10話 さて、ひと段落したしご飯にしよう。
僕はビクビクしながら家に着いた。え?なんでかって?そんなのいきなり千二百万円近くも貰ったらみんなもビクビクしながら家に帰るでしょう!?おかげでギルドから家までにすれ違った人に変な目でみられてしまった。
ちなみにシャルはいたって平然としている。なんでそんなに平然としていられるんだろう?物価も僕の考えてるくらいだし凄い大金のはずなのに。
「ねぇ、シャルは――」
「ひゃ、ひゃいい!?」
驚いたシャルはお金の入った袋を落とし、中身が出てしまった。うん、この子も僕と同じだったみたいだ。
「はうっ! も、申し訳ありません!すぐに全部拾いますので!」
「あ、僕も手伝うよ!」
「い、いえ!私がしでかしたことですので!」
「いいよ、一人でやると大変でしょ?協力してぱぱっとやっちゃおう?」
「オーカ様…。ありがとうございます!さっさと片付けちゃいましょう!」
「うん!そうだね!」
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さて、ひと段落したしご飯にしよう。
「ねえ、シャル。今日はお金もいっぱい稼いだしちょっとくらい贅沢してもいいと思うんだ。」
「…ということは?」
「今日は、思い切って外食に――」
「行きましょう!食べましょう!飲みましょう!」
「う、うん!そ、そうしよう!」
そんなに行きたかったのかな、外食に。喜んでくれるならそれでいっか。
「じゃあ、オススメのお店とかってある?」
「ええ!この街一番のお食事処に連れて行って差し上げます!」
「うん!楽しみにしてるよ!」
ティル・ナ・ノーグに来てからの初めての外食か。なんだか楽しみだな!
「お金は…ちょっと余分に三ゴールドチップくらいでいいだろう。」
「よし、行こっか!」
「はい!」
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「ここがシャルのオススメのお店?」
「はい!ここのお店は私の知る限り一番美味しく良心的なお値段で提供してくれる素晴らしいお店です!冒険者さんもよく来てるみたいで、とても活気のある所ですよ!」
「それなら楽しみだね!」
シャル絶賛のお店。それはよくアニメやゲームで見るような賑やかな活気のある酒場のような所だった。しかし外見からは清潔感あふれるとても居心地のいいお店のようだ。
「なんてお店なの?」
「えーと、ラーベリー・ターバンってお店らしいです!」
「ラーベリー・ターバンか。いい名前だね。」
「そうですね!」
僕は転生者、シャルは田舎の村育ちなため、ここの言葉が読み書きする事は出来ない。どうしたものか。読み書きできる仲間がもう一人増えればいいけど...。
「とりあえず、入ってみよっか。」
「ですね!」
扉を開くと中はとても賑やかで居ていてとても楽しい場所だった。所々で依頼をこなした帰りによっているのであろう冒険者パーティが楽しそうに自分達の冒険譚を肴に酒や食べ物を楽しんでいる。
とても人間味あふれる素晴らしい店だった。
「店主はさぞかし面白い人なんだろうね。」
「オーカ様、ここの店主さんとお会いしたことがあるのですか?」
「いいや、でもよく言うでしょ?店の感じが店主の風格を表し、それはそのまま料理の味にもでる。ってね。 」
「そうなんですか!オーカ様は物知りでいらっしゃいますね!」
「ははは。だから、ここの店主さんはとても大らかな人だろうし、出てくる料理はとても美味しい料理なんだろうね。」
2人で店主さんの話で盛り上がっていると不意に後ろから見知らぬ声が飛んできた。
「嬉しいこといってくれるじゃない?」
「あなたは?」
後ろを振り返るとエプロンを着たとても綺麗な人が立っていた。
「私はあなた達が話してた店主さんよ?」
「あなたが!?でも、どうみてもあなたは…。」
「女性の歳のこと考えるなんて失礼ね。まぁでも確かに私はまだ二十歳になったばかりだわ。」
「僕、同い年くらいかと思ってましたよ。」
彼女は童顔のため実年齢より少し若く見える。二十歳であること自体にも驚きだが自分より年上であることまず驚きを隠せない。
「あら、こう見えてもちゃんとお姉さんなのよ?」
「え、ちょ!な、何をっ!」
「ただの接客よ~?」
「わぶっ!」
い、息ができない!急に抱きつかれ頭が急速に使い物にならなくなっていく。というかいい匂いすぎる!
「あらぁ~、こんなに心臓ドキドキしちゃって~。可愛いぃ~!」
「ぷはっ!」
ようやく解放された。まったく、死ぬかと思った!
「それで、ご注文は?」
「あ、オーダー取りに来てたんですか。」
「あら、何に来たと思ったの?」
「…食べに?」
「あら、いいの?」
「勘弁してください!」
料理はめちゃくちゃ美味しかったです。