第70話 2人目の鑑定士
緊急依頼の報酬金は、ワイバーンの素材の買取代金も含めて1人当たり3800ガロンになった。
今回はワイバーンが13匹いたので、採れた素材の金額が相当なものになったためこの値段になったそうだ。
改めて聞くと3800ガロンって結構な金額だなって思う。
それだけ、ワイバーン討伐は危険を伴う仕事なんだろうけれど。
「それじゃあ、依頼の成功報酬ね。今回はありがとね」
ヘンゼルさんから報酬を受け取ったラーシュさんたちは、こちらこそと頭を下げた。
「イオさんが協力して下さったお陰で無事にダンジョン調査を終えることができました。本当にありがとうございます」
これからラーシュさんたちは、ダンジョンの調査記録を持って仕事の依頼者のところへ行くそうだ。
一息つく暇もない。忙しいね、冒険者というのは。
またいつかの再会を約束して、ラーシュさんたちはラニーニャを旅立っていった。
「イオちゃんも。特別ボーナスよ」
そう言って、ヘンゼルさんは小さな革袋を取り出した。
「イオちゃんもすっかり冒険者の仲間入りね。活躍の場が増えてアタシも嬉しいわ」
……僕としては、身の危険を伴う活躍の場はいらないんですけど。
今はスノウがいるから多少の荒事にも対処できるようになったが、僕個人としては此処で平穏な仕事に従事している方がいい。
受け取った革袋の中を覗く。
金貨が10枚、入っていた。
今回は特に危険な仕事だったため、色を付けてそれだけの金額なのだそうだ。
……僕の1ヶ月分の給料くらいあるな。
予想以上に実入りのある臨時収入である。
「それでね、イオちゃん。アタシ考えたんだけど」
懐に革袋をしまう僕を見つめながら、ヘンゼルさんが言った。
「鑑定士を、もう1人雇おうと思ってるの」
……何だって?
目を瞬かせて、僕はヘンゼルさんの顔を見た。
「鑑定士を、ですか?」
「ほら、最近イオちゃん出張が多いでしょ。鑑定業務が滞りがちになってるから、その穴埋めができる子がいてくれたら助かるなって思ったのよ」
確かに、僕は最近になって冒険者ギルドを留守にすることが多くなったが……
でもそれって、僕が出張になるような仕事を引き受けなければ済むことなんじゃ?
「イオちゃんに鑑定士をやめろって言うつもりはないのよ。でも、他所の冒険者ギルドではやってないような仕事を請け負うのって、ギルド目線で見ると結構な利益になるのよね。その役目はイオちゃんでないと背負えないって言うか……イオちゃん以外には任せられないってアタシは思うのよ」
出張業務を控えるという選択肢はないんですね。
はあ、と僕は生返事を返した。
どうやら僕は、これからもダンジョン調査やら戦場出張やら、身の危険を伴う場所へ出かけなければならないらしい。
特別ボーナスは出るけれど、そう危険な思いをしてまで金稼ぎしたくはないな。
まあ、鑑定士を雇うことには反対はしないけど。
「明日から、募集してみるわ。新しい子が来たら、イオちゃん、色々教えてあげてね」
「……分かりました」
やって来た冒険者の相手を始めるヘンゼルさんをカウンターに残して、僕は自分の仕事場に戻った。
机の上に置かれている鑑定依頼品を見つめながら、思う。
新しい鑑定士が来たら、僕の仕事は出張業務専門になるんじゃないか──
それはちょっと嫌だなと肩を落としつつ、鑑定を済ませるべく僕は鑑定依頼品を手に取ったのだった。




