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プロローグ「静か…というか気まずい部屋にて」

 

誰か中学・高校と青春を満喫した人がいれば教えて欲しい。

これって幸せなのでしょうか? 次の事柄からお考え下さい。


◆ 今ここは俺の部屋です。

◆ 次に部屋には俺の他に女の子が一人います。つまり二人っきりです。

◆ オマケに俺以外の家族は夕方まで帰ってきません。


さて、ハッピーorアンハッピー?


どこからともなく「それなんてエロゲ?」と聞かれそうなシチュエーションに置かれているわけで、これが健全な男子なら誰の目から見ても幸せだ!と口にしそうな空間に今俺はいるイヤッホー。


…と思っていたのは認めます。そりゃ俺だって年頃の男だし、色々と期待だってしていました。

でもその思いはもはや電子顕微鏡でも確認が出来ない程微小なもので、今じゃち~っとも楽しくありません。つーかしんどい。

さてそれは何故でしょう?


◆ 俺は今パソコンとにらめっこをして来週までのレポート課題を仕上げています。

◆ 女の子は自分の家から持ってきた小説を読んでいます。お行事よく正座をしながら。

◆ これといった会話のないままこの状態がかれこれ三時間近く続いています。


ギャーーーーー!!


沈黙に耐え切れず何となく心の中で叫んでみる。

だってお互いが言葉は不要な関係だったらそれでもいいけれど、これってどうよ、この部屋の発する音のメインがヴ~~~ンっていうパソコンの起動音って?


成瀬(なるせ)先輩、お手洗い借りてもいいですか?」

「ん? ああ、はいはいどーぞ。部屋出て突き当たりね」

「ありがとうございます」


彼女(一応、念のため説明しておくけどここでの「彼女」は「ガールフレンド」じゃなくて三人称の「She」の方ね)は読みかけの本にしおりを挿してそれをコタツ用のテーブルに置き立ちあがった。

カウントしてないから確かじゃないけど多分数十分ぶりに彼女の声を聞いたと思う。


無感情な声と表情、だからこそ余計にこうも場の空気が冷たくかつ重く感じるのかもしれない。

彼女とはつい半月程前に通学途中にちょっとしたことがキッカケで知り合った。


俺の一コ下で名前は(かみ)(かわ)()()。今年から俺と同じ浦園(うらぞの)大学(だいがく)に通うことになったおとなしめの女の子。


腰の辺りまで伸びたストレートな黒髪と化粧に頼らない素っぴん顔が都会的な服装とこれ以上ないアンバランスさを生み出している。マイナスの意味で…。

まあ簡単に言えば着こなしてない、ただ着ているだけっていう感じ。

今日も初めて会ったときも同じくファッション雑誌の表紙の子が着ていそうなひらひらとした白いブラウスにショートパンツといった格好。女子の中では人気ブランドの物らしいけど残念なことにそれが活かされていない。


ファッションに疎い俺ですらそう思うのだから、流行に敏感な女子からすれば神河からは違和感しか覚えないんじゃないか?彼女の前では違和感がニートになる日はなさそうだ。わぁ、好景気。

まだ幼さや素朴さが残る可愛らしい顔立ちをしているのに…、勿体ない。

ちなみに知り合って二日目の神河に俺は「抗う(カントリー)田舎モノ(レジスタンス)」と命名しました。今になって考えると中二病的発言だったな…。

いやなんか見た感じ、田舎モノが無理矢理都会っ子に対抗しているように見えたもんでつい。

かくいう俺もれっきとした田舎モノですが。


まあ初めて会って以来行き帰りの電車でよくバッタリ顔合わせになるから車内を共にしている。

といっても二人とも今と同じく会話という会話のない「電車の中ではお静かに」というマナーを模範とばかりに遵守しているというオチ付きだったりする。

ついでに言うと前述の通り神河とは彼氏彼女の関係ではない。せめて友達以上にはなって欲しいものです。


会って数日はお互いに見かけたら挨拶を交わす程度だったのにあることがキッカケとなり、今はある種の「仲間」と化している。

今日もその「仲間」繋がりで神河はウチに来ているはずだが、全く目的と今の行動が一致してない。


―ガチャ。


扉が開いた音と共に神河が戻ってきた。

「先輩、ありがとうございました」


さすがにこれ以上二人っきりで沈黙が続くのはしんどい。彼女に聞いてみよう。

「なあ、ひとつ聞いていい?」

「え、何ですか?」


キョトンとしてる彼女の姿には不意にも可愛らしさを感じてしまう。

「神河って今日何のためにウチに来たんだっけ?」

「何って…昨日電車で言った通りですけど?」やっぱりキョトン。

「いや~、だったらさぁ何かすることがあるんじゃないかなぁ?」

「え…何かありますか?」

キョトン継続中。これが演技だったら怒るぞコノヤロー。


「だって俺ら二人でサークルを作ったんだよ、サークルを?今日はその記念すべき初めての活動じゃなかったっけ?」

「ええ、ですからこうやって活動をしているんですよ」

 そう言って神河は再び読みかけの本を手にした。

「それじゃあ電車内と変わらないし…」

「でも他に何かありますか?青春を感じることの出来ることって?」

「……」

俺は何も言えず、再びパソコンの画面の方を向きテキトーにネット内を巡回することにした。


メンバー二人が週二(土日)で活動。活動場所は大学内ではなく何故か俺の部屋。


サークル名は「ローカリズム」…って何コレ?


と当たり前のように質問したところ、神河は上京思考とか持たずに田舎の人間の水準アップという願いも込められているとそのときは目を輝かせながら教えてくれた。

本当にコレにするの?やめとかね?と一応は先輩としてアドバイスしたけれど、どうやら神河はこのネーミングが気に入ったらしいのでこの名前になりました。まあ部長は彼女ですし。


と言ってもサークルのコンセプトは田舎者対象と言いますか、本当の目的は人見知りな一間の水準アップが最優先事項。ただし具体的な活動内容は未定。オマケに大学非公認なので部費なんかもありません。


俺、成瀬(なるせ)穂積(ほづみ)と神河陽乃がその「仲間」になったのは色々な〝共通点″があるから。

俺たちはある方法を探している。

遅咲きの青春を楽しめる方法を。










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