11話 酒場のメイド服の人は本物のメイドさんじゃないよ!!
途中で原稿がBANしまして...。
本当、すみません!!
「どうしてこんなことになったんだろう。」
僕はぽつりと呟いた。どうしてかって?実は僕が今いる場所は厨房なのだ。あまり声を出すような場所ではない。でもそれより僕はあの人に聞かれたくなかった。もしあの人の耳にでも入ったらどんなご褒美を貰うかわかったものじゃない。考えただけでも息苦しくなってくる。
ここは『ラーベリー・ターバン』というお店だ。このお店は前にシャルと二人で夜ご飯を食べに行った酒場である。酒場の女主人であるエフィーメルさんとその料理が、ここの人気の秘訣だ。
「おーい、鷹翔くん~?仕事は終わったかな~?」
「あ、はい!今終わりました!」
「...うん!お皿ピカピカ!良い働きだわ~!そんな鷹翔くんにはお姉さんからのご褒美が授与されま~す!」
「わぷっ!え、エフィーメルさん!や、やめ、ぷは!」
「相変わらず可愛い反応しちゃって~!お姉さん、鷹翔くんのこと結構好みよ~?」
「わ、分かりましたから!エフィーメルさんも早く仕事に戻って下さいよ!」
「わ~い!鷹翔くんが怒ったぞ~!」
きゃー!と喜びながらとことこ逃げていくその姿は中学生くらいにしか見えない。身長は百五十cmくらいだろう。だが年齢はもう大人なのだ。そして今年で二十歳になるその身長には似つかぬ胸の持ち主でもある。そんな見た目は子供、頭脳は二十歳の人に胸を押し付けられている僕の姿は傍から見れば完全に変態なわけで。僕のことを気に入ってくれてるみたいだけどさすがに人の目を気にしてもらえればな。
その時、心にぐさりと視線が刺さる。後ろを振り返ってみるとジト目でこちらを見るシャルがいた。
シャルはここのお店の指定服であるメイド服にその身を包んでいる。なぜかお店にある服はどのサイズも胸あたりがびろんびろんになってしまっていたので、街の服屋で買ってきたのだ。
それにしてもさっきからちらちらこちらを見てはエフィーメルさんを睨んでいる。そして少し視線を落とし今度は自分の胸を見る。そして何かに絶望しているのだ。お客に声をかけられれば普段通りの愛想のいい笑顔で接客をしているので営業上、何も問題は起きていないが。いったいどうしたのだろう。あとで声でもかけようかな。
そうして見ているとシャルはさっきから同じ動きしかしていないような気がする。接客して、こっちを見て、エフィーメルさんを睨んで、自分の胸を見て、何かに絶望して。ずっとループしてしまっている。まぁ僕もシャルのこと言えないんだけどね。
厨房の仕事してなんで今こうなってるのか考えてまた新しい仕事をして。をさっきから何度も繰り返している。
「...本当になんでこうなったんだろう。」
このカオスな現状の始まりは昨日まで遡る。
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「お願い~!助けてもらえないかな~?」
「あ、あなたはこの前の。どうされたんですか?」
「ちょっと緊急事態なのよ~!話を聞いてもらえないかしら?」
「僕でよければいいですよ。さぁ、入って下さい。」
「おじゃましま~す!」
リビングのソファに僕とシャル、そしてエフィーメルさんが座る。
「そういえばあなたの名前は?」
「そういえば言ってなかったわ。私の名前はエフィーメル・ロン・リクワイテッドと言います。エフィーメルさんって呼んでね?」
「分かりましたエフィーメルさん。それで話とは?」
「実は私が開いているお店なんだけどね~。今従業員が足りないのよ~!」
「でも、この前行った時はウエイトレスさんとかたくさんいましたよね?」
「昨日の話なんだけどね。元々ラーベリー・ターバンには七人のウエイトレス達と三人の厨房係がいたのよ。でもウエイトレスのこの中の三人が産休で二週間ほど店を休むって言われて。流石にほかの四人に三人分多くやってもらうわけにもいかないし。厨房の方からも一人回してもまだもう一人くらい足りない状況でね~。」
「それは、すごく大変ですね。」
「そうなの!しかも厨房のアルバイトの子も一人やめちゃって。厨房は一人しかいないのよ!」
「それは...すごく大変ですね。」
「本当にタイミングが悪い子たちだわ...!もうすぐ夏だし商売シーズンなのに!」
この人の心の闇はすごいのかもしれない。
「それで、僕たちに依頼することって何なんですか?」
「店の子たちが戻ってくる二週間、うちの店で働いてほしいのよ!お願い~!」
「え!?そんな、急に言われても。」
「突然なのは分かってるけどやってもらう仕事は簡単なのよ!お願い!」
「...というと?」
「要は補充要員としてあなた達を雇いたいの。鷹翔くんとシャルちゃんにはそれぞれ厨房とウエイトレスに入ってもらうわ。」
「厨房係とウエイトレス、でありますか。」
「シャルはどうする?」
「そうですね...。エフィーメルさん、ウエイトレスの服はどんなものでしたっけ?」
「え?うちはメイド服だけどなんでそんなこと」
「やりますわん!!!」
「ええええ!?急にどうしたのシャル!?」
「やはり鷹翔さまのペットとして正しい態度を学ばなければなりませんので!」
「酒場のメイド服の人は本物のメイドさんじゃないよ!!」
「それでもメイド服着たいですわん!」
「ほら~、シャルちゃんもここまで言ってるんだし~。」
「うぅ、まぁシャルがやりたいっていうなら...。」
「決まりね!」
「決まりですわん!」
「じゃあ厨房は鷹翔くんに任せてもいいかしら?お皿洗いとか簡単な作業が主だけど。」
「はい。わかりました。」
「じゃあ明日からよろしく~!」
そう言ってエフィーメルさんは自分の店へと帰って行ってしまった。
「あれ、なんで僕たちの名前と家の場所知ってたんだ?」