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第284話 世界の未来のために

67個目の評価を頂きました。ありがとうございます!

 城下町は、僕の予想に反して普通の装いをしていた。

 道行く人も、魔族だということ以外は全く普通の人だ。

 店には売り物が並び、売り子がお客さんを相手に商売をしている。

 値札を見ると、書いてある通貨の単位は僕たちが使っているものと同じガロンだった。どうやら魔族は、僕たち人間が使っている貨幣をそのまま自分たちの国の通貨として使っているらしい。

 買い物をしようと思えば普通にできそうな雰囲気だ。

 そんなわけで、僕たちはたまたま目に付いた喫茶店に入ることにした。

 店内は、落ち着いた雰囲気の普通の店といった装いだった。テーブルには花が飾られた花瓶があり、使われているテーブルや椅子も僕たちが普段使っているものとそう差はない品々で。

 店員さんがお客さんのテーブルにお冷を運んだり注文を聞いたりしている様子も同じだ。

 肝心のメニューはというと。

 魔物を食べる習慣がある人間の食文化だが、それは魔族も同じらしい。メニューには魔物肉を使った料理やデザート類がずらりと並んでいた。

 まあ、中には変わった料理もある。

 このスライム入りフルーツの盛り合わせなんて、一体どんな味がするんだろう。

 フェルディユさんは甘味に興味津々のようで、何を注文しようか真剣な顔をして選んでいた。

 僕はとりあえず紅茶を注文した。

 フェルディユさんは散々迷った末に、例のスライム入りフルーツの盛り合わせを注文していた。チャレンジャーだなぁ。

 店員さんが僕たちの注文を聞いて店の奥に引っ込んだのを見つめながら、僕は彼女に尋ねた。

「何があったんですか? 調査隊が全滅するなんて……そんなにダンジョンの中は凶悪な魔物で溢れてたんですか」

「ダンジョンは……私たちの想像を遥かに超えていました」

 フェルディユさんは話してくれた。

 ダンジョンは今までに見たこともないような魔物で溢れ返っており、少し歩くと魔物に出会って戦闘になるといったことを繰り返していたらしい。

 そんな状況が続くうちに調査隊は疲弊していき、絶えない魔物の襲撃に対応できなくなってしまったのだそうだ。

 確かに休憩もろくに取れないんじゃ、総崩れになるのも無理はない気がする。

 それにしても……そんなことになっているのか。ダンジョンの中は。

 そんなに魔物が多いんじゃダンジョンの外に魔物が溢れるのも当たり前か。

「そんなダンジョンの様子と比較したら、此処は平和ですね。王都ほどの賑わいはありませんが、穏やかで落ち着いた雰囲気に満ちています」

 おそらく、ダンジョンがそういう状態になっていることが上手い具合に国の防御壁になっているのだろう。

 魔物はどういうわけか魔族の国には侵攻してこないようだから、魔族たちもこの状況を利用しているんじゃないかって思う。

「これは私が此処に滞在している間に感じたことですが、魔族は我々人間が国に入ってきても気にしている素振りがないように思えました。これは、彼らには人間と争うつもりがないことの何よりの証明なのではないでしょうか」

 確かに、今こうして僕たちが店の中にいても何も言ってこないしな。

 今まで出会った魔族は全員僕の命を狙ってきてたから、そういう経験をしてきた身としては何だか拍子抜けするけど。

「人間と魔族の共存──現実味のある話だと、私は思います」

 人間と魔族が争わずに暮らしていけるなら、それが1番いいって僕は思う。

 ただ、その考えを王族が持ってくれるかどうかだ。

 国政は王族の意思に左右されるところが大きい。僕たち庶民がいくら声高に叫んでも、肝心の王族が首を縦に振らないんじゃ意味がない。

 調査隊が全員無事だったならまだ説得はできたかもしれないが……難しいだろうな。

「私は王都に戻り次第、このことを報告しようと思っています。無用な戦争は避けるべきだと、何としても国に訴えなければなりません」

 歯痒いけど、今回のことはフェルディユさん頼みになりそうだ。

 頑張って王様たちを説得して下さい。

「お待たせしました」

 注文した品が運ばれてきた。

 フェルディユさんが注文したフルーツの盛り合わせは、フルーツの他に透明の四角い物体が入った変わった見た目をしていた。

 この四角いのがスライムなのだろう。スライムを食べるって想像が付かないけど、こうして料理になるくらいだから美味いんだろう、きっと。

 僕が注文した紅茶は、至って普通の紅茶だった。茶葉の香りが良い具合に立っている。

 とりあえず、考え事は此処までだ。休憩タイムにしよう。

「頂きましょうか」

 僕はカップを手に取って、ゆっくりと紅茶を口に運んだ。

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