第37話 冒険者の旅立ち
「イオさん、お世話になりました」
冒険者ギルドに戻って。無事に装備品の交換も終えた2人は、僕に対して深々と頭を下げた。
剣士のユーリ君と、魔道士のコニアさんか。
うん、なかなか様になってるじゃないか。
「俺たち、クエストをどんどんこなして早く1人前の冒険者になってみせます」
「貴方たち、仕事の成功報酬よ。こっちに来てちょうだい」
書類をぱらぱらと捲りながら、ヘンゼルさんがカウンターから2人を呼んだ。
「クロウラーの駆除依頼。何事もなく達成……というわけで、成功報酬の150ガロンよ。金貨1枚と銀貨5枚ね。確認してちょうだい」
小さな革袋に入った貨幣が2人の前に置かれる。
それの隣にもうひとつ革袋を置いて、ヘンゼルさんは続けた。
「こっちはクロウラーから採れた素材、繭玉の買取代金よ。500ガロン入ってるわ。今回は運が良かったわね」
流石絹糸の材料となる素材だ。買取代金も少々お高めである。
ユーリ君は嬉しそうに代金を受け取った。
冒険者は何かと物入りの職業だ。あれらの代金が、彼らのこれからを助ける資金になってくれるよう祈るばかりである。
……600ガロンじゃちょっと物足りないかな?
「ありがとうございます!」
「こちらこそ、良い素材を提供してくれてありがとう。助かるわ」
ヘンゼルさんは微笑んだ。
「貴方たち、しばらくはラニーニャにいるんでしょ? 何かあったら冒険者ギルドに来なさい、力になるわよ」
言って、ちらりと僕の方を見るヘンゼルさん。
……何だろう、今の意味ありげな視線は。
はい、とユーリ君たちは頷いた。
「その時は、宜しくお願いします」
「楽しみに待ってるわ」
──ギルドを去っていく彼らを見送って、ヘンゼルさんは機嫌良さそうに肩を揺らした。
「ああいう子たちが、未来の冒険者ギルドを、この街を支えていくのよね」
「そうですね」
「……で。イオちゃんにお願いがあるんだけど、いいかしら?」
「何ですか?」
麻布に包まれた物体をカウンターの陰から取り出して、ヘンゼルさんは言った。
「今回採れたクロウラーの繭玉。裁縫ギルドに届けてもらえるかしら」
……確か前回届けたのは絹糸だったが、繭玉のまま渡しても問題はないのだろうか。
尋ねると、繭玉の状態でも特に問題はないとのこと。
何でも裁縫ギルドには、素材を糸から紡いで布にする技術を持った裁縫士がいるそうだ。
僕は頷いて、ヘンゼルさんから繭玉入りの布包みを受け取った。
「分かりました」
「お願いね」
裁縫ギルドに行くのは久々だ。この装束を受け取って以来か。
何のかんのでこの旅装束は着心地が良いし、結構お世話になっているから、新しい服を裁縫ギルドで見繕うのはありかもしれない。
給料日も間近だし、懐が潤ったら、ナンナさんに相談してみようかな。
色々考えながら、僕は裁縫ギルドを目指して冒険者ギルドを発った。




