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第79話 新作料理

 12時。昼休憩の時間だ。

 鑑定を終えた依頼品を机の上に戻して、僕は大きく伸びをした。

「さて……と」

「先輩、昼飯はどうします? シルフの鍋亭ですか?」

 ジャド君がこちらを見て尋ねてくる。

 朝の倦怠感はすっかり取れたようで、今の彼はきりっとした顔をしていた。

 うん、男前だね。

「ちょっと調理ギルドに用事があるから、帰りに料亭に寄ってくつもりではいますよ」

「用事……ですか?」

「ええ。実は──」

 僕はジャド君に、5日後の出張鑑定の話をした。

 話を聞いたジャド君の瞳が、きらきらと輝いていく。

「ギルドの外でも活躍なされるなんて……先輩、格好良いです」

「僕としてはギルドの中で平穏に過ごしたいんですけどね……」

 僕は苦笑した。

 ジャド君は元冒険者だからそんなに脅威には感じていないのかもしれないけど、生粋の一般人からしてみたら街の外に出るというのは大冒険なのだ。

 魔物対策をしたり、物資の準備をしたり。

 ジャド君も出張するようになったら分かるよ、この苦労が。……多分。

「そういうわけなんで、今日はちょっとお先に休憩入らせてもらいますね」

「分かりました。行ってらっしゃい」

 ジャド君に見送られ、スノウを連れた僕は冒険者ギルドを出た。

 向かうのは調理ギルドだ。

 食事時は多忙らしく、料理ギルドの中は鍋やら何やらを抱えた調理師がせかせかと動き回る戦場になっていた。

 ……夕方に来た方が良かったかなぁ。

 ちょっと申し訳ないなと思いつつも、カウンターのところに置いてあるベルを鳴らす。

 待っていると、ギルドの奥からユージーンさんが現れた。

「イオ君か。何かまた困り事でも起きたんかの?」

「ええ。まあ」

 僕はユージーンさんに5日後のことを話した。

「……というわけで、手軽に食べられる軽食作りをお願いできないかなと思いまして」

「ふむ。それなら丁度いい料理があるぞい。うちの者たちと開発した新作料理なんじゃが」

 ユージーンさんは僕を調理ギルドの奥に案内した。

 調理台の上に、皿に盛られた料理が置いてある。

 ぱっと見た感じは、肉を巻いたおにぎりだ。何かのタレを付けて焼かれた肉が、実に良い香りを発している。

「肉巻きおにぎりじゃ。ボリュームのある携帯食をコンセプトにうちの調理師が考えた自信作じゃよ」

 確かにサンドイッチと比較すると食べ応えはありそうだ。

 何でも最近冒険者の間でボリュームのある携帯食の需要が高まっているとかで、何か作れないかと思い開発したのだそう。

「丁度感想が欲しかったところなんじゃ。うちの料理開発を助けると思って、こいつを持って行ってはくれんかの」

 携帯食として申し分なさそうならこのまま製品化するとのこと。

 そういうことなら、喜んで持って行こう。

 僕が頷くと、ユージーンさんは嬉しそうに僕の身体を叩きながら言った。

「そうか、引き受けてくれるか。すまんのう」

 5日後の早朝に食事を用意してくれるとのことで、約束を取り付けた僕は調理ギルドを後にした。

 肉巻きおにぎりか……どんな味がするんだろう。

 食べたことのない料理に期待感を抱きつつ、僕は料亭の扉をくぐった。

 米料理を見せられたので、今は何だか米が食べたい気分だ。

 昼食はがっつり米が頂ける料理にしよう。

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