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第277話 這い寄る変化と危険

55個目の評価と感想を頂きました。ありがとうございます。

少し更新を休んでいる間に評価が増えていて、驚いています。

これからも当作品を宜しくお願い致します。

「それじゃあ、僕はタロイに帰ります。お世話になりました」

 翌日。ジャド君と共に冒険者ギルドに訪れた僕は、ヘンゼルさんたちにぺこりと頭を下げた。

 言い出したのが唐突だったせいかヘンゼルさんとジャド君は驚いていたけど、あまり長いこと職場を留守にしていられないという僕の事情を察してくれたのか、引き止めることはしなかった。

 僕の肩をぽんと叩いて、温かい笑顔で見送ってくれた。

「またいつでも帰っていらっしゃい。待ってるわよ」

 事前に護衛を依頼しておいた冒険者と共に手配した馬車に乗って、ラニーニャの街を後にする。

 やっぱり僕の故郷はラニーニャなんだな、と振り返りながらそう思った。


 タロイの街に入った僕は、まっすぐ冒険者ギルドに向かった。

 馬車を降り、護衛してくれた冒険者に依頼料を渡して別れ、ギルドの中へ。

 ギルドの中は相変わらずといった様子で、ノーグさんとジンさんがあちこち動き回りながら仕事をしていた。

「ただいま戻りました」

 僕がそう声を掛けると、2人はぱっと表情を明るくして迎えてくれた。

「おっ、帰ってきたか! 休暇はもういいのか?」

「はい。この度は御迷惑をお掛けしました。もう大丈夫です」

「その様子ですと、無事に魔法が使えるようになったようですね」

 僕の全身を撫でるように見つめて、ジンさんが微笑む。

「厄介な呪いとかでなくて何よりでした」

「だな。これで魔法が使えないまんまだったら冒険者ギルドとしても商売にならないからな」

 物騒なことを言わないでほしいよ、ノーグさん。

 魔法が使えないままだったら……なんて、冗談でも考えたくはない。

「それじゃ、明日から仕事の方宜しくな」

「はい」

 僕は頷いて、何気なくクエストボードの方を見た。

 見ない間に、随分と仕事クエストの受注書が増えたような気がする。

 これは、あれか? 魔族の国がダンジョンにできた影響か?

 何となく気になり、尋ねてみることにした。

「随分仕事クエストの数が増えましたね」

「ん? ああ、仕事クエストな。実はなぁ……」

 ノーグさんは事情を説明してくれた。

 曰く。最近になってタロイのダンジョンから魔物が溢れるようになったらしく、その討伐に関連した依頼クエストが一気に増えたのだそう。

 それも、大型で凶悪な個体ばかりで、初心者の冒険者には依頼できない仕事クエストばかりなのだとか。

 ……やっぱり、魔族の国ができたせいで地上にまで影響が出ちゃってるみたいだな。

 この分だと、ダンジョンの中は相当に危険な場所になっていそうだ。

 王都の調査隊がどの程度の実力を持った人たちの集まりなのかは分からないが、この分だと彼らが何事もなく調査を終えられるとは考えづらい。

 冒険者に協力要請が行くのも時間の問題って感じがする。

 そうなったら、冒険者ギルドは更に忙しくなるな。

「そんな状況だからダンジョンの探索に行く冒険者の数が減ってきていてな。物流にも影響が出始めてるんだ。全く、何が起きてるんだかな」

 ふぅ、と溜め息をつくノーグさん。

 そうか、ダンジョンに行く冒険者が減ったってことは、その分ダンジョン産の素材や宝物の買取が減ったってことなのか。

 どうやら、僕が考えていた以上に魔族の国が誕生した影響は大きいようだ。

「これから先、どんなことが起きるか分からん。冒険者たちが持って来てくれる情報には十分に注意していてくれ」

 ……これは、王都が既に動いてることは説明しておくべきだよな。

「実はですね」

 僕は、僕が王都で経験したことを話して聞かせた。

 話を聞き終えたノーグさんが、ふむ、と顎に手を当てる。

「王都が遂に重い腰を上げたのか。確かにそれだけのことがあっちゃ、連中も動かざるを得ないよな」

「魔族が国を作った、ですか……それはまた、何とも規模の大きな話ですね」

 神妙な顔をして呟くジンさん。

「ダンジョンの調査に関しては王都に任せることになりそうですが、我々もただ待っているわけにはいかないでしょう。魔物討伐の仕事クエストを発行して、少しでも彼らの助力ができるように動かなければなりませんね」

 そうだな、とノーグさんは頷いた。

「王都の頭の固い連中と違って自由に動けるのが冒険者の強みだ。こういう時にこそ冒険者は強いってことを王都に見せてやらなけりゃな」

 ノーグさんの王都の評価が低いのは、王都が周辺の街に対して閉鎖的な態度でいるせいだろう。

 王都は自分たちに直接影響が出るようなことが起きない限り自分から動くことがないからなぁ。

 無論、王都の人間全てが外部に対して閉鎖的ではないということは分かっているつもりだ。

 助け合えるなら、できる限り助け合っていきたいとは、思っている。

 それがどんなに小さなことでもね。

「さ、イオはもう帰れ。ゆっくり休んで、旅の疲れをしっかり取るんだぞ」

 そうだね。此処にいても今僕ができることはないし、帰るとするか。

 帰りに酒場に寄って、夕飯食べていこう。

 僕は2人に挨拶をして、夕暮れの光が眩しい大通りに出た。

 明日からまたお勤めだ。今まで休んでた分、しっかりと働くぞ。

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