第262話 旅支度
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昼になって。僕が出した護衛依頼を受けたいという人が現れた。
「僕も王都には用事があるんだ。ついでに受けるにはいいと思ってね」
その人は、一見すると12歳ほどの少年だった。
丸く切り揃えた黒髪に角飾りのような髪飾りを着け、金糸で刺繍を施した黒い法衣を纏った魔道士風の旅人だ。冒険者なのだろうが、これだけ若くて1人で行動している冒険者というのは珍しい。
その依頼を出したのは僕だと彼に言うと、少年は指輪を幾つも填めた右手を差し出して握手を求めてきた。
「僕はジェラルディン。僕が一緒にいる間は魔物には手出しさせないから、安心して」
「僕はイオ・ラトンといいます。王都までの護衛、宜しくお願いします」
今回の護衛の依頼料として僕が用意したのは700ガロンだ。
これは目的地が王都ということもあって距離が結構あるので、それを考慮しての金額となっている。
一般人が出すには少々高めの金額だが、命が懸かっているのでこれは仕方ないと思うしかない。
それに、準備するのは資金だけではない。今回の旅は馬車でも3日かかる移動になるから、道中で食べる食事なども必要になってくる。
諸々の準備を整えるのに、どんなに急いでも1日はかかるだろう。
その旨をジェラルディン君に伝えると、彼は自分の方も物資の準備にそれくらいの時間がかかるからと快く聞き入れてくれた。
僕とジェラルディン君は明日の朝に冒険者ギルド前で待ち合わせすることを約束して、一旦別れた。
それからは、僕は旅立ちの準備に勤しんだ。
まずは食糧の準備ということで、調理ギルドに行って携帯食と飲み水をスノウの分も含めて3日分購入した。
王都に行くなんて大冒険だなってユージーンさんは笑っていたよ。
次に向かったのは錬金術ギルド。一応の備えとしてポーションを準備するためだ。
こちらはスモールポーションを2本、購入した。
今、僕は圧縮魔法を使えない。あまり大量の荷物になると持って行くのが大変になるからね。
着ていく服は、ラニーニャに来る際に念のためにと持って来ておいた旅装束がある。それで良いだろう。
よし、旅の準備は整った。後は明日が来るのを待つだけだ。
「護衛してくれる人、見つかったんですね」
鑑定をする手を止めて、ジャド君は良かったと口にした。
「せっかくですから観光もしてくるといいですよ。遠出する機会なんて、滅多にないでしょうから」
ジャド君が言うには、王都には王立図書館の他にも王族が住む城や神殿など、観光スポットになっている場所が幾つもあるのだそう。
中でも、城を囲むように作られている運河から見られる景色は一見の価値があるらしい。
観光か……図書館で調べ物を終えて時間があったら、少し歩き回ってみるのも良いかもしれない。
「沈黙の治療方法、見つかると良いですね」
「そうですね」
ジャド君の言葉に僕は頷いた。
わざわざ遠出をしてまで解決手段を探しに行くのだから、何かしら分かってほしいと思う。
今回の旅には僕の鑑定士生命が懸かっているのだ。手ぶらでは帰れない。
どんなに調べる本があろうが意地でも解決手段を見つけてやる、と胸中で決意する僕なのだった。




