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第102話 黒鱗の女

感想を頂きました。ありがとうございます!

コメントを見て「やっぱりそこが疑問になるよなぁ」と思いました。うちの主人公は基本的に事なかれ主義でへたれなので、周囲がせっつかない限りは動きません。やればできる子ではあるんですけどね……

「ファイアボール!」

 フェルディユさんが放った炎の球が、ゲートの一部を吹き飛ばす。

 ゲートは全体に入った罅からぼろぼろと砂のようなものを零して、大きくばらけながら、その場に倒れていった。

 ずしゃ、と砂埃を巻き上げて、瓦礫の集まりと化す。

 絶えず中で渦巻いていた闇が地面に染み込んでいくように薄れて、消えていく。

 周囲で魔物と戦っていた冒険者たちから歓声が上がった。

「やった、壊れたぞ!」

「これで魔物は増えない、後一息だ!」

 フェルディユさんはゲートに翳していた手を下ろした。

「何とか……壊せましたね」

『見て見て、大きいの倒したよ!』

 嬉しそうに宙返りをするスノウ。

「後は魔物の掃討だけですね」

 そう言って周囲を見回すフェルディユさん。

 僕たちの周囲には、魔物の屍が大量に転がっていた。

 フェルディユさんとスノウが倒した分もあるが、その大半は此処にいる冒険者たちが倒してくれたものだ。

 冒険者たちの協力がなかったら、今頃僕たちは魔物との戦いだけで疲弊していただろう。

「イオさん、魔物の鑑定を。冒険者さんたちが魔物を押さえてくれている間に、データを集めたいです」

 そういえばゲートが召喚した魔物についても調査してるって言ってたんだっけ。

 冒険者たちが戦っている今なら、危険は殆どない。仕事にかからせてもらおう。

 僕はその辺に転がっている魔物の死骸に歩み寄り、ひとつずつ鑑定していった。

 人の身の丈ほどもある狼の魔物、ダイアーウルフ。

 紅蓮の鱗が全身にびっしりと生えた蜥蜴の魔物、クリムゾンリザード。

 巨大な薔薇の花の中心から人間の上半身が生えた植物のような魔物、ドリアード。

 発達した脚と退化した翼が特徴的な丸いフォルムの鳥の魔物、ラージドードー。

 実に千差万別である。

 魔物の巣窟と言われている森に出向いたとしても、此処までの数と種類にお目にかかることはできまい。

 それを大勢でとはいえきっちりと倒していく冒険者たちは本当に凄い。

「問題が片付いたら、急いで王都に戻らなければ」

 モノクルの位置を直して、フェルディユさんはぽつりと呟いた。

 大変だな、そう思いながら僕は鑑定を終えて彼女の方に振り向いた。

 視界にフェルディユさんの姿が映る。それと一緒に、

 影色の肌をした黒髪の女が、鳥の足のような形に作った右手をフェルディユさんに向けて振り下ろそうとしている姿が視界の中央に飛び込んできた。

「フェルディユさん!」

 僕は叫んだ。

 僕の視線が捉えているものの存在に気付いたフェルディユさんが後方に振り返る。

 その胸の中央を、

 女の手がまっすぐに貫いた。

「!」

 背中に突き抜けた暗色の手を濡らした血が、雫となって地面に滴る。

 フェルディユさんの手から、書物がごとりと落ちた。

「──門が壊されるなんて……計画が台無しだわ」

 その場に仰向けに倒れるフェルディユさんを冷ややかな目で見下ろして、女は言った。

 昆虫の甲殻のような鱗に覆われた頬を血に濡れた指先で撫でて、ふっと笑う。

「まあ、いいわ……」

 女はそのまま宙に舞い上がり、南の空へと飛んでいってしまった。

 あれが何者なのかという疑問が残るが、今はそんなことはどうでもいい。

 僕はフェルディユさんに駆け寄った。

 フェルディユさんは目をきつく閉じたまま動かない。貫かれた胸の中央から大量の血を流しながら、浅い呼吸を繰り返している。

 まだ生きてるなら、助かる可能性はある。

 僕は可能な限りの大声で、周囲の冒険者たちに呼び掛けた。

「誰か──誰か回復魔法を! お願いします!」

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