第1話 世界の果てに行ってみよう
いきなり変な話をするが、人生とはなんだろう…?
お金持ちになる? 好きな仕事に就く? 名声を得る?
人それぞれいろいろある。
誰かにとっては陳腐な人生でも、別の誰かにとっちゃ壮大な……いや、それはいいすぎかな。
誰かが羨む人生かもしれない。
それじゃあ、お前の人生はどうなんだって?
俺、「八乙女 道真」の場合は、ゲームを遊ぶ続けること。
それこそが19そこらの俺の人生だった。
後悔はしていない……そう、つい先日までは。
なんとなく察してるやつもいるかもしれない。
そう、俺は今、死のうとしている。
人生が、なんて急に語りだす奴は「生」か「死」どちらかが身近に起きた時だ。
俺の場合は死だね。
ちなみにとある大吊橋から飛び降りているところ。
勇気あると思わない?
理由は説明すると長くなるが、さっきまで人生とまで言っていたゲームのサービスが終わったんだ。
しょぼい? たったそれだけで?
さっき言ったろ、人それぞれだって。
もう、かれこれひと月、運営に動きがないんだ。
これはサービス終了の前兆、俺にはすぐ分かった。
ああ、もっと課金すればよかった…なんて悔やんでももう遅いんだ。
人生と宣言するくらいはまり込んだゲームが終わるなら、俺の本当の人生も終わっていいや。
入った大学じゃぼっちだし、ゲームが好きだからと始めたゲーム会社のデバッグ業務もうまくいかない。
将来の夢? そんなもの俺にはない。
夢を持てと言われ、夢を見ると否定される社会なら、初めから地に足つけてなんとなく生きていければいい。
そう思った。
なんとなくどっかの会社で働いて、家に帰ったらゲームして、気がついたら50、60、70歳…。
そしてある日突然、家で孤独に死んでいく。
それって今と何も変わらないじゃない、50年後か今かの違いってだけ。
なら、ゲームの終わりと一緒に、いやそのちょっと前に俺の人生も終わらせよう。
そう思った。
…って長々脳内で語ったけど、まだ地面につかない。
それに眼前が光に包まれてる、走馬灯ってやつなのかな。
光の中に巨大な大穴…これってあれでしょ? アニメでよくある異世界へいけるやつ。
俺が異世界に? まさか、そんなことありえないよな。
ああ…どうせ異世界にいくなら、ゲームの世界がいいな。
そしたらきっと…新しい人生を歩んでいける…。
「マスター、待っていたのですよ。どうか私たちを助けて…−−」
少女の声が聞こえたと思った瞬間、俺は光に包まれて意識を失った。