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第20話 人喰い蛙

 ラージトード。

 鑑定魔法によって判明した蛙の魔物の名前である。

 ラージトードとは、その名の通り巨大なヒキガエルの魔物だ。食欲旺盛な生き物で、人里に現れては家畜などを襲ったりすることがあるので冒険者ギルドではよく討伐対象に上がる魔物として名前を見ることができる。

 大きさは個体によってまちまちだが、大体牛ほどの大きさがあるのが一般的だ。

 空腹時のこいつらに目を付けられたら、人間ですら襲われることがある。なるべく近付きたくない魔物であると言えるだろう。

「……随分大きなラージトードね」

 ヘンゼルさんはラージトードの全身を見つめて、腕を組んだ。

「解体のし甲斐があるわ」

「解体は胃の中身を優先的に頼みたい」

 男は言った。

 彼の言葉に、怪訝そうな顔をするヘンゼルさん。

「胃の中身?」

「こいつが人間を食っているかどうかを知りたい」

「に……」

 僕は絶句してラージトードを見た。

 この異様に膨れた腹……何かを丸飲みにしてるのか。

 確かにこれだけの巨体なら、人間を飲み込むのは容易いだろうが……

 男の言葉にヘンゼルさんの表情が引き締まった。

「お腹を捌けばいいのね? 分かったわ、今すぐうちの解体士にやらせるわ」

 ヘンゼルさんは早足でギルドに入り、大声を張り上げた。

「シークちゃん! お仕事よ、こっちに来てちょうだい!」

「人が……襲われたんですか?」

 僕の問いかけに、男はゆっくりとかぶりを振って答えた。

「その可能性があるというだけだ。この個体が人間を食ったかどうかは、腹を開いてみなければ分からない」

「仮に、人が食べられていたとして……生きている可能性は」

「…………」

 男は答えなかった。

 生存の可能性は、絶望的……か。

「こいつはまた随分でかい奴だなぁ」

 ヘンゼルさんの呼びかけで作業場から出てきたシークさんが、ラージトードを見上げて感心の声を漏らした。

 ヘンゼルさんはいつになく真面目な顔をして、シークさんに言った。

「シークちゃん、今すぐこれのお腹を開いてほしいの。このラージトードが何を飲み込んでいるかを知りたいのよ」

「うっす。それじゃ作業場に運ぶんで、人を集めてもらっていいスか?」

 シークさんはぱしんと自らの掌を拳で叩いて気合を入れると、ラージトードの前足に手を伸ばした。

 ヘンゼルさんはギルドの中に引っ込んだ。人手を集めに行ったのだろう。

 ……何か大変なことになってきたな。

 僕は懐から眼鏡を取り出して、目の前で少しずつ引き摺られていくラージトードを見つめながらそれを掛けた。

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