第25話 特別ボーナス
「ただいま戻りました」
「お帰りなさいイオちゃん」
帰還した僕たちを引き締まった面持ちで出迎えてくれたヘンゼルさんは、挨拶もそこそこに僕たちが持ち帰ったラージトードに注目した。
「それが……問題の子なのね」
すぐに解体作業に入れるように、準備を整えて待っていてくれたのだという。
流石ヘンゼルさんだ。仕事が早い。
呼ばれて作業場から出てきたシークさんたちにラージトードを預け、僕はアシュレイさんと共に冒険者ギルドに入った。
「森はどんな様子だったの?」
ヘンゼルさんが定位置に戻りながら尋ねてくる。
僕はアシュレイさんと顔を見合わせて、答えた。
「蛙だらけでした」
「繁殖期なのかしら……嫌ね、困っちゃうわ」
はあ、と溜め息をつくヘンゼルさん。
「駆除依頼、出しておこうかしら」
「それが良いだろうな」
アシュレイさんは頷いた。
「今回のようなことがまた起きないとも限らないからな」
「分かったわ。後で依頼の方に出しておくわね」
ヘンゼルさんはメモ用紙に何やら走り書きをしてそれをカウンターに貼り付けた。
改めて僕たちの顔を見て、言う。
「本当にお疲れ様。特にイオちゃん、無茶なお願いを聞いてくれてありがとう」
「私からも礼を言わせてくれ。貴君のお陰で無駄な戦いをせずに済んだ。ありがとう」
2人から頭を下げられて、僕は慌てて手を振った。
「いえ、そんな」
僕はアシュレイさんの後ろで震えていただけなんですけどね。
持って行った剣も完全に飾りになってたし。
「約束通り特別ボーナス出すから。楽しみにしててね」
ヘンゼルさんににこり、と微笑みかけられて、僕はつられて笑いながらこめかみの辺りを指先で掻いた。
こんなことでボーナス貰っちゃっていいのかな。
……いいってことにしとこう。此処で変に断ると話がこじれそうだし。
ボーナスか。思いがけない臨時収入が入ったな。
今日の夕飯はちょっと奮発しちゃおうかな。
「マスター、解体終わったけど、ちょっといい?」
カウンター奥の扉が開いて、生肉の臭いを纏わせたシークさんが顔を覗かせた。
僕たちの視線が一気に彼へと集中する。
「食べられた娘さんは無事なの?」
ヘンゼルさんの問いかけに、シークさんの顔が困惑の色に染まる。
……食べられた時点で十分無事じゃないと思うよ。ヘンゼルさん。
シークさんは後方にちらりと振り返り、アシュレイさんの顔を見て、話を続けた。
「そこの冒険者さんも、一緒に来てもらえる? 胃の中身、取り出したからさ」
「ああ」
「イオは……来ても来なくてもどっちでもいいや」
「何それ、僕だって無関係じゃないってのに」
「お前、グロいの平気だったっけ? まあいいや」
言うだけ言って、シークさんは扉の向こうに引っ込んだ。
「2人共、カウンターからこっちに回ってきてちょうだい」
ヘンゼルさんはそう言い残し、シークさんを追って扉の中に入っていった。
此処は職員用の通用口で普通は冒険者の通り抜けは禁止しているのだが、ヘンゼルさんが許可を出してるからアシュレイさんを通しても問題はないのだろう。
「こちらにどうぞ」
僕はカウンターの裏側に回り、アシュレイさんを招いて扉を大きく開いた。




