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第67話 VSワイバーン

「攻撃開始!」

 緑の外套を纏った弓術士が声を上げる。

 一斉に放たれた矢は、雨のようにワイバーンの群れに降り注いだ。

 翼の付け根や皮膜に鏃が突き刺さり、ワイバーンが翼をばたつかせて吠えた。

 翼の付け根をやられて飛べなくなったのか、ワイバーンの1匹が地面を這いながらこちらに近付いてくる。

 それを迎え撃つ戦士たち。剣や斧など各々の武器を手に、ワイバーンへと向かっていく。

 ラーシュさんも剣に炎の力を込めて、駆け出していった。

 魔法の狙撃は終わらない。戦士たちが地面を這うワイバーンと戦っている間も、別の個体を狙って炎や雷を浴びせ続けている。

 空を飛んでいるワイバーンは今のところはいない。魔法や弓の狙撃が上手いこと牽制になっているようである。

 僕は薬品入りの箱を持って魔道士たちがいる方へと移動した。

「ファイアウォール!」

 他の魔道士たちに混じって魔法を唱えているルカさんを発見する。

 ルカさんはいつになく引き締まった表情でワイバーンを睨み付け、高威力の魔法を連発していた。

 徹夜しているというのに、それを微塵も感じさせない集中力だ。

「グアァ」

 奥の方にいたワイバーンが鳴き声を発して翼を広げる。

「まずい、飛ぶぞ!」

 誰かが叫ぶ。

 ばさり、と空気を叩く音。

 砂煙を上げて、新緑色の巨体が宙に舞い上がった。

 よく見ると翼の付け根に切り傷のようなものが付いているのが見える。

 あのワイバーンは、翼をやられているにも拘らず空を飛んだのだ。

 血走った黒い瞳が、ぎょろりとこちらを睨み付ける。

 戦士たちの頭上を飛び越えて、弾丸のように急降下。

 魔道士たちが固まっているところに、足の爪を向けながら飛び込んできた。

「うわッ!」

「きゃあ!」

 魔道士たちが爪を避けようとしてその場に倒れ込む。

 ルカさんもワイバーンの一撃を避けようと身を屈めようとするが、背負っているバックパックが邪魔になり、動作が一瞬遅れた。

 ワイバーンの爪が、ルカさんの胸元を深く抉った。

 血を零しながらルカさんが仰向けに倒れる。

 ワイバーンは宙高く舞い上がり、こちらを見下ろして汚い声で鳴いた。

「ルカさん!」

 僕はワイバーンに注意しつつルカさんに駆け寄った。

 持っていたポーションの瓶の蓋を開け、彼女の喉に急いで流し込む。

 これで、多少は傷が塞がるはずだ。

「ファイアボール!」

 その場にいた魔道士の1人が、頭上に向けて魔法を放つ。

 生み出された火球は、ワイバーンの頭に直撃して火の粉を散らした。

 悲鳴を上げるワイバーン。それを見上げていたスノウが、ぐるると唸って翼を広げた。

『ワイバーン、悪い奴。スノウ、戦って倒すよ!』

「あ、こらっ、スノウ!」

 僕の制止も聞かずに肩から飛び出して、ぴいぃと甲高い声で鳴いた。

 スノウの頭上に生まれた氷の槍が、ワイバーンの翼の付け根を串刺しにする。

 元々傷を負っていたこともあってあっさりと翼をやられたワイバーンは、もがきながら地面へと落ちた。

 どう、と落ちた身体を持ち上げようとするところに、続けてスノウが放った雷が降り注ぐ。

 ばちばちっと荒れ狂う雷に全身を蝕まれ、ワイバーンがのたうつ。

 そこに、とどめと言わんばかりに放たれた特大の火球が直撃する。

 ワイバーンの頭を飲み込んで火柱を上げる魔法を、周囲の魔道士たちは呆気に取られて見つめていた。

 何て威力だ、などと呟いているのが聞こえてくる。

 スノウ、見た目は小さな子竜だもんね。驚くのも分かるよ。

 炎が消え、黒焦げになった頭が姿を現す。

 ワイバーンは全身をひくつかせた後、ぐったりとして動かなくなった。

『大きい奴にだって、スノウは負けないんだから!』

 ワイバーンを見下ろして、スノウは得意げに言った。

 本当に、倒しちゃったよ。スノウがほぼ1匹で。

『ねえ、凄い? スノウ、凄い?』

 僕の元に戻ってきたスノウが何度も尋ねてくる。

 これは頷かざるを得ない。

「……凄いよ、スノウは強い子だ」

『うん、スノウは強い子ー』

 宙返りをして、元の通り僕の右肩に降りるスノウ。

 そんな僕たちに注目してくる魔道士たちの視線が熱い。

 ……倒したのは成り行きでそうなっただけだからね、戦力として期待はしないでね?

 と、こんなことをしている場合じゃなかった。

 ルカさんは……

 僕は横たわっているルカさんに視線を戻した。

 ルカさんは荒い呼吸を繰り返しながら、自分で負傷した胸の辺りを掌で押さえていた。

 血は……止まっている。ポーションが効いてくれたようだ。

 後は回復魔法ができる魔道士の人に任せよう。

「どなたか、回復魔法をお願いします」

 すぐに名乗りを上げてくれた魔道士さんにルカさんを預け、僕は未だ激戦が繰り広げられている前線の方を見た。

 戦いは、まだまだ終わりそうにない。

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