第270話 ジェラルディンの訴え
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同じ作品を見ていても、人によってその感じ方は千差万別だと思います。もしも当作品を見ていて不快に思うようなことがありましたら、そっとブラウザを閉じて当作品のことは忘れて下さい。それが互いのためになると思います。
城がある場所は小高い丘になっていて、その城を囲むように造られている運河は建物に遮られることなく陽の光を浴びてきらきらと輝いていた。
小高い丘になっているということは、王都の様子を一望できるということで。
白い建物が地面の向こう側まで連なっている様は見事の一言に尽きた。
まるで細やかな彫刻を目にしているようだ。
来てみて良かったよ。
城がある方に振り返る。
城は敷地の入口のところに衛兵が立っているので近付けそうにはないが、此処からでも十分に見えるくらいに建物が大きい。
立派な城だなぁ。
目的も果たしたし冒険者ギルドに行くかと思って城から反らしかけた僕の目線が、ある一点で止まる。
敷地の入口のところに立っている衛兵と、見覚えのある背中が問答を繰り広げていた。
あれって……ジェラルディン君?
王様に会いに行くって言ってたのに、あんな場所で衛兵に止められているなんて何かあったのだろうか。
やっぱり、一介の冒険者が王様に会うのは無理難題すぎるとか?
興味が湧いた僕は、彼らがいる場所に近付いていった。
「何度言ったら分かるのかな」
耳の辺りを掻きながら、ジェラルディン君は目の前の衛兵に言った。
「僕は子供じゃない。こう見えて君たちよりは年上だよ」
「何度言えば分かるかな。子供1人での謁見は許していないんだ。保護者がいれば話は別なんだが」
衛兵の方も引いていない。微妙に困った顔をしながらジェラルディン君に言い聞かせている。
これは平行線だな。
「あの……」
僕はジェラルディン君の背後から近付いて、声を掛けた。
「どうかしたんですか? ジェラルディン君」
「ああ、君か」
ジェラルディン君は僕に目を向けて、すぐに前に向き直った。
「僕は子供じゃないって説明してるのに分かってもらえないんだよ」
子供じゃないって……どう見ても僕の半分くらいしか歳取ってないように見えるけどなぁ。
と、僕が内心そんなことを考えていると、そのニュアンスが伝わったのか、ジェラルディン君は溜め息をついた。
「……もういいや。何度言っても無駄みたいだから」
唐突に僕の腕を掴んでぐいっと引っ張って、僕を彼の隣に並べて立たせた。
「君、悪いけど付き添ってもらえないかな。時間は取らせないからさ」
「え?」
付き添いって、王様の謁見に?
僕が呆気に取られている横で、ジェラルディン君は淡々と話を進めた。
「これならいいでしょ。この人、一応僕の知ってる人だから」
「それを証明するものは何かあるのか?」
「僕はこの人の護衛をしてたんだ。それはこの人も証明してくれる。だよね?」
話を振られて、僕は未だにぽかんとしながらも頷いた。
「え、ええ……確かに貴方は僕の護衛でしたけど」
「そういうことだからさ。謁見を許可してよ。何も問題を起こそうってわけじゃないんだから」
衛兵たちは互いに顔を見合わせて、それなら……といった様子で身を引いた。
城に続く道が、僕たちの前に開かれる。
「そこまで言うなら通行を許可するが……くれぐれも問題は起こさないようにするんだぞ。何かやったら牢獄行きにするからな」
「分かった。ありがとう」
ジェラルディン君は僕の腕を掴んだまま城に向かって歩き始めた。
僕は引っ張られる形でその後に続いた。
因みにスノウはこの状況を理解していないようで、小首を傾げながら僕とジェラルディン君を交互に見つめている。
「あの、ちゃんと歩きますから、引っ張らなくても」
「ああ、そう?」
ぱっ、と僕から手を離すジェラルディン君。
僕は数歩よろけて一旦立ち止まり、すぐにジェラルディン君の後を追って歩みを再開した。
「悪かったね。無理矢理付き合わせて」
前を向いたまま、彼は僕に謝ってきた。
「僕はどうしても王様に会わなきゃいけないんだよ」
「僕のことはいいですけど……そこまでして王様に会わなければならない理由って何なんですか?」
僕が問うと、彼はふふっと笑いを零した。
「世の安寧のため……かな」
「?」
意味が分からない。
僕の沈黙の意味を分かっているのかいないのか、ジェラルディン君は大して間を置かずに続けた。
「すぐに分かるよ」
緊張に身を引き締める僕の前に、城の巨大な扉が迫りつつある。
入口の両脇にも兵士がいて、彼らは僕たちが扉の前に立つと、ゆっくりとそれを左右に開いてくれた。
──経緯が何であれ、僕はジェラルディン君と共に王様に謁見することになってしまった。
粗相がないようにしないと。一般人が王族に会うなんてこと、滅多にないからね。




