第263話 馬車は街道を行く
25個目の評価を頂きました。ありがとうございます!
最近たくさんの評価や感想を頂くようになりました。それだけ多くの方に当作品を読んで頂けているのだと思うと、もっと良い話を書けるように頑張らなければなという気になります。
これからも当作品を宜しくお願い致します。
出立当日。僕がスノウと共に冒険者ギルドに赴くと、既にそこにはジェラルディン君の姿があった。
「おはようございます。本日から宜しくお願い致します」
「固くなる必要はないよ。気楽にいこう」
僕が挨拶すると、ジェラルディン君は手にした杖で足下をとんと軽く突いた。
あの杖、昨日は持ってなかったけど随分と物々しい形の得物だな。
まるで竜の骨を象ったような形状のフォルムは、武器というよりも祭器を彷彿とさせる。
髪飾りの形もそうだけど、骨をモチーフにした装飾品が好きなのかな。
通りに目を向けて、ジェラルディン君は言った。
「馬車が来たね」
これから3日間世話になる馬車は、普段街中で見かける馬車よりも一回りほど大きく、後方に物資と思わしき木箱を括り付けていた。
そうか、馬車の御者も一緒に野宿するんだもんね。食糧を積んでいても不思議じゃないか。
「お世話になります」
「王都までだよな。任せときな」
御者に一声掛けて、僕たちは馬車に乗り込んだ。
乗客は僕たちの他にはいない。席にはゆったりと座ることができた。
前の席に僕とスノウが、後ろの席にジェラルディン君が、向かい合わせの形で腰を下ろした。
馬車が走り出す。街を出るまでは石畳の道が続くので、がたがたと席が揺れてほんの少しだけ尻が痛かった。
街を出てからは、平坦な道が続いた。
王都は、ラニーニャから見て北にある。道沿いに進むと幾つか街を経由することになるので、立ち寄った街で少しずつ休憩を挟みながら移動するのだそうだ。
夜に街に着けたら野宿しないで済むんだけどなぁ。
「君、王都に何しに行くの? 見た感じ冒険者でも行商人でもなさそうだけど」
正面に座っている僕たちを見つめていたジェラルディン君が、そう話を切り出した。
彼からしたら、雇い主のことは気になるのだろう。
「旅行?」
「王立図書館に調べ物に……」
「へぇ」
ジェラルディン君の蒼い瞳が、僕の顔に注目する。
何かを探るように視線を向けて、しばし。
「わざわざそこに行かなきゃ調べられないことって、何?」
「……実は」
彼には関係ないことではあるが、黙っていても話が進まないので、僕は自分が今魔法を使えない状態になっていることを正直に打ち明けた。
僕の言葉を聞いたジェラルディン君が、ふうんと鼻を鳴らした。
「それは運が悪かったね」
髪飾りを着けている辺りを指先でかりかりと掻いて、続ける。
「たまにあるんだよね、空間の歪みの影響が出ることが。成程、君はそれを受けちゃったわけか」
空間の歪み?
「ま、大したことじゃないし、その図書館とやらで治療法を探せばすぐに見つかるよ」
軽く言ってくれるけど、僕的には結構大事なんだよ。
存在しているかもしれない治療法だって、簡単なことじゃないかもしれないし……
って、此処でぶつくさ言っていても仕方がないんだ。治療法が何であれ、僕はそれを見つけて魔法の力を取り戻さないといけないんだから。
「貴方が王都に行かれる理由は?」
気を取り直して、僕の方からも質問してみることにした。
ジェラルディン君は大したことじゃないよ、と言って笑った。
「王様にね。ちょっと用事があるんだよ」
王様に謁見?
それはまた、随分と込み入った事情がありそうな話だ。
一介の冒険者が王様に会いに行くなんて、滅多にないことだぞ。
「悪い話じゃないよ。あくまで僕個人の感覚だけどね」
「話中悪いが、ちょっといいかい」
ジェラルディン君の言葉を遮って、御者が声を上げた。
「魔物が出た。何とかしてくれ」
そういえば、いつの間にか馬車が停車している。
ジェラルディン君と僕は顔を見合わせて、馬車から降りた。
スノウが「魔物ー?」と言いながら席から下りるのを視界の端に捉えながら、魔物の姿を探す。
馬車の行く手。それを遮るように、それらはこちらの様子を伺いながら唸り声を発していた。




