第283話 魔族の望むがままに
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魔王の居城というからてっきり悪趣味な装飾が施されている不気味な城を想像していたのだが、そんな僕の想像はあっさりと裏切られた。
白を基調とした内装に施された装飾は、王都の城と比較しても遜色がない美しさを誇っている。
天井から吊り下がったシャンデリアなんて、まるで宝石のようだ。
「保護した人間は、客室にいるよ」
ジェラルディンは大きな廊下の中央をすたすたと歩いていった。
これだけの広さがある城の中で置いていかれたら迷子になりそうだ。
そうなっては敵わないと、僕は早足で彼の後を付いていった。
彼が言う客室は、外から見て塔のようになっている場所にあった。
緩やかに弧を描いている螺旋階段を登った先にある、木の扉。
ジェラルディンが控え目に扉をノックすると、中から聞き覚えのある女性の声が返事をした。
がちゃ、と扉が開かれる。
内装は客室らしい、一通りの家具が揃った綺麗な見た目の部屋だった。
カーテンが開かれた窓から、外の景色が見えている。
それを見ていたのだろう、白い法衣を纏った女性がこちらに振り向いてきた。
僕の、予想通りの顔だった。
「フェルディユさん!」
僕は彼女の名を呼んで部屋に入った。
彼女は、此処に僕がいることに驚いたようだった。口元に手を当てて、大きな目を更に大きく見開いて僕のことを見つめてきた。
「まさか……イオさんですか?」
「良かった……無事だったんですね。調査隊が全滅したと聞いたので、僕はてっきり」
フェルディユさんの法衣には、土汚れの他に血の跡と思わしき黒ずんだ汚れが付いていた。
血は他の調査隊の人間のものなのだろうが、これを見るとダンジョン調査が如何に過酷な仕事だったのかが分かる。
「イオさんは、何故此処に?」
「僕が招待したんだよ」
フェルディユさんの問いに、ジェラルディンが答えた。
彼は城内全体を仰ぐような仕草をして、にこにこと笑いながら言った。
「僕たちのことを詳しく知ってもらいたくてね。わざわざ招待したんだ。君を此処に招いた理由と同じさ」
僕とフェルディユさん、2人の顔を交互に見て、続ける。
「さあ、せっかく2人揃ったんだから、国内見物でもしてきなよ。僕たちが普段どんな暮らしをしているか、是非ともその目で見てほしいな」
僕たちを会わせたらすぐに自分の望む通りの動きをさせるのか。
良くも悪くもジェラルディンはマイペースだ。こちらの都合を全然考えていない。
しかし、此処で僕たちができることといえば彼が言う通りに魔族の暮らしを見て回ることしかないのも事実だ。
ジェラルディンの思い通りに動かされているというのは癪だが、僕たちが彼の言う通りに動いている間は彼も余計なちょっかいはかけてこないはず。
元々そのつもりで此処に来たわけだし、ここは彼の言う通りに城外へ散策に繰り出すとしよう。
「フェルディユさん、行きましょう。積もる話は歩きながらしましょうか」
僕が提案すると、彼女は頷いて僕の傍にぴたりと寄り添ってきた。
魔族の国……さあ、何を見せてくれることやら。




