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友情割引で世界が確変される物語  作者: 央艿 尚
序章:そして友達割引は締結された
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 「…ー! …ねぇ、聞いている?…ーーー?!」

 問いかけへの返答は無い。



 規則正しい重低音の駆動音が響く艦橋に、動力機関の音とは異なる呼びかけ声が通る。

 その飛空艦には「ナギルファー」という名が付いている。

 トビウオの様なフォルムに鳥の羽の様な翼を持ち、綺麗な機影で優雅に空を航行する。

 各所を移動するという注文に合わせて建造され、大気中の魔素を捃摭エネルギーとし魔力とのハイブリッドシステムを動力としている。


 艦橋に響く声の主の姿は見えないが、返事が返えされず、次第に大きく荒げ始めた声は駆動音を上書きするように、フロアに響いていく。

 2、3人は余裕で入って作業が出来そうな艦橋内の中央に、いかにも艦長席ですという風に据えられた、リクライニング式の革張り椅子の背を大きく引き倒し、寝そべっている人物がいる。

 艦橋には、椅子に寝そべっている人物以外誰も居ない。呼びかけの声だけが虚しく散っていく。

 艦長椅子で寝ている人物の顔には、中綴じの雑誌が乗っていて視線や光を遮っており、いかにも熟睡してますという風に見える。


「もうっ!!!!聞いているの??!ー…剣竜(けんりゅう)ッ!!?」


 最終段階レベルまで引き上げられた声がビリビリと響くと、雑誌の上辺から覗いていた耳がピクリと動いた。

 人間の耳ならば顔を覆う雑誌の上辺から見えるなどということは無い。

人間の耳は顔の横に付いているからだ。

この世界の住人… 魔族と呼ばれる者達の中には、人間と似て非なる容姿を持つ者が数多に存在する。

 ピクリと動いた耳は、猫や狐の様な獣耳。

 一応、聞こえていますよと言わんばかりに、二、三回耳を動かすと、のそり…と気怠さを隠そうともせず、雑誌の下辺を指で摘み下にずらしていく。

 雑誌が徐々に下がるにつれ、先ずは三角の獣耳の先端。続いて耳を薄く覆う毛と同じ色の髪が顕になり、更に不機嫌そうな目。そして小鼻付近まで紙束が下されそこで止まる。

 「…うっせーな、キャップは…。 着くまで寝るって言っただろ。」

まだ見えぬ口元から低く苦情が出る。

 ブゥン…という起動音と共に、剣竜が寝そべる椅子の前に設置された机に少女の上半身が立体映像として映し出される。

「もー!!うるさいじゃ無いでしょ?! 目的地まであと5分だって~!」

「5分前とか早すぎ… 1分あれば十分だろ。」

 苦情に文句を重ねながら剣竜は椅子を引き起こし、立ち上がる。

 長時間椅子に寝そべった弊害で、体が凝っているのを顕示するように、手を頭を左右あちこちにぐるぐる回しながら、立体映像の少女…キャップに向き合う。

「んで、距離は?」

「あと800。情報はそこにあるのが全部~。」

 キャップは横に置いてあるタブレット端末を指し示す。

 剣竜が透明のプラスチック板状のそれを手に取り、指を滑らせる。手を触れた事により使用者が認証され、たちまちに端末に文字や図が表示されていく。

 次から次へと表れるそれらの情報を、指で滑らせながら流し読みしていく。

「ちょっと数、多くないか?」

「だからウチに依頼が来たんでしょ~よ!

あと500で目的地だけど、どうする~? 手前着地でも降下でも好きに行けるように準備、出来てるわよ~?」

「降下で行ってくる。

終わったら呼ぶから、艦を光学迷彩と隠蔽魔術併用のまま待機で。

何かあれば都度、連絡を。」

「あいあいさ~!」

 簡単な指示のやり取りで今後の段取りが組まれる。

出立前のこの艦内でのいつもの光景である。


 剣竜は情報を頭に収めると艦橋を後にし、艦の後方…格納庫とハッチへと歩を進める。

 剣竜は身につけている白の外套(コート)と首を半周する様に装着した通信装置以外の装備は特に持っていない。

実に身軽な出で立ちだ。


 既にハッチはキャップが開放スイッチを押した様で、徐々に開いていき、艦内に強く風が流れ込んでくる。

 剣竜の着用している長めの外套の裾がはためく。

腰の下まである長い銀髪も、同じ毛色の獣耳も、外套に隠れてはいるが獣耳と同じ毛で覆われた長さがある尻尾も、吹き込む風に流されていく。

 全身で風を受けながら、開口部の隅まで歩を進めるとハッチは全開口している。

 足先から下に見える景色は、地面まで300mはあろうかという高さだ。

 飛空艦が飛ぶには低い高度だが、魔力と科学技術で光学迷彩されたこの艦は、地上側から目視される心配は無い。

「目標地点まで、あと50…30……」

 首に装着した通信装置から、通信テストを兼ねたキャップのカウントダウンする声が聞こえる。

「音声受信、感度良好。

下は魔素が濃そうだ。電子と魔導の通話チャンネルを双方開いておけ。魔素の薄そうな場所を見つけながら周回待機。」

了解(ラジャ)~!」

 眼下の景色がゆっくりと移動していくのを見ながら、降下のタイミングを図る。


 艦の駆動音と吹き込む風の音が耳に染み付き、息を吸うと束の間、静寂の瞬間が訪れる。

 タイミングよく一度足元を蹴り飛び出すと、空中へと投げ出された剣竜の身体は目的地に向かって降下していった。

とりあえず書き始めました。ぼちぼち置いていきます。

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