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俺の小説、教科書に載る

朝――ナローは珍しく爽やかな目覚めを迎えていた。


昨日の取材旅は地獄だったが、それだけに筆は進んだ。

なんといっても、老魔族の語りをモチーフにした短編は自分でも納得の出来だ。


「こういうのが読まれてほしいんだよなぁ……!」


……そして数時間後、彼はこう思うことになる。


(……こんな形で読まれるとは、思ってねぇ!!)


 


 



ガチャァァァァン!


食堂のドアを破壊しながら、いつもの男が登場する。


「小説家ァァァァ!! お前の小説、王立教育省に採用されたぞォォ!!」


「え、何それ怖い。どういうこと!?」


「“勇気と絆を学べる教材”として、小学三年の国語で全文朗読ッ!!」


「ねぇ待って!? あのラストにちょっと残酷な描写あったやつ!?」


「“火山に消えた長老”が“勇気の象徴”として毎朝朗読されているぞお!」


「子ども泣くぞ!?」


 


 


◆◆


エディナがティーカップ片手に登場する。


「ナローさん、これはチャンスですよ。教育の現場に浸透すれば、ブクマどころか教科書ルートです」


「いや“ルート”って何!? 書きたいのは教科書じゃなくて、物語なんですけど!?」


「大丈夫です。“ナロー先生の教室で学ぶ、感情の奥深さ”という新企画も立ち上がるそうです」


「俺いつの間に先生になってんの!?」


そこへ、町の子どもたちが駆け寄ってきた。


「せんせー! “火山の怒りと老魔族”のお話、好きー!」


「“うぉぉぉ! 人間たちよ、我らを忘れるなー!”ってセリフ、かっこよかった!」


「そこトラウマポイントなんだけどぉぉぉ!!」


 


 


◆◆◆


ナローは混乱の中、王立教育省の校舎に連行されていた。

扉の前で待っていたのは、まさかの――校長だった。


「ナロー先生! あなたの“情熱的な筆致”に感銘を受けました! 次回作もぜひ授業で使わせて!」


「俺の意志が問答無用で教材化されてるのおかしくない!? 教育界、攻めすぎじゃない!?」


「“若者よ、心に火山を持て”――あの一節には泣かされました!」


「それ編集精霊が勝手にサブタイトルに入れたやつぅぅぅ!!」


 


 


◆◆◆◆


帰宅後――


「俺はただ、地獄の火山でインスピレーション得ただけなのに……なんでこんな事に……」


エディナは横でさらりと口を挟む。


「ちなみに、次は“保健体育”とのコラボ依頼が来ています」


「どこで!? どこにそんな要素あった!?」


「“熱き老魔族の生殖適応期”という副読本として――」


「だから編集精霊は自由すぎるって言ってんだよォォォ!!」


 


 



夜、ナローは机に向かいながらひとりごちた。


「……“書かれた物語”は、どこでどう読まれるか分からない、か。覚悟がいるな小説家は。


でもまぁ……ブクマは増えたし、いいか」


【新作ブクマ数:+318】


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