第一話
たった一言で終わらされてしまった。
僕にはそれだけの価値しかないのだと宣告されたようなよう気にさえなる。
それに彼女の部屋からここまで歩いてきた実感をなくしてしまうほどに朦朧としていたのだと思うと自分がとても矮小なものにさえ思える。
自分でさえもそう思えるのだから他人にとっては尚更なのだろう。
そう考えれば多少は自分を納得させる事ができそうな気もした。
もういいか。
それでも、ずっと考えながら歩いていた挙句に結論がそんな程度だった。
ただ単に僕が救いようのない馬鹿だっただけなのだから。
だけれど、どうしても不可解だ。
僕の頭が悪いだと。
今の僕を分析してみたとすれば確かに頭が悪い奴なのかもしれない。
そんなに僕が屑でどうしようもないからなのか。
一度は、いや何度もあの女と結婚したいと考えていた、自分をとても情けなく思う。
実はこんなに情けない人間の僕が結婚をしたいなどと考えるのがそもそも思い上がりだったのだ。
いまはそんな考えばかりが飛来し、自分でも気づかぬ間に身体は家への方角へと歩を進めていた。
まさしく、直線で。
音が聞こえた時は既に遅かったと思う。
もしかしたら、聞こえていたけれども委ねてみたくなっていたのかもしれない。
音の方向、光さえ見ていなかったのだから、僕にとってはただぶつかられた感覚しかなかった。
その後に律儀に運転手が救急車を呼んだようで、運ばれたりしたり、人工呼吸やらをされたのだと思う。
そのへんの記憶はどうも曖昧だ。
だけど、不思議に確信があるのは、その時に僕は死んでいたということ。