第84話 肉巻きおにぎり
6人も採掘師がいると、坑道を掘り進める速度も速い。
その分調査する鉱石も多く出るのだが、その殆どは鉄鉱石で、たまに黒鉄鉱が出る程度と成果は思っていたよりも上がらなかった。
まあ、闇鉄鉱は珍しい鉱石だ。そう簡単に出るようなものではない。
それはクレールさんも分かっているようで、採掘師たちに諦めずに掘り進めるように指示を出し続けた。
それでも、人の身だ。働けばその分疲れ、空腹にもなってくる。
ある程度掘ったところで一旦休憩しようという話になり、僕たちは坑道の中で昼休憩を取ることになった。
採掘師たちが各々の荷物の中から昼食を取り出す傍らで、僕も持って来た鞄の中から食事を取り出した。
調理ギルドが作ってくれた肉巻きおにぎりだ。
包みを開き、ひとつをスノウへ渡す。
『このお肉、いい匂いがするねー』
肉巻きおにぎりを両手で掴み、匂いを嗅いでスノウが言う。
何のタレを使っているのかは分からないが、確かにこのおにぎりはタレが食欲をそそる良い香りを出している。
「君の弁当、美味しそうだね」
黒パンのサンドイッチを頬張りながら、リナさんが僕の手元を見て言う。
冒険者だから、珍しい携帯食には興味を惹かれるのだろう。
「調理ギルドにお願いして作って頂いたんですよ」
「調理ギルドの新作かい? 羨ましいね」
『お肉、タレが染みていて美味しいよ』
早速おにぎりを頬張ったスノウが感想を述べている。
僕も食べよう。
零さないように注意しながら、肉と一緒に米にかぶりつく。
肉を噛むと程好い甘辛さが染み出てくる。
それが米と混じり合い、絶妙な味となって口の中全体に広がっていく。
冷めていても美味いな、これは。
何より片手で食べられるというのもポイントが高い。
携帯食としては十分ありだと思うぞ、これ。
帰ったら早速ユージーンさんに報告しよう。
『美味しかったー』
もう食べちゃったのか、スノウ。
僕なんてまだ半分くらいしか食べてないのに。
やはり身体が大きくなって、食べる量が徐々に増えてきているようだ。
次に料亭に連れて行く時には、1人前の食事をあげてみよう。
そのようなことを考えながら、僕は残りのおにぎりを頬張ったのだった。
休憩が終わったら、採掘再開。
次々と掘り出されていく鉱石を、僕は流れ作業のように鑑定していく。
相変わらず鉄鉱石ばっかりだ。
「出てこないな、闇鉄鉱……」
顎鬚を撫でながら、クレールさんも呟く。
もう結構な量を掘っているのだが、闇鉄鉱のやの字も出て来ない。
やはり闇鉄鉱はギルドの在庫が混ざっただけなのか? そう思い始めた矢先のこと。
がらがら、と大きな音がして、びくっとした僕たちは音がした方に注目した。
見ると、壁の一部が大きく崩落していた。
「急に崩れたんですよ。さっきのオーガが暴れたせいで脆くなっていたみたいで」
ああ、そういえば吠えたり棍棒振り回したり足踏み鳴らしたりしてたっけ。
脆くなっているとはいっても、天井まで崩れるような脆さではないようだが。
「崩れたとこも鉱脈になってるようだな。掘ってみてくれ」
クレールさんの指示を受け、採掘師の1人が崩落した壁に鶴嘴を打ち込み始める。
出てきた鉱石を拾って鑑定する僕。
やっぱり鉄鉱石だ。
石を麻袋に入れ、別のひとつを手に取る。
この黒い色も大分見慣れたな。
独りごちながら、鑑定。
『【闇鉄鉱】
精錬すると闇鉄が採れる鉱石。』
……あ。
僕は口を開けて、鉱石が出てきた壁を見上げた。




