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2話 本当は止血どころか傷の修復まで終わっているんだけど。


家への道の確認も済まし、街の探検を再開していると路地で女の子が絡まれているところに遭遇した。


見た感じ待ち合わせをしてた感じではなさそうだ。女の子の方は顔こそ見えないが美人さんぽい。少し観察をしていると一味のリーダーが声を荒げる。


「いいじゃねぇかよ嬢ちゃん!遊ぼうぜぇ!?」


「ほ、ほんとにやめてください!わたし、わたしは...!!」


女の子も負けじと声を張っているが、酷く怯えているようだ。早く助けないと!

急いで男の前に出る。


「ちょっと!やめてあげてください!この子、嫌がってるじゃないですか!」


「あぁ!? なんだこいつ!? この嬢ちゃんの知り合いか!?」


「いや、今会ったばかりですけど。そんなの関係ないじゃないですか!」


「こいつ、正義のヒーローにでもなったつもりなのか!? へっへっへ! じゃあ誠意を見せてもらわないとな!」


誠意?何をすればいいんだろう?


「土下座してお願いしろ!やめてあげてください!ってな。へっへっへ!」


なんだ、そんなことか。死ぬまで俺様の子分!とか言うかと思ってた。


「お願いします。この子にちょっかいをかけないでください。やめてあげてください。」


「...こいつ、本当にやりやがった!プライドねぇのかおい!?」


一味のリーダーは声を荒げながら得物である鉄の棍棒を振り上げる。この男は最初からこれが狙いだったのだ。


「返事は、NOだ!」


男は思い切り振りおろし僕の頭にヒットする。あたりに鈍い音がなり、僕の頭からは血が流れる。


「あぁ、なんてこと!?私のために! ごめんなさい!ごめんなさい!」


女の子は顔を真っ青にして僕に駆け寄ってくる。


しかし僕自身は何ともないのだ。最初の一撃。全然痛くないが勢いがあったため少し切り口から血が出る。傷ができた途端、僕の細胞は異常な速度で修復を施す。結果、傷ができたとほぼ同時に傷が塞がる。


しかし彼女からは頭から血を流しているようにしか見えないのだ。本当は止血どころか傷の修復まで終わっているんだけど。


「...お願いします。彼女に、ちょっかいをかけないでください。」


「ひっ! なんだ、こいつ!イカれてる!おい、お前ら! もう行くぞ!」


自分の渾身の一撃をくらったのにも関わらずまだ他人のために頭を下げる僕を気味悪がり、男たちはそそくさと去って行った。


「君、大丈夫?乱暴とかされてない?」


「逃げているときに少し、腕を...じゃなくて!あなたの方こそ大丈夫なんですか!?」


「僕は大丈夫!体が丈夫だからね!傷も無いよ!」


「本当ですか!? で、でも何で私の事を助けてくれたんですか?」


「そんなの、困っている人がいたら助けるに決まってるじゃない?」


僕は笑顔で言った。これはおじさんからずっと教えられていた事だ。人を恨んではいけない。ちゃんと他人の幸せを自分の幸せの様に喜べる人間になりなさいと幼いころから言われてきた。


彼女はぼぅっとして僕の顔を見つめている。なんだろう。顔に何かついているのかな?それだったら結構恥ずかしいんだが。


「え、えっと...?」


「ふぇ?...っっ!す、すみません!初対面で礼も言わず!本当にありがとうございました!」


「いいよ。それより君の名前は?僕、五十嵐鷹翔。」


「私はシャルロットです!ありがとうございました!えと、いがらしお...うか、さん?」


うん?この世界には発音しにくいのかな?別に名前はいいんだけけど...


