第288話 新しい鑑定士
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僕が冒険者ギルドに帰ると、そこには意外な光景があった。
ギルドカウンターに、見たことのない少女が立っていたのだ。
年の頃は15くらいといったところか。ちょっと赤味がかった金髪をボブカットにした魔道士姿の可愛らしい少女である。
冒険者……ではない。冒険者だとしたらギルドカウンターで受付嬢をやっている理由が説明できないからだ。
誰かの身内だろうか?
僕が訝っていると、ギルドの奥からポーションの瓶を詰めた木箱を抱えたノーグさんがやって来た。
「おっ、帰ったかイオ!」
木箱をカウンターに置いて、ノーグさんは笑顔で僕を迎えてくれた。
「ただいま帰りました」
「見た感じ怪我とかはしてなさそうだな。無事に帰って来れて何よりだ」
カウンターの少女にカウンターから出てくるように言って、彼は続けた。
「紹介するぞ。新しく此処で働くことになった鑑定士のマキノだ」
え、鑑定士?
鑑定士募集の貼り紙はしてたけど、今まで反応らしい反応がなかったからこりゃ来ないかなって思ってたんだよ。
そうか、遂に新しい鑑定士が見つかったのか。
「マキノ・ラニです。宜しくお願いします」
小鳥が囀るような可愛い声でマキノさんが挨拶をした。
「鑑定士のイオ・ラトンです。初めまして」
僕は会釈をした。
「マキノは若いがなかなかいい腕をしててな。昨日と今日、お前の代わりを立派に務めてくれたんだ」
ノーグさんはマキノさんの背中をぽんと叩いた。
あの口ぶりだと、マキノさんは相当できる鑑定士なんだろうな。僕がいなくても問題なく鑑定業務をこなすことができたようだから。
それなら……僕の後任を任せても問題はないだろう。
僕は元々此処に新しい鑑定士が来るまでの間だけってことで此処に勤めていたのだ。新しい鑑定士が来た今、僕が此処に勤める必要はなくなったと言っていい。
すぐにというわけにはいかないけど、彼女に引継ぎをして、全てが済んだらラニーニャに帰ろう。
これから忙しくなるな。
「ノーグさん、スノウはいますか?」
「ああ、奥の部屋にいるぞ」
「ありがとうございます」
僕は奥の部屋に向かった。
部屋のドアを開けると、物音に気付いたスノウが振り向いて、表情をぱっと輝かせた。
椅子から飛び降りて、僕の足にぎゅっと抱き付いてくる。
「イオ! 何処行ってたの! スノウ1人で淋しかったんだよ!」
「ごめんごめん。ちょっと出かけてたんだよ。もう用事は終わったから」
「スノウね、昨日はノーグのおじちゃんのお家に行ったの。御飯も一緒に食べたんだよ」
「そうなんだ」
どうやら僕がいない間のスノウの世話はノーグさんがしていてくれたらしい。
スノウ、失礼なことしてないよな? 普段から言い聞かせているとはいえ心配だ。
「スノウ、帰るよ」
「うん」
スノウと手を繋いで、僕は仕事場から出てギルドカウンターに戻った。
「ノーグさん、僕がいない間スノウの面倒を見て下さったみたいで、ありがとうございました」
「何、気にするな。スノウはいい子にしてたから手が掛からなかったしな」
な、とノーグさんがスノウの顔を覗き込んで言う。
スノウはうんと大きく頷いた。
「イオ、帰るのか?」
「はい。もう夕方ですし」
「そうか」
明日から宜しく頼むな、と言って、ノーグさんは僕たちを見送ってくれた。
今日は料理する気力がないから、夕飯はチェリー・ミックスで済ませよう。
僕はスノウを連れて、いつもの酒場へと向かった。




