第274話 タルタルステーキ
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王都にあるものは全てが目新しかった。
職人ギルド。教会。どれも僕が住んでいる街にもあるものなのに、本当に同じものか?と思ってしまうほど装いが違っているのだ。
職人ギルドは店と見間違うような造りをしていて一般人の客で賑わっているし、教会は絵が描かれたステンドグラスの窓が大量にあって見た目が賑やかだし。
来訪者の相手をしている神官をちらっと見たけど、表情が柔和で気さくそうな雰囲気の人だった。
うちの街の神官はあそこまでフレンドリーじゃないよ。何かお堅い感じがするっていうか、如何にも役場の人間って感じがして近寄り難いっていうか。
どうやら王都は、色々と特別なものが集まって成り立っている都市らしい。
日が暮れて、街灯に魔法の明かりが灯り始めた頃。
都市を歩き回ってすっかりくたびれた僕は、大通り沿いにある飲食店で身体を休めることにした。
この店は肉料理が自慢だって看板にも書いてあったから、名物の生肉料理も置いてあると思うのだ。
水を飲みながら、メニューを開く。
ステーキやハンバーグなどの定番の肉料理がずらりと並ぶ中、当店自慢の一品と書かれた料理が目立つ大文字で載っていた。
タルタルステーキ。
生の肉を薬味と卵と混ぜ合わせて味わうステーキ料理の一種、らしい。
肉は定番の牛肉の他に、魔物肉のラインナップとしてビッグブラウンブルとブラックホース、ワイバーンが選べるようだ。
ワイバーンの肉って生でも食べられるんだね。元が脂身の少ない赤味肉だから、あっさりした味わいなのかな?
ワイバーンだけ少し高めの12ガロンで、他は全て9ガロンで注文できるらしい。
どれを頼むか悩むところだが、初めて味わう生肉料理なので此処はオーソドックスにいこう。
牛肉だ。
僕は店員さんを呼んで料理を注文した。
因みにスノウは普通のハンバーグがいいと言ったので、デミグラスソースのハンバーグにした。
料理が来るまでの間、椅子にゆったりと腰掛けて昼間の出来事を思い返す。
今日は本当に色々あったなぁ。
図書館の本探しから始まって、王様と謁見して、かと思うと牢屋に入れられて。
フェルディユさんは王様と話をするからって城の方に帰っていったけど、ちゃんと話聞いてもらえたのかな。
ジェラルディンはタロイのダンジョンに国を作ったって言ってたけど、その影響はどのくらい外の世界に出るんだろう。
また調査のためにダンジョンに……なんてことにならなきゃいいけど。
「お待たせしました」
料理が運ばれてきた。
タルタルステーキは、見た目は卵黄が乗ったハンバーグみたいだった。
一緒に乗ってるのは……玉葱と、ガーリックと、ケッパーだ。
どれ、早速頂こう。
卵黄を潰して薬味と肉が均一になるように混ぜ合わせて、一口。
これは……オリーブオイルと塩胡椒で味付けしてあるんだな。ガーリックの風味と混ざり合ってちょっぴりピリッとするけど、美味い。
食感はもっちりとしている。普通のステーキやハンバーグとは違った感覚だ。
肉って生で食べても美味しいんだなぁ。
人によって好みが分かれそうな料理だけど、僕はこれ好きだ。
生肉は食品店で普通に買えるし、家でも作ろうと思ったら作れるのかな?
肉を細かく切るくらいなら僕にもできるし。
今度試してみよう。
「イオの食べてるハンバーグ、スノウのと色が違うね」
料理を食べていると、興味を持ったらしいスノウが指を指しながら尋ねてきた。
「これはタルタルステーキっていうんだよ。食べてみる?」
「うん。食べるー」
卵黄をよく絡めた肉を一口サイズに取り分けて、スノウにあげた。
「……辛い」
肉を口に含んだスノウは顔を顰めた。
どうやら薬味の辛味がきつくて御気に召さなかったようだ。
スノウに食べさせる時は、苦味や辛味に気を付けないと駄目だね。
そんな感じでステーキを腹一杯堪能した僕は、壁に掛かっている時計に目を向けた。
食事が済んだら宿探しをしないとな。
帰りもまた野宿になるんだろうから、今日こそは身体を洗っておきたい。流石に1週間も風呂に入らずに過ごすなんてのは御免だからね。




