魔をしている。

「あーしつけえなあ、わかった見てやるよ!」

 このおれ、ゼオは怒りに任せてクリックを連打する。そうしていくうち、画面がだんだん怪しげなサイトへと進んでいく。そうして一つの動画に、いつの間にかたどり着いてしまっていた。

「なんだ、これ?」

 動画のサムネイルには、赤髪で白い白衣の下に水色の服を着ている顔白ピエロと、助手的なかわいいモデル体型の女の子がいた。いや待てよ。この女の子は。おれは四階に行き、人形の元へと行き、人形が座る椅子によじ登り、スケッチブックを取り上げる。やはりそうだった。この女の子とめちゃくちゃ似ている。おれはパソコン室に戻ると、パソコンで動画の再生を押していた。動画が流れる。すると、長身の、ピエロのメイクをした男がドアップで出てきた。こいつは甲高い声でしゃべる。

『やあみんな、ついこの間まではハッピーマウスの中の人だったけど首になった、ロナウド・ワイズだよ。』

『そしてピエロに身を売ってくっちゃ寝させてもらっている少女、みなさでーす。アイドルを目指しています!』

 しょっぱなから闇を語る具合、正気の沙汰ではない。後、女の子映ってませんよ?

『僕はみんなをハッピーにするため、大スターからカウンセラーにくり下がったぞ。』

『みんなには私たちの歌を聞いて元気になってもらうと同時に、心身の回復を図ってもらうぞ。』

 繰り下がるとかいうなや。そもそもが別物だから。

『カウンセラーは僕。』

『付き添いの特に何もしない助手は私。まあとりあえず、』

 やっとピエロが引いてくれた。そしてその向こうには、ギターを持った女の子、バックの景色は何にもないただの闇。

『この一曲をみんなに聞いてほしい。』

『次は僕が歌うから。』

『うん、そだねー。』

 みなさちゃん、目が笑ってない。

『それじゃあ一曲目、トロイデストロイ。』

 金色の短髪が揺れ、コードを滑らかに弾き始めた。迫力ある出だし、それでいて本人たちがそこにいるようで……あれ、ディスプレイから白い手が出ている? 疲れているのか、目をこすってもう一度。

「そこの転生ウサギさん、僕が夢の国へ招待してあげる!」

 突如画面から、ピエロの顔が飛び出てきた。おれは恐怖のあまり、体が動かない。そんなおれの手をピエロが引っ張り出してやっと、逃げるという行動が頭に浮かんだ。しかし、時はすでに遅し。

「うああ、いやだー! 助けてえ!」

 途端に画面の中へと吸い込まれてしまっていた。

 そこは闇の空間、いやよく見れば、おれが座っているのは手すりのある、一人用ソファーのような椅子。さらにそれは隣の同じようなものと連結している。その列は前後左右それぞれにかなりの数並んでいる。真正面には、舞台があり、スポットライトの明かりがともっていく。ここはどこか、それはわからないが、劇場であることは確かだ。

「あら、かわいいウサギさん、私の曲を聞きに来たのね、それじゃ、いっくよー!」

 滑らかなギター音は、おれの耳にとっていいものに……ならない。うるさすぎる。耳を抑えても多少聞こえてくる。今のおれはウサギだから、大きな音が苦手なんだ。マイクに顔を近づけ、彼女は声を発した。

『♪あなたの動きはマジトロイ、ネトゲが頭をデストロイ、放出されてくドーパミン、犯されちゃったね線条体! 始まりは誰もがやりたい、嬉しい、楽しい、気持ちいい、けど後から次第に、やらなきゃいけない、現実怖い、それが将来!』

