第12話 パーティ結成
今日もよく晴れている。絶好の冒険日和と言えば、その通りの気候だろう。
ナンナさんから受け取った旅装束に身を包み、腰に剣を納めた鞘を下げた僕は、冒険者ギルドの入口に立って待ち人が現れるのを待っていた。
こうやって立っていると、僕自身が冒険者になったかのような、そんな気分が少しだけする。
鑑定魔法しか使えないなんちゃって冒険者だけどね。
「イオちゃん、素敵ねぇ。立派な冒険者になってアタシも鼻が高いわ」
ギルドの中からヘンゼルさんの声がする。
「立派な冒険者って……僕、転職するつもりはありませんよ? 僕の本職はあくまで鑑定士ですよ」
などとヘンゼルさんと言葉の遣り取りをしていると、通りの向こうからラーシュさんが姿を現した。
後方にいるのがパーティメンバーだろう、ラーシュさんと同い年くらいの男女が2人、歩いているのが見える。
「おはようございます、イオさん」
ラーシュさんは挨拶をしながら右手を差し出してきた。
彼としっかり握手を交わし、僕は頭を下げた。
「おはようございます。本日は宜しくお願いします」
「紹介します。パーティメンバーのルカとロイドです」
「初めまして」
「宜しくね」
2人とも握手を交わし、挨拶をする。
ルカさんは魔道士のようだ。藍色のローブに身を包んだ銀髪美人で、手には宿木のような形状の杖を持っている。
ロイドさんは戦士らしく、重厚そうな鎧に身を包み巨大なハルバードを背負った巨躯の男だ。
圧倒されるなぁ。
「イオさん、立派な法衣ですね。まさか今日のために?」
「ええ、まあ……恥ずかしながら、相応の準備は必要だろうということで、一応」
「気合が入ってますねぇ」
気合が入ってるって、そんな風に見えるのか。
こりゃ、うっかり手抜きなんてしてられないな。
僕は懐から眼鏡を取り出して、掛けた。
僕にとって眼鏡を掛けるという行動は、仕事を始めるという一種のスイッチのようなものなのだ。
活動場所がダンジョンであるとはいえ、これは鑑定の仕事だ。いい加減な気持ちで向き合ってはいられない。
命も懸かってることだしね。
「それでは、早速出かけましょうか」
ラーシュさんは冒険者ギルドの中に入り、カウンターにいたヘンゼルさんに一礼をした。
「イオさんのこと、お借りします。しっかりお守りさせて頂きますので」
「行ってらっしゃい。お土産話、期待してるわよ」
ヘンゼルさんは手を振りながら僕たちのことを見送ってくれた。
ラーシュさんは腰の後ろに留めてあるポーチから地図を取り出して、僕に見えやすいようにそれを広げた。
ラニーニャの街から、ほんの少し離れた位置──そこを指差して、言う。
「此処がダンジョンのある場所です。街から1時間ほど歩いたほどの距離のところにあります」
「随分近い場所にあるんですね」
「そうなんですよ。だから危険度の高いダンジョンなのかどうかを調査する必要があるんです」
地図を片付けて、腰に下げた剣の柄に手を置くラーシュさん。
「何があるか全く分からない未知の場所です。気を引き締めて参りましょう」
ルカさんとロイドさんがその言葉に静かに頷く。
いつになく真剣なその雰囲気に、僕はこくりと小さく喉を鳴らしたのだった。




