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第101話 門を破壊せよ

 冒険者たちが魔物と激戦を繰り広げている。

 その脇を通り過ぎて、僕たちはゲートの前に辿り着いた。

 改めて間近で見ると大きい。ちょっとした建物くらいの大きさがある。

 今からこれを破壊するわけなのだが、本当にそんなことができるのだろうかとちょっと思ってしまう。

 フェルディユさんは息を大きく吸い込むと、右手をゲートに翳して、叫んだ。

「ウィンドファング!」

 収束して牙となった風が、獲物に喰らい付く肉食獣のようにゲートに襲い掛かった。

 びき、とゲートの表面に亀裂が入る。

 ゲートの様子に変化はない。内に渦巻く闇をぐにゃりと歪ませて、新たな魔物を呼び出した。

 下半身が蛇の形をした、人間の女性のような姿の魔物だった。赤く色付いた唇の間から鋭い牙を覗かせて、それはゲートに攻撃を仕掛けているフェルディユさんに狙いを定めて素早い動きで接近してきた。

 あんな人間みたいな魔物は見たことがない。

 僕は魔物を鑑定してみた。


『【ラミア】

 人間の上半身と蛇の下半身を併せ持った亜人種。高い知能を持ち、高等な魔法を操る。』


 ラミアが両手を前に突き出して何かを呟く。

 闇色の雷が生まれ、収束して、それは大きな剣となった。

「フェルディユさん! 魔物が!」

 僕の言葉にはっとしたフェルディユさんが、ゲートに向けていた視線を接近してくるラミアへと移した。

「アイシクルランス!」

 元々はゲートに放とうとしていたであろう魔法をラミアに向けて撃つ。

 氷の槍は猛スピードでラミアの胸めがけて飛んで行き、

 ラミアが振るった剣に斬り払われ、氷の欠片となって散っていった。

『いっくよー』

 スノウが眼前に幾本もの氷の矢を生み出す。

 それは時間差でラミアに降り注ぐが、それすらもラミアは手にした剣で打ち払ってしまった。

『あれー?』

「スノウ、どんどん撃つんだ!」

『うん、分かったー』

 僕の呼びかけに応じ、先の倍の数の氷の矢を生み出すスノウ。

 追加だと言わんばかりに浴びせた氷の矢は、ラミアの尻尾に突き刺さって巨大な氷の戒めと化した。

 尻尾を地面に繋ぎ止められたラミアが表情を険しくして凍った自らの尻尾を見る。

 そこに、フェルディユさんが放った雷撃が降り注ぐ。

 ばりばりっと音を立てて雷がラミアの全身を蝕む。

 ラミアは苦悶の表情を浮かべて自らの胸元を掻き抱くと、金に輝く瞳をフェルディユさんへと向けた。

 ばちっと空気が弾け、フェルディユさんの手から書物が離れて飛んでいく。

 フェルディユさんの意識が一瞬そちらに逸れるものの、彼女は動じた様子もなく、ラミアめがけて魔法を放った。

「ウィンドスラッシュ!」

 生まれた風の刃が、ラミアの腹を大きく薙ぐ。

 上半身と下半身が分かれたラミアは、臓腑を零しながらどさりとその場に倒れた。

 残された尻尾がびくんびくんと震えているが、それも幾分もせずに動きを止める。

 フェルディユさんは髪を掻き上げて、僕の方を見た。

「ありがとうございます。助かりました」

「僕は何もしていませんよ。礼を言うならスノウに」

 フェルディユさんの視線が僕からスノウへと移る。

「ありがとう。貴女強いのね」

 スノウは嬉しそうに翼を広げたり折り畳んだりを繰り返している。

 フェルディユさんは地面に落ちた書物を拾って、ゲートを見上げた。

「ぐずぐずしていると次の魔物が沸きます。急いで破壊しなければ」

「スノウ、さっきやったみたいにこの門に魔法をたくさん浴びせるんだ。できるか?」

 スノウは鳴いて返事をすると、僕の肩から降りてゲートの傍へと飛んでいった。

『スノウ、頑張るよ!』

 ゲートに魔法しか通用しないのなら、僕がゲート破壊で貢献できることはない。

 僕の代わりにスノウには頑張ってもらって、僕は周囲の魔物の動向に注意する役割に徹しよう。

 やっぱりジャド君の方が適任だったんじゃないかって思うが、こうなった以上は仕方がない。

 完全な役立たずにならないように、できることで貢献していこう。

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