 一呼吸挟み、さびらしき部分を歌いだす。

『♪今すぐ止めたい~、だけどなぜかやめられな~い、そんな生活を~、今日からデストロ~イ!』

 うん、今の千秋に合った治療方法ではない。おれはそう叫んで元の場所に返してもらおうと思い、息を吸う。ところがおれの横に、突然さっきのピエロが現れた。

「君の名前は山田太郎、今はゼオと名乗っている、そうだろう?」

 こいつ、なんでおれのことを。

「こいつ、なんでおれのことを。」

 奴は言った。もしかして。おれはゼオ。

「おれはゼオ。知能があるウサギだね。」

 やっぱり、でもなんか腹立つ。生麦生米生卵。おれがそう思うと、

「生麦生米生卵東京特許許可局局長、今日急遽休暇許可却下。」

 くそ! 笑ってやろうと思ったのに。奴はおれの頭を馴れ馴れしくなでてきた。

「そう、君の思った通り、僕は人の考えが読めるんだ。そこから君の過去も知ることができるぞ。」

おれはそれを振り払い、落ち着いて言い返す。

「じゃあ俺がどこに住んでいるか、当ててみろよ。ただし、言えるのは一単語だけ。」

 これならお前は何とも言いようがない。なぜならおれは、あの島とお城の正式名称を知らないのだから。おれもわかんないことだぞ。ほら、答えてみろ。

「城の創設者がここにいてくれればいいんだけどなあ。」

 迷ってますねえ、気持ちいいっすわ。

「こらそこ、いつまで待たせる気? こののろまが。」

 舞台の上にいるみなさは、おれにそう叫んでくる。気のせいかこの子、口が悪いような気がする。

「誰しも心の中ではこんなもんだろ? 彼女はね、思ったことをそのまま言ってしまうんだ。」

 ダメ助手じゃねえか。完全に職務妨害にしかなんねえよ。ブサイクな奴にこのブスとか言うのか。なんなの悪魔なの? 利用者の心折に行くどエスの悪魔なの?

「彼女を馬鹿にするなあ、チ〇ちゃんと思って付き合えばいいじゃないか。」

 彼女すらドン引きするよ、こんなの。だけどまあ、あの子は羽美ちゃんの器として役に立ってもらうから、それだけででかい。後はピエロ、こいつも心が読めるから、心理カウンセラーとしてあの島に滞在してもらえば、千秋のために十分役に立ってくれるはずだ。まあこの考えも全部、隣のピエロに読まれているだろうけど。

「役に立つねえ、いいよ、僕、君の役に立ってあげる。お金にも困らず、大きなお城に住める。それに何より、周りには人が全然いない孤独な島のようだしね。ああ、彼女は僕のすねをかじるしかないから、拒否はさせない、安心して。」

 良かった、案外すんなりといった。最後の理由はちょっとわかんなかったけど。その声が聞こえたのか、舞台でふてくされてしゃがみこんでいたみなさは、おっきな声で叫んできた。

「その言い方はひどい! ロナウドだって、無形兵器のくせに! 私が正体ばらさないであげているんだからね。」

 兵器というとんでもないワードを耳にし、気が気でない。ピエロはそこを立ち上がり、みなさと言い合いを始めた。

「うるさいよ、大通りの真ん中でこいつ無形兵器ですとか、君が言っちゃうからわざわざデータ上を移動して、国家の機密組織から逃亡しているんだろう、君は本当に悪い子だ。」

「しょうがないよ、だって私本音しか言えないんだもん。」

「それみたことか、諦めたら試合終了だぞ。黙る努力、嘘をつく努力をしてみなよ。」

「それができたら苦労しないわよ。」

 いがみ合う二人、ケンカするのは勝手だけど、早くおれをここから出してほしい。できればその後、破壊兵器の説明を求む。

「ここからでる? 分かったそうしよう、みなさ、君はこの電脳空間でお留守番だ。」

 すると彼女は涙目になり、ロナウドの元へ来た。

「ごめんなさい、ずっと窮屈だったのこの中、ああやっと地獄が終わる、やっほい。」

 みなさの本音を耳に入れ、おれたちは早速この空間を出ることになった。みなさとおれはロナウドにしがみつく。すると地面に円状の魔法陣みたいなものができ、辺りにデジタル上の光彩がきらめく。おれはロナウドにこういう。

「おれのことはゼオと呼んでくれないか、歓迎するよ。」

「改めて、僕はロナウドワイズ。次元を行き来し、人の考えを読む男。」

「なんでウサギがしゃべっているのお? あたしみなさ、よろしくねー。」

 光は消え、おれの目の前には、いつも見ていたパソコンのディスプレイが現れる。あたりは無駄に多いパソコンだらけ、間違いない、戻ってこれた。二人もちゃんと、その場にいて、互いに抱き合って倒れていた。なんだかんだ言って仲いいんだなお前ら。ロナウドが目を覚ました。

「こら、いつまでもそうやってないでどけ。」

「どくよ、どくからそこ触らないで!」 

 やっぱり仲が悪いんだなお前ら。

 おれは二人を、五階にある自分専用の部屋へ案内した。そこはアスレチックのような、木製の器具であふれた場所。人間の時は、小説やら漫画やらで部屋はあふれていた。それなのに、今となってはろくに物もつかめない手となり、本のページをめくるのすら一苦労。動いている方がすっきりするのだ。千秋、こういうとこは気が利くんだよな。

