第57話 ノエロニの街とダンジョン
その日は雲ひとつない綺麗な晴天だった。
突き抜けたような済んだ青が、何処までも続いている。
すっかりお馴染みとなった旅装束に身を包んだ僕は、冒険者ギルドの前でラーシュさんたちが来るのを待っていた。
調理ギルドから受け取った携帯食料を詰めた鞄を肩から下げて、腰には鍛冶ギルドで購入した例の剣を下げて。
魔物と戦うのはラーシュさんたちだけど、全く危険がないわけではないからね。
スノウは定位置となった僕の右肩の上で、翼を広げたり折り畳んだりしながら通りを行く人々を観察している。
スノウは戦う気満々だったけど、いざ実際に戦闘になったらどうやって戦うつもりなんだろう?
「イオさん」
通りの向こうから、ラーシュさんたちが歩いてきた。
ルカさんが背負っているバックパック、相変わらず大きいなぁ。今回も色々と物資を詰めて持って来たようだ。
「お待たせしました。今回も宜しくお願いします」
ラーシュさんと握手を交わし、僕たちは早速ラニーニャを出発した。
ダンジョンがある場所へはノエロニを経由することになるが、そこまでは移動に馬車を使う。
これなら徒歩で3日かかるところを1日で移動することができるのだ。
馬車での旅は、順調だった。
途中はぐれの魔物が出没したりもしたが、そこは慣れているラーシュさんたちが討伐して、問題なくノエロニまでの旅を満喫することができた。
ノエロニの街に着いたのは夕方だった。
流石にこの時間からダンジョンに入ると夜をダンジョンの中で明かすことになるので、安全を考慮して1日目の旅はこれで終了に。
2日目から、ダンジョンに潜ることになった。
ノエロニの冒険者ギルドで紹介された宿に部屋を取り、そこで1泊。
用意した携帯食糧も、街に滞在しているので消費せずに済んだ。
やはり、物資は可能な限り温存したいからね。
ゆっくり睡眠を摂って、翌日からの務めに備えた。
2日目。
朝食を済ませた僕たちは、一路ダンジョンへと向かった。
問題のダンジョンは、ノエロニの街から北東に1時間ほど進んだところにあった。
植物が生い茂る林の中に切り立った崖があり、そこに魔物が口を開いているかのような装いの洞窟が。
ラーシュさん曰く。この洞窟がダンジョンの入口らしい。
いよいよなんだなという思いを胸に、僕は背筋をしゃんと伸ばした。
「では、行きましょう」
ランタンに火を入れて、ラーシュさんはダンジョンの中に足を踏み入れる。
隊列の形は以前の時と同じだ。ラーシュさんの次にロイドさんが、その後に僕、ルカさんという順番で1列になって進んでいく。
中に入ると、じめっぽい、カビのような臭いが鼻についた。
水分を好む魔物が多く住んでいそうな雰囲気だ。
『ダンジョン~』
スノウは尻尾を揺らしながら、岩肌が続く暗い道を興味津々と見つめている。
すっかりやる気だなぁ、うちの子は。
と。
ラーシュさんが立ち止まった。
「……何かいますね」
剣を抜き、ランタンを持った手を先に翳して様子を伺う。
身構えるロイドさんとルカさん。
僕も慌てて腰の剣を取り、魔法をいつでも放てるように心の準備をして前方を見据えた。
しんとした通路の先から、ひたひたと何かが歩いている音が聞こえてくる。
待つこと、しばし。
警戒する僕たちの前に、それは姿を現した。




