第65話 冒険者ギルドは大忙し
4つ目の評価を頂きました。本当にありがとうございます。
どの辺りが読みやすいとか読みづらいとか、どうなんだろうなと試行錯誤しながら筆を取っています。
これからも当作品を宜しくお願い致します。
「大変なことになったな」
慌しく冒険者ギルドを出入りする冒険者たちを見つめながら、シークさんは腕を組んだ。
「何せワイバーンだもんな。本物なら一世一代の大仕事だ。腕も鳴るってもんだぜ」
「こんな時に解体の話ですか?」
僕はやや呆れた様子でシークさんを見た。
まあ、シークさんが胸躍らせるのも分からないでもない。ワイバーンは竜に次いで採れる素材に希少性がある魔物なのだ。
皮や翼は耐久性の優れた防具の素材に、爪や牙は硬度の高い武器の素材に、肉は高級な食材になる。ワイバーンを狩った者は一財産を手に入れるとまで言われる存在なのである。
しかし、それだけにワイバーンを狩るのは一筋縄ではいかない。腕利きの冒険者が何人も集まった討伐隊を編成してようやっと為し得る所業なのだ。
緊急依頼としてヘンゼルさんがボードに貼り紙をしていたが、果たしてどれだけの人数が集まるだろうか……
『イオ。ワイバーンのところには行かないの?』
スノウがとんでもないことを言い出した。
僕はぶるりと身震いして首を振った。
「僕は冒険者じゃないから行かないよ。此処で冒険者さんたちのお手伝いをするんだよ」
『スノウ、ワイバーンのところに行きたいなぁ。魔法をたくさん撃って倒すんだー』
「駄目駄目、行かないよ。此処で大人しくしてようね」
『つまんなーい』
何と言われようと行くわけにはいかないよ。僕はスノウと違って戦えないんだからね。
全く、血気盛んで困るね、スノウは。
竜って皆そんなもんなのかもしれないけどさ。
「イオちゃん、ちょっといいかしら?」
カウンターから僕を手招きして呼ぶヘンゼルさん。
「何ですか?」
「錬金術ギルドに行って、ニエルヴェスちゃんに冒険者さん向けの薬をたくさん用意してくれるようお願いしてくれる? 冒険者ギルドの在庫だけだと心許ないのよ」
冒険者向けの薬というと……ポーションやエリクサーか。
「分かりました」
「お願いね」
僕は足早に冒険者ギルドを出て、一路錬金術ギルドへと向かった。
ワイバーン出現の話は各ギルドに既に話が行っているらしく、錬金術ギルドに到着するなりニエルヴェスさんはギルドの奥から薬の在庫を引っ張り出してきてくれた。
作り置きしていたポーションだそうだ。
「大量に必要って言うなら今から作るよ。ま、作るのが無駄になることを祈るけどね」
そう言って、ニエルヴェスさんはギルドに在中の錬金術師たちに声を掛けた。
流石、仕事が早くて助かる。
僕は渡された薬を持って冒険者ギルドへ戻った。
預かった薬をヘンゼルさんに渡して、ギルドカウンターの裏手に回る。
今日は此処でヘンゼルさんの助手だ。鑑定士としての仕事は、全くないとは思わないが余程のことがない限り来ないだろう。
冒険者たちの相手をするヘンゼルさんの横で書類を纏めたり、仕事受注の処理をしたりしながら過ごす。
そうして昼近くになった頃。緊急依頼を受けて外に出ていたラーシュさんたちが戻ってきた。
「ワイバーンがいました。街の南に居座っているのが発見されたそうです」
何でも編成された討伐隊の斥候役の冒険者が、偵察先の平原で見つけたらしい。
街道のど真ん中ということもあって、馬車等が立ち往生しているそうだ。
ラーシュさんたちはこれから討伐隊に加わり、ワイバーンと戦うとのこと。
その際に、薬品等の物資を運ぶ人員が必要とのことで、人手を集めているとの話を聞かされた。
ラーシュさんたちとヘンゼルさんの視線が、僕に集まった。
……嫌な予感が。
「イオちゃん」
ヘンゼルさんが僕の名を呼ぶ。
……この流れって、やっぱり、そうなんですか?
そりゃ、此処にいる関係者でそこそこ若くて手が空いている人間といったら僕くらいのものなんだろうけどさ。
『ワイバーンのところに行けるの? やったー』
スノウが嬉しそうに宙返りをする。
いや、戦いに行くんじゃないからね。あくまで荷物運びだからね。
僕はヘンゼルさんから薬品入りの箱を渡されて、押し出されるように冒険者ギルドから出されてしまった。
今回は一般人として裏方に務めようと思っていたのに、何でこうなっちゃうんだろうなぁ……




