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第280話 配達人は笑う

62個目の評価を頂きました。ありがとうございます!

 調査隊の青年は冒険者たちの手によって街の宿に搬送された。

 冒険者ギルドに戻ったノーグさんは、神妙な顔をしながら棚から羊皮紙を1枚取り出した。

「ダンジョン探索の仕事クエストを出す」

「え?」

 ダンジョン探索は冒険者次第みたいなことを言ってたのに、此処に来て仕事クエスト

「ダンジョンの中には、全滅した調査隊の遺体が丸々残ってるってことだろ」

 調査隊はダンジョンの中で全滅したのだろうから、確かにそういうことになるが……

 受注書を作りながら、ノーグさんは言った。

「遺体を残しておくわけにもいかんだろ。遺体がないと調査隊はただの行方不明ってことにされるからな。あの兄ちゃんが言ってたように王都に全滅したってことを伝えたいのなら、物的証拠がないと駄目だ」

 それは一理ある、のかもしれないが。

 凶悪な魔物が徘徊するダンジョンの中で全滅したのだ。遺体は既に魔物の腹の中という可能性がある。

 そんな中に冒険者を送り込むなんて、ミイラ取りがミイラになるかもしれないというのに。

「この仕事クエストは大人数パーティでの受注を推奨とする。もちろん熟練者でないと駄目だ。久々に難易度の高い仕事クエストになるな」

「その必要はないよ」

 ギルドに静かに入ってきた人物の冷静な声が、ノーグさんを制した。

 丸く切り揃えた黒髪に角飾りのような髪飾りを着け、金糸で刺繍を施した黒い法衣ローブを纏った魔道士風の出で立ち。

 竜の骨を象った杖が、物々しい雰囲気を漂わせている。

 彼は──

「ジェラルディン……」

「イオ君だっけ。また会ったね」

 ジェラルディンは口角を上げた顔で僕を見て、左手でこめかみの辺りの髪を掻き上げた。

「知り合いか? イオ」

 ノーグさんは怪訝そうにこちらを見た。

 僕はジェラルディンを見据えたまま、答えた。

「魔族の……王です」

「……まっ!?」

 頓狂な声を上げてジェラルディンに目を向けるノーグさん。

 ジェラルディンは肩を竦めた。

「今日の僕はしがない配達員さ。君たちがわざわざ人をダンジョンに送り込まなくても済むように、届け物を持って来てあげたよ」

 杖の先端で、足下をとんと突く。

 すると、床の一部が光って──見覚えのある服装の男女の集団が、折り重なった形で目の前に現れた。

 皆全身に深い傷を負い、血に塗れている。

「この人間たちが何をしに来たのかは分からないけど、御愁傷様だったね。見つけるのが後少し遅かったら魔物の餌になってたところだったから、その辺は感謝してもらえると嬉しいかな」

「貴方がダンジョンに魔物を放つからこんなことになったんでしょう……!」

 僕の言葉に、首をゆるりと左右に振りながら、ジェラルディンは言った。

「僕が魔物をダンジョンに放ってるわけじゃないよ。国とダンジョンとの境界にある歪みが異界と繋がっているせいで、魔物が勝手にこちら側に溢れてきているんだよ。僕はそれでも別に困らないから放置してるだけ」

 それはもうジェラルディンが元凶だと言っても過言ではないのではなかろうか。

「ああ、そうそう」

 僕の胸中など知る由もなく、ジェラルディンは遺体の山に注目した。

「生きている人間もいてね。ダンジョンを徘徊されても困るから、僕の国で預かってるんだけど」

「!」

 僕は遺体の山に注目した。

 意識をジェラルディンに向けていたせいで、肝心なことに気付いていなかった。

 この遺体の中に──ないのだ。僕の知っている顔が。

 ひょっとして、ジェラルディンが預かっている人間というのは──

「どうせだから、人間に僕たちのことを知ってもらうのも悪くないと思ってね。僕が選んだ人間を、僕の国に招待することにしたんだ」

 ジェラルディンは僕に視線を移して、微笑んだ。

「イオ君。君、僕の招待を受けるつもりはない?」

「……え?」

 唐突な申し出に、僕は目を丸くした。

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