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第22話 冒険者兼業の鑑定士

 依頼人の貴族には、成人間近の娘がいた。

 その娘が、餌を求めて人里に現れたラージトードの餌食になってしまったという。

 ラージトードは森へと逃げてしまい、一般人の足では探すのは困難になってしまった。

 そこで貴族が思い立ったのは、腕の立つ冒険者に討伐を依頼することだったらしい。

 男の話を聞き終えて、ヘンゼルさんはふうむと腕を組んだ。

「成程ねぇ……それで人喰い蛙を探してるってわけね」

「娘を襲った蛙がどれなのか見分けが付くのなら簡単な仕事なのだが、厄介なことに森は蛙の巣になっていてな」

 男は今もなおシークさんたちの手によって解体されているラージトードを見つめ、溜め息混じりに言った。

「殲滅するにしても時間がかかる。あまり悠長にしていると、食われた娘が助からない可能性が高くなる」

「討伐任務として依頼クエストに出してる余裕はないってわけね」

 今もこうして話をしている間に、食われた娘さんはラージトードの腹の中で徐々に消化されていることだろう。

 もはや無傷での救出は叶わないが、それでも命が助かる可能性があるのなら急いで救出に向かうべきだ。

「それってさ」

 ラージトードの皮を剥ぎながら、シークさんが横から口を挟む。

「イオの鑑定魔法を使えばどれが人喰いか分かるんでね?」

 ………………

「……へ?」

 周囲の視線が一気に僕へと集中する。

 僕は目を瞬かせて、思わず自分の顔を指差した。

 いやいや、ちょっと待って。

 それってつまり、僕にラージトードを鑑定しに森に行けってことか?

 流石に危険でしょ。僕食われるって。

 男は成程という顔をして、僕の方に向き直った。

「手伝ってもらえるか」

「……いや……その……」

「ダンジョンにも潜れたくらいだ。森の調査なんて楽勝だろ?」

 シークさん。その根拠は一体何処から来てるんですか。

 確かにダンジョンには行ったけど、それは僕を護衛してくれる人たちがいたからできたことであって。

 僕自身は何の戦闘能力も持たないただの鑑定士なんですよ?

「イオちゃん。手伝ってあげてくれる?」

 僕が言葉に詰まっていると、とどめを刺すようにヘンゼルさんからのお達しが。

「人命が懸かってるって聞いたら冒険者ギルドとしては放っておけないのよ。特別ボーナス出してあげるから、行ってきてちょうだい」

 そんな、人をお金で釣るみたいな発言はやめて頂けますかね。

 まるで僕がお金に目がないみたいな言い方じゃないですか、それ。

 ……はあ……

 僕は渋々頷いた。

 頷かざるを得ない状況なんだもの、これ。

 こうなってしまった以上は仕方ないけれど、せめて準備の時間は貰えますかね。

 そう申し出ると、あっさり許可が下りた。

 流石にこの状態で街の外に出るほど肝が据わってるわけではないのでね。

 ……もう着ることはないだろうと思っていたあの服を、まさか再度着る機会が訪れようとは。

 人生、何が起きるか本当に分からないものである。

「私は此処で待っている。準備が整ったら声を掛けてくれ」

「……分かりました」

 僕は出立の準備をするべく、冒険者ギルドを出た。

 自宅に置いてある旅装束に着替えたら、鍛冶ギルドに預けてある剣を取りに行かないと。

 ……僕、一体いつから冒険者兼業の鑑定士になったんだろう。

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