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第95話 料理を作ろう

「はあ……」

「どうしたんですか先輩、溜め息ついたりして」

 鑑定依頼品の処理を終えて一息。椅子に背を預けて脱力した僕の溜め息を耳にしたジャド君が、怪訝そうに振り向いてきた。

「悩み事ですか?」

「……うーん、悩みっていうほどのものじゃないんですけど」

 僕は正面で鑑定依頼品に触っているスノウを見つめて、言った。

「これからの食事をどうしようかと思いまして」

「食事?」

 僕はジャド君に、日々の食事について悩んでいることを伝えた。

 僕の3食は基本的に朝は家にあるものを軽く摘まむ程度で済ませ、昼と夜に関しては屋台や料亭頼みになっているのだが、スノウの食事の量が増えてきていることを考えると、朝もしっかり腹に収まる食事にした方が良いのではないかと考えるようになったのだ。

 しかし、僕は料理は全くできない。やれたとしても食材を切ったり適当に焼いたりするしかできない腕前だ。

 そんな素人の腕で毎朝の食事を準備など、とてもできないのではないかと思ったのである。

 といったことを話すと、ジャド君はうーんと唸ってしばし考えた後、それならばと言った。

「それなら、あれですよ。料理の本を参考にしたらどうですか?」

「料理の本?」

 何でも、料理の作り方を記した本というものがあるらしい。

 冒険者が引退して家庭に入る時に参考にする本としてよく読まれているのだそうだ。

 本自体は一般大衆向けに発刊されているので、元冒険者でなくても需要がそこそこあるのだそう。

 そういう背景もあって、本屋であれば大抵の店で取り扱っているらしい。

「それって僕みたいな料理が全くできない人でも大丈夫なんですか?」

「基本的なことから書いてあるので、1から料理のことを勉強する人でも大丈夫なようになってるんですよ」

 ジャド君も鑑定士に転職して冒険者を引退した時に、自炊することを考えて本を買ったのだとか。

 お陰で自宅で料理をする時に困ることがなくなったそうだ。

 本といえば地図とか学者が読む活字だらけの書物のイメージが強いけど、そんな本もあるんだな。

 今日の帰りに本屋に寄って探してみるか。

「ありがとうございます。参考にします」

「役に立てたのなら良かったです」

 鑑定依頼品を持って、ジャド君は席を立った。

 ジャド君はしっかりしてるな。元冒険者だからなのだろうか、自分のことに対して責任を持ってるって感じがする。

 それに引き換え、僕は何なんだろう。

 部屋の掃除と洗濯くらいはしてるけど、生活力があるとは御世辞にも言えないレベルだし。

 いい歳した大人が、ってこういうことを言うんだろうな。

 今はもう1人で生活してるわけじゃないんだし、せめて簡単な料理くらいはできるようになろう。

 スノウを見て、ひっそりと決意を固めた僕だった。

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