第94話 春巻と餃子
料亭では新しいフェアをやっていた。
その名も、東方食フェアだ。
東方……此処からずっと遠くの東の国では、此処らではあまり見ないような一風変わった料理が数多く存在しているらしい。そういった料理ばかりを集めたフェアなのだそうだ。
余談だが、今でこそ普通にこの国でも食べられている米料理の多くは東の国から伝わってきたものなのだとか。
ぱっとメニューを見た感じどんなものなのか分からない料理が多いが、こうしてプッシュしているということは、不味いものはないはずである。
せっかくだし、今回は此処から選んでみることにしよう。
春巻、餃子……焼き物、いや揚げ物なのかな? 絵を見た感じだと、油を使った料理らしいことは分かるのだが……
フカヒレスープ、これは卵を使ったスープか。結構腹に溜まりそうな料理だな。
麻婆豆腐、これは見た目的に辛そうだからパスかな。僕は良くてもスノウが食べられないだろう。
色々あるなぁ。目移りする。
全ての料理にプラス2ガロンで御飯が付けられますとあるから、おそらくこれらの料理は米と一緒に食べるものなのだろう。
よし、決めた。この春巻と餃子というものを頼んでみよう。
早速店員さんを呼んで、料理を注文する。
運ばれてきた冷茶を飲みながら、周囲に目を向ける。
結構このフェアは好評なようで、僕たち以外にも東方料理を注文している客がちらほらと見受けられた。
スノウは子供用のカップに注がれた冷茶を美味しいと言いながら飲んでいる。
やがて。注文した料理が運ばれてきた。
春巻は、揚げ物らしい。薄い生地で具を筒状に包んでいるようで、手軽に摘まめそうな見た目の料理である。
餃子は、焼き物だ。もちっとした生地に美味しそうな焼き目が付いたユニークな形の料理で、何かの香草を使っているのか、良い香りがする。
一緒に米を頼んで良かった。これだけじゃ腹一杯にはならなそうだもんな。
僕は取り皿に専用のソースを注いだ。
何でも餃子を食べる時は、この醤油という特別なソースを付けて食べるのだそうだ。店員さんが言っていた。
それじゃあ、頂こう。
餃子をひとつ取り皿に取り、醤油を付けて、口に入れる。
噛むと、肉の味とにんにくの味を感じた。じゅわっと染み出た汁が醤油の塩味の効いた味と上手い具合に混じり合って、良い香りとなって鼻から抜けていく。
「これ、お肉の味が美味しいねー」
スノウは餃子が気に入った様子で、唇に醤油を付けながら小さな口を動かしている。
フォークを使うのは初めてだというのに、食べるのがなかなか上手いじゃないか。
どれ、春巻の方はどうだろう。
春巻には何も付けなくて良いらしいので、そのままぱくっと。
口の中でぱりっと生地が割れて、中からとろみのある具がとろっと出てきた。
これは……肉? 野菜? 分からないが、濃厚な味がする。今まで食べてきたどんな料理とも違う、独特の風味だ。
ふたつを食べ比べてみたが、僕は春巻の方が好みかな。このとろとろは癖になる。
スノウは餃子と春巻、両方食べてみたが餃子の方が好きだと答えた。より肉を感じる方がお好みのようだ。
餃子を食べて、春巻を食べて、合間に御飯。また春巻、餃子、御飯。時々冷茶。
いや、米が進むね。
油を使った料理というだけあって、小ぶりなのに胃にしっかり溜まるというのも嬉しい。
僕とスノウは器から米がなくなるまで、ふたつの料理をしっかりと堪能した。
スノウは1人前の量の米をしっかりと完食していた。
今回はメイン料理の量が少なめだったからな。でもこの分なら、普通に1人前の食事を出しても食べ切れるだろう。
「スノウ、お腹いっぱーい」
自分の腹を撫でながら、スノウが言う。
それを見ながら僕は冷茶で口を潤した。
今回も大満足の食事だったなぁ。




