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第265話 夜の過ごし方

35個目の評価を頂きました。加えて感想とふたつ目のレビューも頂きました。ありがとうございます!

よく御指摘を頂くのが、主人公が魔物のいる場所に行くのに対して周囲の人間の態度があっさりしすぎているのがおかしい、ということなのですが……周囲の面々は「主人公には同行する冒険者やスノウがいるから多少の危険くらい何とかするだろう」という認識があるので主人公を軽く送り出しています。彼らは元冒険者でもあるので荒事には慣れてしまっているので、こういう形になるのも不思議ではないだろうという高柳の認識からこういう書き方をしています。

高柳としてはそういうことがあっても不思議じゃないのではないかと思っていたのですが、どうやらそれは世間一般とは大分ずれた考え方だったようです。

既に書いてしまったものに関しては修正できませんが、今後こういう話を書く時はこのことに注意して書いていこうと思います。

 馬車の旅は順調に進んだ。

 道中出てきた魔物は、全てジェラルディン君の『交渉』で戦闘にならずに追い払われた。

 スノウは魔物と戦えなくて不満そうだったが、僕としては平穏に事が済んでいるからこれ以上にないくらいに有難かった。

 御者もこんなに平和な旅は初めてだって喜んでたよ。

 そんなこんなで、馬車は通過点であるノエロニの街に到着。

 馬車が街に入った時には、時刻は既に夕方になっていた。

 普通の観光旅行なら日暮れに差し掛かっている状況で馬車を走らせたりはしないのだが、流石にそうしていると何日かかっても目的地に到着しないので、少し休憩を挟んで馬車は一路北に向かって出発した。

 次の街まではどんなに急いでも半日ほどかかるらしい。

 今日は野宿確定だね。

 一面茜色に染まった空を見上げながら、僕は生まれて初めて野宿をするという現実に緊張していた。

 夜になったら魔物は活発に動くようになるっていうし……そんな中で暢気に寝ていられないだろうから、夜の見張りはすることになるんだろうな。

 僕、魔法が使えないから魔物が出てきても撃退できないし、いざという時はジェラルディン君を叩き起こすことになるんだろうけど。

 ジェラルディン君は、夜営についてどう考えているんだろう?

「夜になったらだけど」

 僕の考えが通じたかのように、ジェラルディン君が口を開いた。

「夜営はしなくていいよ」

「え?」

 夜の見張りをしなくてもいい?

 それは有難いけど、それって危険なんじゃないか?

「でも、魔物が出たら……」

「大丈夫。危険がないように馬車に結界を張るから。天変地異でも起きない限り、安全だよ」

 結界……って、魔法ってそんなこともできたんだな。

 まだまだ魔法については分からないことが多いな、と思った僕だった。

「夜はゆっくり寝たいからね」

 そんな理由なんだ。

 危険がない方法を取ってくれるのは有難いけど、何だかなぁ。

「結界を張るのに少し時間がかかるから、その間の見張りだけ宜しくね」

 それで夜の安全が確保できるなら喜んでやらせてもらうよ。

 ジェラルディン君がどうやって結界を張るのかは分からないけど、短時間の見張りくらいなら僕にだってできる。

 大事なお勤めだと思って、頑張ろう。


 日が暮れて。進む道を見通すのも辛くなった頃、馬車は進むのをやめた。

 月が時折雲に隠れて辺りが明るくなったり暗くなったりしている。

 今日はこれ以上は進めないという御者の言葉に従って、僕たちは馬車を降りた。

 近場に木が何本もあり、野宿するには程好い環境だ。

 落ちている木の枝を集めて薪にし、焚き火を起こす。

 食事にするかと各々が荷物から食糧を取り出したところで、ジェラルディン君は杖を片手に焚き火の傍から離れ始めた。

「それじゃ、結界を張るね」

 杖の先端を地面に当てて、かりかりと何かを書いていく。

 絵のようにも字のようにも見えるが、彼のいる場所までは焚き火の明かりが届かないので何を書いているのかまでは分からない。

 ジェラルディン君はゆっくりと馬車の周囲を歩き、書き物を完成させた。

 最後にとんと杖で地面を突いて、これで良しと呟く。

「結界ができたよ。これで害悪なものは馬車には近寄れない」

 寝る時は馬車に乗ればいいよ、と言って、焚き火の傍に腰を下ろした。

 見た目は何も変わったようには見えないが、彼が言うのだから、馬車は特別な魔法の力で守られているのだろう。

 野宿で何が大変かっていったら、夜の安全の確保だ。それが約束されたというのは素直に嬉しい。

 馬車で寝るのは少し大変だが、それくらいは目を瞑ろう。

 こうして、人生初の野宿生活は、穏やかに過ぎていったのだった。

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