「転生ウサギ、ゼオよ、これは何だ。」

 まあ考えが読まれているんだ、転生していることぐらい、知られていて当然だな。

「ええ、転生って? どっ、どういうこと?」

「みなさ君は黙っていなさい!」

 二人のいざこざはさておき、ロナウドの持っているそれは、羽美ちゃんの魂が入った小瓶だった。

「あれ、なんでロナウドがそれを。」

「君がディスプレイの前に置き去りにしていたんだ、ちゃんと管理するんだぞ。」

 おれはそれを受け取り、みなさに言った。

「入り口のドアを閉めてくれ。」

 低くて小さなドアを、彼女はゆっくり閉じた。生物兵器ってなんのことだか気になるけど、それをついている暇はない。おれは二人とカウンセリング法、そして伝えるタイミングを練らなければ。

 おれが今までのことを説明し終えると、みなさはあくびをして、近くの椅子に顔をつっぷした。

「めんどくさい男だね。私、演技でも生理的に無理だわ。」

「演技はしなくていい。千秋が話を聞ける状態になったら、みなさは器としてこの子の肉体になってあげてほしい。それまではおれと一緒にこの部屋で待機。」

 おれは小瓶をさす。

「良くわかんないけど、何も考えなくていいってことだね、なら寝ちゃおうっと。くかー。」

 それ以外は何も求めない、だからお休み。おれはロナウドの方を向く。

「ロナウド、君のコンピュータには入れる力を信じて頼みがある。千秋をゲーム依存から一時的にでも脱却させ、この部屋の前までおびき寄せてくれ、ブルドック眼鏡だ、見ればたぶん分かる。後はおれとこの子に任せろ。」

 ロナウドは頭をかいた。 

「照れるなあ、よし、任せたまえ。」

 彼は小道具を、どこから持参したのかもわからんアタッシュケースに入れ、颯爽と部屋を出て行った。部屋が静まり、おれはぐっすり眠る彼女をまじまじと見つめる。胸も大きく、艶も張りもあり、バランスが良くも華奢な外見。思わず、胸にタッチ……だめだ。今発情したら計画が水の泡だ。おれは手を引っ込め、小瓶を拾う。そして、今こそ小瓶を開け(ロナウドに緩めてもらっといた)、中の魂を彼女の口に入れてやる。

「やり方はこれであっているのだろうか。」

 若干不安になりながらも、おれは彼女の開いている口を閉め、時を待つ。

「どうだ、うまくケホッ、いってけほ、いるゲホゲホ。」

 いつの間に、おれの隣に死神が立っていた。白いマスクに、熱さまシートを頭に貼りながら。

「確かに会いに来いって言ったのおれだけど、早すぎるし無理しすぎだ。今日は家で寝とけ。」

 死神は何か言う前に、そのままぶっ倒れた。

「って大丈夫か? しっかりしろ死神!」

 どうしよう、死んだりなんてしないよな、死神だから死なねえよな。不安と恐怖にかられ、おれは外へ飛び出しそうになった。しかし、その時だった。

「初めましてですわ。」

 ですわ。貴族じみた聞いたことのない語尾。おれはみなさの方を向いた。そこには見なさではなく、落ち着いた雰囲気を醸し出す、見なさの姿をした人が、手を重ねてきれいに立っていた。その不自然な光景、おれは確認のため、自己紹介とともに質問を投げる。

「おれ、ゼオ・ワールド。あんたは?」

 彼女は手を口元に添え、見る人を魅了する、気品のいい笑顔を見せた。

「わたくしは、大空羽美。大丈夫、冥界で人が死んだところなど、見たことがありませんわ。オーバーワークでそうなっただけでしょう。」

 彼女はしゃがみこんで死神の頭を撫で、おれに一言添える。

「死神ちゃんは、ここでそっとしておいてあげましょう。ところで、さっきから気になっていたのですが、」

 部屋の匂いかと、おれは辺りを見回す。

「私の服はどこですの、この服のままだと、千秋ちゃんに別の人と思われますわよ?」

確かにこの露出の多い短パンにオレンジのノースリーブ、上品な羽美さんとは相反する服装。怪しまれる可能性は高い。じっと見つめるおれを意識したのか、彼女は身構えた。

「おっ、女の人の体はあまり見つめるものじゃなくてよ。意識したら、恥ずかしくなってしまったじゃありませんの。」

「でも、あんたの服の場所、おれも知らねえんだよ。」

「まだ三階のクローゼットに残っているかもしれません、見てきていただけますか?」

 おれはやむを得ず、承諾した。だが一つ、男として、いや雄として、聞いておかなければならない。

「ブラジャーとかも持っていだだだだあ!」           

 言い終わる前に、耳を握りつぶされそう。彼女の方を見ると、笑顔に静な威圧を含んでいた。

「冗談言っている暇があるなら、半袖の、それでいて、水色のワンピースを持ってきてほしいですわ。下着はこの子ので結構ですの。」

 彼女は手を離した。全くこの家の住民は、おれの耳を何だと思っているんだ。おれはとにかく部屋を出て、急いで三階に向かった。           

                続


 


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