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第83話 VSオーガ

6つ目の評価を頂きました。ありがとうございます!

自分で思っている以上に大勢の方に当作品を読んで頂けているようで、大変嬉しく思っております。

 灰色の肌に筋骨隆々の身体。犬歯を剥き出しにした口に、血走った青色の瞳。

 坑道を目一杯塞ぐほどの身の丈。

 巨大な棍棒を持った巨人オーガが、地響きを起こしている張本人だった。

 な、何でこんな狭い坑道にこんな巨大な魔物が?

 それは他の皆も思ったことのようで、口々に色々なことを言い合いながら身構えている。

「ローア、身体強化魔法を!」

「分かったわ、気を付けてねリナ!」

 冒険者2人が採掘師たちとオーガの間に割って入り、声を上げる。

 リナさんは腰に差していたダガーを抜き放つと、オーガに向かって駆け出していった。

 弓術士だと思っていたが、どうやら彼女は斥候や剣士の役割も兼任しているようだ。

 ローアさんが唱えた魔法が、リナさんの全身を包み込む。

 リナさんの駆ける速度が一気に上昇した。

「こっちに来い木偶の坊! お前の相手はわたしだ!」

 オーガが棍棒を振り下ろす。そのすぐ脇を走り抜けて、オーガの足首にダガーで一撃を見舞う。

「グォオオオッ」

 足首を斬られ、オーガが全身のバランスを崩した。

 続けて膝の裏を斬り付けるリナさん。

 躊躇のない連続攻撃に、オーガが片膝をつく。

「サンダーバレット!」

 ローアさんの放った魔法が、オーガの心臓に命中する。

 強烈な電撃に身体を蝕まれ、オーガは苦しげな表情を顔に浮かべた。

「何つー非常識なデカさだ! 坑道が潰される!」

 彼女たちの戦いに巻き込まれないように身を退きながら、クレールさんが言う。

「小さい魔物でも崩落の危険があるってのによ!」

 ……小さい?

 彼の一言に、僕ははたと気付いた。

 あの巨体を圧縮魔法で縮めてしまえば、楽に掃討できるんじゃないか?

 何でこんな簡単なことに今まで気付かなかったのだろう。

 オーガの周囲で動き回っているリナさんに当てないように注意しながら、僕は狙いを定めて圧縮魔法を放った。

「コンプレッション!」

 ばちっ、と火花が散ったような音がする。

 僕の圧縮魔法を受けたオーガは、その巨体をみるみるうちに縮め……

 ……て、いかない?

 何で? 魔法は完璧だったはずなのに。

 僕のしたことに気付いたらしいローアさんが、注意深くオーガを睨みながら言葉を掛けてきた。

「圧縮魔法は意識のある生き物には効果がないわ!」

 そうなのか! てっきり何にでも効くものだと思ってた。

 イヴさんはそこまで教えてくれなかったから勉強になったよ。

 でも、これなら大丈夫なはず。

「コンプレッション!」

 狙いはオーガが持つ棍棒だ。

 武器がなくなれば、リナさんも戦いやすくなるはず。

 僕の圧縮魔法を受けてオーガの手にした棍棒が木の枝のように小さくなっていく。

 今まさに棍棒を振り上げようとしていたタイミングだったから、懐ががら空きになり大きな隙ができた。

「ナイスアシスト!」

 オーガの胸板にダガーを深く突き立てるリナさん。

 急所に攻撃を受けて、オーガが悲鳴を上げた。

 しかし、ダガーの刃では心臓にまでは届かないようだ。オーガは苦しそうに身を捩らせるが、倒れる素振りは見せない。

 リナさんを捕まえようと、手を伸ばしてくる。

 ダガーをオーガの胸に残したままリナさんは後方へ大きく跳ぶ。

 弓を取り出し、矢を番えてオーガの額に狙いを定めた。

『ねえねえイオ、あれは何?』

 オーガを観察していたスノウが尋ねてくる。

 僕があれは魔物だと伝えると、ふうんと言って翼を大きく広げた。

『魔物なら、やっつけていいんだよね? スノウ、戦うよー』

 眼前に、氷の槍が何本も出現した。

 ちょっと、いきなりこんなことしてリナさんには当たらないだろうね?

 氷の槍がスノウの意思に従って飛んでいく。

 ざくざくっとオーガの胸に音を立ててそれらが突き刺さる。オーガは鬱陶しそうに掌で氷の槍を払い、血塗れになったその手をリナさんに向けて伸ばしてきた。

 更に後方に飛び退いて、リナさんが番えていた矢を放つ。

 オーガの額の中心に矢が突き刺さる。

 急所を穿たれたオーガが天に向かって吠えた。

 びりびりと生じた振動で掘りかけだった壁の一部が崩れ、鉱石がばらばらと落ちてきた。

 間を置かず、次の矢がオーガの額を斜め下から貫いていく。

 上を向いていたオーガの上体がそのまま仰向けに倒れていき、どうっと砂埃を舞い上げながら横倒しになった。

「……やった、か?」

 遠巻きにオーガを見つめながらクレールさんが問いかける。

 リナさんは構えていた弓を下ろし、オーガに歩み寄った。

 胸に残されていたダガーを抜き取り、顔を覗き込む。

「……もう大丈夫だよ」

 彼女の一言に、採掘師たちは歓声を上げた。

 リナさんより余程逞しそうに見える採掘師たちも、やはり普通の人らしい。突如として目の前に現れたオーガには逃げ腰になっていたようだ。

 まあ、それは僕も同じなんだけど。

 それでも、圧縮魔法を放てる程度には度胸が付いてきたと思いたい。

「全く……こんな場所にこんなのが出るなんてね。一体何処から入り込んだんだろうね」

 オーガの死骸を見つめながら、リナさんが言う。

「ま、何が来ても負けるつもりはないけどね」

「やっぱりあんたたちを雇って正解だったな。オレたちだけだとこいつは対処しきれなかった」

 腕を組んでオーガを見下ろすクレールさん。

「さ、ぼさっとしてないで続きだ。まだまだ掘り足りないからな!」

 彼の号令で、採掘師たちが再び壁へと向かっていく。

 オーガは採れる素材がない魔物だが、このまま死骸を此処に残していても邪魔だということで、圧縮魔法を掛けて外に運び出すことになった。

 とんだ邪魔が入ったが、調査を中止することにならなくて本当に何よりだ。

 オーガを倒して喜んでいるスノウを撫でて落ち着かせながら、僕は壁と向き合う採掘師たちの背中を黙って見つめていた。

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