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第50話 調査依頼、再び

「実は、新しいダンジョン調査の依頼を受けまして」

 席に着くなり、ラーシュさんは話をし始めた。

 此処より北──ノエロニの街の近くに新たなダンジョンが誕生し、その調査のために国が冒険者を雇った。

 その雇われた冒険者というのが、ラーシュさんが率いるパーティ。何でも以前行った調査の内容に高い評価を得ていたことから、直々に依頼があったのだそう。

 ラーシュさんたちは依頼を引き受けることにしたのだが、すぐに出発するというわけにはいかなかった。

 何故なら、当時その調査を行ったパーティには、彼らの他に鑑定士が同行していたからである。

 再び調査の依頼をするために、ラーシュさんたちは此処ラニーニャを訪れた。

 そして、現在に至るというわけである。

 つまり……僕に調査の同行を依頼するべく、冒険者ギルドに来たということなのか。

 僕は頭を掻いた。

 鑑定士ならノエロニの冒険者ギルドにもいただろうに、何でわざわざ僕のところに来たのだろう。

 尋ねると、ノエロニの鑑定士は女の子だったから依頼をするのが憚られたのだそう。

 ……男だったら危険な目に遭ってもいいんですかい。

 というのは建前で、おそらくパーティを組むなら多少なりとも気心が知れた人間の方が気楽だと思ったのが本音なのだろう。僕だったらそう思う。

 ……ダンジョンねぇ……

 僕はくらくらする頭を何とか働かせて、思案した。

 ラーシュさんたちは僕が戦えないことは前回同行した時に分かっているはずだから、戦闘を強制したりはしないだろう。

 それでも危険な目に遭うことには変わりはないわけで。

 僕としては、遠慮願いたい話なんだけどなぁ……

 ちらり、とラーシュさんの顔を見る。

 ラーシュさんはまっすぐな瞳で、僕の顔を見つめている。

 僕がこの依頼を引き受けることを疑っていない顔だ。

 ……これは、引き受けざるを得ないだろうな。

 嫌だと言ってもラーシュさんは前回同様食い下がってくるだろうし、それで結局引き受けることになったのだから、無駄な抗いはしないに限る。

 それでも、言うべきことは言わせてもらうけどね。

「引き受けるのは構わないのですが……」

 僕は微妙に焦点の合わない目をラーシュさんに向けて、言った。

「僕、風邪を引いてしまいまして……できれば、それが治ってからにして頂けると有難いのですが」

「それは、無論です。ダンジョンに潜るには体調を万全にするのは冒険者の務めですから」

 僕は冒険者じゃないんですけどね。

 とりあえず、体調が良くなるまで待ってもらえるようで良かった。

 ラーシュさんたちはしばらくラニーニャに滞在するとのことで、都合が良くなったら連絡するということで今回の話は纏まった。

 ──ラーシュさんがギルドを去ってから。

 カウンターで話を聞いていたヘンゼルさんが、台帳の整理をしながら言ってきた。

「イオちゃん、すっかり冒険者になっちゃったわねぇ」

「……もう諦めてます」

 ぱた、とテーブルに突っ伏して、僕は力なく言葉を返した。

 反論する気も起きない。やっぱり風邪引いてる時に交渉なんてするもんじゃないね。

「ちわー、薬届けに上がりました……って、大丈夫? 死んでるけど」

 薬が入ってるのだろう紙袋を携えたニエルヴェスさんが、入ってくるなり小首を傾げた。

 ヘンゼルさんは苦笑した。

「大丈夫よ。新しいお仕事が入ってプレッシャーを感じてるだけだから」

「ふうん?」

 ぼんやりとニエルヴェスさんに目を向ける僕に、彼は歩み寄ってきて手にした薬を目の前に置いた。

「とりあえず、これ。副作用でちょっとばかり眠くなるけど、それは我慢して」

「……ありがとうございます」

 僕は上体を起こして薬を受け取った。

 まずは、この倦怠感をどうにかしないと。依頼を憂うにしても何にしても、それからだ。

 紙袋を開けて瓶入りの薬を取り出し、僕はそれを2人が見ている前で呷ったのだった。

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