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第19話 解体依頼

「おはよーっす」

「おはようございます」

「おはよう、シークちゃん」

 今日も気軽な朝の挨拶から、1日が始まった。

 カウンターの上を片付けている僕の元にやって来たシークさんは、裸の胸をぼりぼりと掻きながら、開口一番に言ったのだった。

「イオ、お前ダンジョンに行ったんだって? 何か解体できる魔物は獲って来れたのか?」

 僕が留守にしている間はおそらく鑑定に関する業務は停止していたはずだ。その理由はヘンゼルさん伝いでギルド内には知れ渡っていることだろう。

 僕は首を振って、シークさんの顔を見つめ返した。

「スライムしかいないダンジョンでしたから、解体できる魔物は……」

「スライムか。あれほど狩ってつまらない魔物ってないよな」

 シークさんは肩を竦めた。

「素材が採れない。武器で狩れない。数だけはわんさかいる。俺が冒険者だったら戦うのは遠慮したい奴だよ」

 確かに解体士としては、皮も骨もない魔物ほど狩って旨味のない魔物はないだろう。

 シークさんはぐっと拳を力強く握って、言った。

「やっぱり魔物は骨も皮もある獣系に限る! 綺麗に皮を剥げた時の爽快感! 肉を切り開いた時の手応え!」

「シークさん、声大きいですって。外の人が見てますよ」

 ただでさえ上半身裸のシークさんは人目を引くというのに。

 ああ、道行く人がギルドの中を覗き込んでる。

 何だかすみません。

「作業場の準備の方は良いんですか? そろそろギルドが開く時間ですけど」

 僕は壁に掛けられている時計に目を向けた。

 9時まで後5分……営業の準備を終えていなければまずい時間だ。

 おう、とシークさんは声を上げた。

「そうだな、準備始めるか」

 じゃあな、と手を振って、シークさんはカウンターの奥にある専用の出入口から作業場の方へと出て行った。

 僕もそろそろ、自分の持ち場に行かなければならない頃合いだ。

「それではヘンゼルさん、僕も作業場の方に行きますね」

「分かったわ」

 カウンターの上の掃除を終え、2階へ上がろうとしたその時。

 外から巨大な荷物を引き摺った冒険者らしき1人の男が、玄関口から中へと入ってきた。

「冒険者ギルドというのは此処で合ってるか?」

 虎か何かに引っ掛かれたのだろうか、右目に深い爪痕がある厳格そうな男である。

 外套を羽織っているので中の装備までは見えないが、おそらく剣士だろう。背中に巨大な剣を背負っている。

「ええ。此処は冒険者ギルドよ。何か御用かしら?」

 カウンターから身を乗り出して男を見るヘンゼルさん。

 男はギルドの外に置いてある荷物に目配せをして、言葉を続けた。

「解体を依頼したいのだが」

「解体ね。分かったわ。解体する魔物は外に置いてあるそれかしら?」

 男は頷き、ギルドの外に出た。

 カウンターの外に出たヘンゼルさんがその後に続き、更にその後を僕が追う形で続く。

 ……何だ、これは。

 それを目にした僕は口を半開きにした。

 男が解体依頼を出したもの──

 それは、腹が異様に膨れた巨大な蛙の魔物だった。

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