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第34話 夢を追う若人

 少年の鑑定結果はこうだ。


『【ユーリ・ヴァルサイ】

 STR:108 DEX:72 VIT:99 AGI:68 INT:55 MND:62

 状態:正常』


 STRというのはいわゆる腕力のことで、この数値が高い者は武器を振るう戦士系の職業が向いている。

 逆に数値が最も低いのはINTだが……これは知力を表す言葉で、魔道士職にとっては重要になる能力だ。

 つまり。彼は魔道士よりも戦士系の職業の方が適正があるという結果が出たことになる。

 彼は魔道士の格好をしてはいるが、残念ながら魔道士としての適正は低いと言わざるを得ない。

 同じ要領で、少女の方も鑑定してみる。


『【コニア・ペタロフカ】

 STR:50 DEX:66 VIT:70 AGI:65 INT:112 MND:91

 状態:正常』


 こちらはユーリ君とは正反対で、魔道士職の方が向いているということが能力値から分かる。

 鎧は結構似合ってはいるけれど、残念なことに剣士としての適正は低いようだ。

 これをそのまま伝えるのは心苦しいが、これも僕の仕事である。

 此処で曖昧に伝えては、彼らのためにならないしね。

「鑑定が終わりました」

 2人の喉が鳴った。

 期待と不安が入り混じった視線が、まっすぐに僕を捉えている。

「まず、ユーリさんですが」

 一呼吸置いて、僕は言った。

「腕力に優れているという結果が出ました。どうやら、戦士としての適正が高いようですね」

「あの、俺……魔道士志望なんですけど、そっちは向いてないってことなんですか」

「現在の能力値を見た限りでは、適正は低いと言わざるを得ないですね」

「……そんなぁ」

 明らかに落胆した様子のユーリ君。

 それじゃあ、と身を乗り出してくるコニアさん。

「あたしは? どうなんですか?」

「コニアさんは、魔道士としての適正が高いです。魔道士でなくても、何かしら魔法を扱う職業が向いてます」

「えぇー」

 不満そうに唇を尖らせて、コニアさんは自分の腰に目を落とした。

 ベルトに下げた剣を見ているようだ。

「せっかく剣を買ったのに……」

「本当に、俺、魔道士向いてないんですか? 何とかならないでしょうか?」

 何とか、と言われても。

 僕は鑑定結果をそのまま言ってるだけだからなぁ。

 鑑定魔法は嘘はつかない。鑑定魔法が提示した結果は、誰が何と言おうと絶対なのである。

「そうだ」

 ぽん、と手を打ち鳴らすユーリ君。

「冒険者ギルドって、クエスト受けられますよね?」

「?……はい。斡旋してますよ」

「簡単な魔物討伐のクエストで、試してみては駄目でしょうか? 本当に魔道士の適正がないのかどうか、実際にこの目で確かめたいんです」

 ……簡単な、とは言うけれど、魔物討伐の依頼クエストって基本的に命を張る仕事だよ。

 魔道士としての適正を見ると言うからには魔法を使うことが前提になるが、彼は使える魔法があるのだろうか。

 ユーリ君の隣で、コニアさんがうんうんと頷いている。

 どうやら彼女も、自分に剣士としての適正がないのかどうかを腕試しして調べるつもりのようだ。

 ……若いって凄いな。恐れるということを知らないのだから。

 僕はこめかみの辺りを掻きながら、眉間にやや皺を寄せた。

「……鑑定結果に嘘はないのですけどね……」

「鑑定士さんも一緒に来て下さい。一緒に確かめてもらいたいんです」

「……え?」

 唐突の申し出に、僕は自分でも間が抜けてると分かる声を発した。

 僕も同行しろって……僕、一般人なんですけど。

 どう答えていいか分からず、カウンターの方を見る。

 ヘンゼルさんはそうねぇと言いながら、1枚の紙を取り出した。

「そういうことなら、これなんてどうかしら。街道沿いに巣を作っているクロウラーの駆除依頼。初心者向けの仕事よ」

 僕が同行させられそうになっている部分はスルーですか。

 何か最近、何かと狩猟地域に狩り出されることが多くなってる気がする。

 頻繁に鑑定士がギルドを留守にするのは良くないと思うんだけど、その辺りをヘンゼルさんはどう考えているのだろう。

「イオちゃん、クロウラーの繭玉が獲れたら裁縫ギルドが買い取るから、ナンナちゃんに話してあげてね」

 ……ひょっとして、仕入れの一環に思われてる?

 あの、僕が駆除に行くわけじゃないんですからね? 僕はあくまで付添い人ですからね?

 何だか胃が痛くなってきた。

 すっかりやる気になっている若者2人を前に、僕は目に見えない程度にこっそりと溜め息をついたのだった。

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