「言いにくかったらオーカでいいよ。」


「す、すみません!少し珍しい名前だったので!あの、オーカ...さま?」


「様までつけなくてもいいけどね。」


そっか。僕の名前この世界では発音しにくいのか。少しショックだなぁ。


「困っているときはお互い様!どんどん頼ってよ!」


「い、いいんですか?」


「うん!もちろん!」


「じゃ、じゃあ...。」


そう言って少し間をあける。言いにくいことなのかな?いや、言う覚悟を決めたようだ。


「じ、実は頼みたいことがありまして...。」


「ん?何かな?」


「今、宿を探してまして...。知っている所とかあれば教えてもらえませんか?」


困ったなぁ。僕はこの街どころかここの世界出身ですらないのに。さっきここに来たばかりだし、せめて自分の家の周りのお店だけは覚えようと散歩してたくらいだしなぁ。


「宿か...。」


でも、この子と一緒に宿屋を探したらここらへんのお店も覚えられて一石二鳥になるかもしれないな。


「ごめん、僕もここに来たばかりなんだ。だから一緒に探さないかな?」


「い、いえ!!オーカさまの時間まで奪うつもりはありません!名前だけ教えてもらおうと!一人で探せます!...多分。」


「さっき言ったじゃないか。困ったときはお互いさまだって。それに僕もここらへんの地理を覚えておこうと思ってたんだ。だから、ね?」


「オーカさまがそうおっしゃってくれるなら、是非お願いします!」


「それじゃあ行こっか!」


「はい!」


┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄


「見つけたは見つけましたが...。」


「あいにくぜんぶ満室だったね。」


「はうぅ...。今夜も野宿でしょうか。」


「え!?今夜()ってことは昨日とかからなの!?」


「え?は、はい。そうですが...?三日ほど前から野宿なんですよ?」


「三日前から!?」


「はっ!す、すみません!汗臭かったですか?二日前に水浴びをしたのですが...。ほんとすみません!」


「そういうことじゃないよ!むしろとてもいい匂い...じゃなくて!危ないじゃないか!シャルロットさんみたいな可愛い子が一人で野宿だなんて!」


「か、可愛い!?シャルが、ですか!?」


「君意外に誰がいるんだよ!とにかく宿を探そう!まだどこか部屋が空いている所があるかもしれないよ!」


「可愛い...。シャルが...ですか。...そうですか。」


「シャルロットさん!?どうしてそんなに頬が緩んでるのか知らないけど宿屋を見つけないと安心できないよ!」


「は、はい!そうでした!探しましょう!」


「まだ回ってない所は...。」


やむを得ずスマホをこっそりと出す。マップを見る限りあと一軒だ。


「えーと...。この通りをまっすぐ行ってあそこを右だ。」


「分かりました!行きましょう!」


僕たちは、いや僕はシャルにスピードを合わせながら走った。そうして宿屋に着いたわけだが。


「シャルロットさん、早く聞いてきなよ。」


「は、はい!」


そう言ってシャルロットさんは宿屋の中へと消えていく。


それから二分ほど経った時、入口から出てきたシャルは――何もかも終わった目をしていた。


「しゃ、シャルロットさん?どうしたの?」


「オーカさま...。私、ここのお宿に泊まれるくらいのお金を持っていませんでした...。」


「うっ...。」


よく見てみると宿屋の料金ボードを見ると【一泊、朝食付き:二ゴールドチップ】となっていた。


「それは...誤算だった。」


「せっかくお付き合いいただいたのに...。お金持ってなくてすみません。」


「い、いや!シャルが悪いわけじゃないよ!」


この世界に来たばっかりだしこっちのお金の貨幣価値がよく分かっていなかった。多分ゴールドチップっていうのは1万円くらいの価値だろう。って考えると一シルヴェルは千円、一ブロンズチップは十円か一円くらいの価値だろう。


「ということは...結局シャルは今日も野宿ですかね。」


「それなら――!」


┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄


「ここが僕の家だよ。シャルロットさん。」


僕たちは家に入る。


彼女の名はシャルロットと言うらしい。そして彼女は獣人だった。街で会ったときはフードを被っていたから分からなかったが。彼女の生まれ育った村はある時、山賊に襲われ親を殺されもう何も残らなかったらしい。街に出て生活を、そして自分をやり直そうと思うとさっきの男に絡まれたり。


そういうことで今シャルロットさんには住んでいる家がない。というより住む家を借りるお金もない。


丁度、僕にはその両方がある。1人で住むには広すぎるこの家と神様から頂いた1ヶ月分の生活費。これも普通に使ったら3ヶ月くらい持ちそうだけど。


「ここには僕以外住んでないし今日買った(頂いた)家だから綺麗だよ。もちろん遠慮なんていらないし僕としてはもっと君と仲良くなりたいと思ってるんだ。」


僕は家族を守れなかった。それは家族を守るには幼く無力だったからだ。でも今は守れるものがある。おじさんに頼んで剣術や格闘術も習った。神に貰ったものもある。故に私情や悪事にむやみやたらに使っていいものじゃない。だから僕は助けを求めている人がいたら出来るだけ多く救ってあげようと思う。


「こんなに大きい家...ほんとに私が厄介になってもいいんでしょうか!?オーカ様!」


「うん。僕も1人じゃ寂しいし、何より君が困ってるのに見捨てるわけないじゃないか。僕達さっき出会ったばかりだけれど、もう友達だよ?」


僕は笑顔で言う。思い上がったかな僕。でも大丈夫そうだ。


彼女は満面の笑みでこう言ったから。


「これから、よろしくお願いしますね!オーカ様!」


┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄


「ふっかふかです~!」


今、シャルロットさんは僕と同じくふっかふかのベッドから出られなくなっていた。


「オーカ様!ふっかふかです!ふっかふかです~!!」


もうとにかくふっかふかなのだ。まるでIK○Aかニト○のふかふかベッドみたいだ。お値段以上は伊達じゃない。


「ははは。気持ちいよね、そのベッド。 ところでさ、そのオーカ様って呼び方変えないかな?」


「な、何を言いますか!オーカ様は私にとって命の恩人なんですよ!?あの時オーカ様が来てくれなかったら今頃私はあの男たちに何をされていたことやら...。考えるだけでも恐ろしい...!」


「僕の事を恩人だと思うのはいいんだけどさ、僕はそんなに偉い人じゃないし様付けしなくてもいいよ?」


「むぅ。オーカ様がそうおっしゃるのなら、そうですね。オーカさん(・・)はどうでしょうか?」


うぅ~ん。様付けをとってくれたからいいのかな?少なくとも変な関係には見えないだろう。


「うん、わかった。よろしくねシャルロットさん。」


「そのシャルロットさんっていうのも呼び方変えませんか?オーカさん。」


「そうだね。一緒に生活するのに少しよそよそしいかな。何か呼んでほしい呼ばれ方とかある?」


女子には特定の呼び方じゃないと不機嫌になる習性が一部見られるらしい。名前の語尾に『ちん』とか『たん』とかつける人たち。自分の名前を少し略す人たち。シャルロットさんにもあるのかな?


「私、仲のいい人(・・・・・)にはシャルって呼んでもらってるんです1


「じゃあ僕もシャルって呼んでいいかな?」


「もちろんです!むしろ呼ばれたいです!」


「そんなに!?」


シャルは結構グイグイ来る。


「じゃあ、よろしくシャル!」


「はい!オーカ様!」


┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄


「僕の分のベッドがない!!」


今、僕は大きな壁にぶち当たっている。すなわち寝床だ。


ベッドがない!というか布団とか枕さえない!


あんなに大きいベッドのくせに枕は1人分しかなかった!おかしいだろ、神様!!


「どうしよう。誰かベッド作れるやついるかな~。」


「いざとなれば、一緒に寝ます?」


「いや、それはないよ!?」


というかそんなに顔を赤くするなら言わなきゃいいのに。


僕はこの世界『ティル・ナ・ノーグ』に来たばかりだし、シャルはこの街に来たばっかりだし。


知り合いなどいるはずもなく...途方に暮れていたその時、僕の頭にある考えが思い浮かぶ。


「僕、錬金術師(アルケミスト)じゃん!」


忘れていた。僕は現代の知識を使える錬金術師だったじゃん!


危うくこの世界に来た目的とその手段を忘れかけていた僕は思い出す。ベッド製作で思い出すて。


「オーカさまは錬金術師なのですか!かっこいいです!」


「まぁ、成り行きでね。えぇ~っと。錬金術を使いたい場合は...」


僕は神様のメモを見る。もうメモというか参考書、マニュアル?みたいになってきているな。


「なになに?〝現代技術を召喚、すなわち錬金術を使いたい場合、その被召喚物のイメージを言葉として紡ぎ魔力を込めていく。 P.S魔力のイメージはそっち(鷹翔の世界)でいうガッツとかやる気みたいなもんだ。〟」


ほうほう。いや絶対、魔力そんなんじゃないでしょ。


だが何となく分かった。要は召喚したい物の説明を中二病っぽく決めればいいって事だろう多分。


うん?でもよく考えたら魔力をよく分からずに多用するんだったら魔力の消費が少ない(らしい)コピーの方がいいのかな?



シャルと神様に聞いたがこの世界には魔法がある。そしてその魔法の中には某RPGの様な便利な魔法もある。火の攻撃だったらメラ○ーマだったり、爆発だったらイオ○ズンとか。めっちゃ聞いたことのある名前だけあって使うときイメージしやすそうだ。


とりあえず今はベッドの確保!ふっかふかのベッドをコピーできたらそれで解決だ!


「...よし、やるか!」


右手に魔力を集める感じで、僕は力を込める。


「求めるのは複製、対価は我が力。重複せよ、コピー!」


その瞬間、僕の右手がやや光沢のある白に光り、ベッドを包み込む。やがてその光はベッドの形を覚えたらしく右手から左手に移り更に光は僕の手から離れ手頃な空間へと移動する。ブォン!と音が聞こえると目の前には同じ形をしたベッドが2つあった。


「すごい、僕。」


今日、僕は20秒足らずでベッドを作った(複製した)


「すごいです!オーカさま!これで安心して寝れますね!」


「なんだか今日は色々なことがあって疲れちゃったよ。」


「私もです。寝ましょうか。」


「そうだね。おやすみ。」


「おやすみなさいです。」


そんなこんなで僕たちの出会いの日は終わった。まどろみの中で明日からの異世界生活を楽しもうと思えた。


まさか僕とシャルとの出会いが後に歴史的なことになるのを世界はおろか僕たちもまだ知らない。

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