企業から異世界転職、職業:小説家(たぶん)
新作です!
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俺の名前は――ナロー=ヤマダ。
社畜歴10年、休載歴ゼロの小説読みおじさんである。
「はい……はい、明日までに資料作成ですね……。あ、いえ、徹夜は……あっ、かしこまりました!」
いつものように会社のデスクで電話を切った瞬間、俺は眠りに落ちた。
いや、たぶん過労で死んだ。
……そして、目を覚ますと。
「ここは……森? 木、草、謎のスライム……」
目の前をぷるぷるした生き物が通過していく。
空には2つの月が浮かび、背後からは謎のナレーションが響いた。
『異世界へようこそ、ナローよ。汝の職業は“小説家(ランクF)”と判定された』
「小説家て!」
まず“職業に小説家”ってあるの!?
勇者とか魔法使いとか、そういうのじゃないの!?
『スキル:文章魔術(初級)、プロット生成(誤差あり)、あらすじ短縮(強制)を授けよう』
「便利そうで全然役に立たなそう!!」
俺は叫んだ。というかツッコんだ。
だがもう遅い。俺は完全に**“異世界で小説家”**として生きていくことになった。
──翌日。
「ほほう、貴様が噂の“語りの者”か」
唐突に現れた角付き美女。赤いマント。長いツインテール。
明らかに魔王だ、どう見ても魔王。
「魔王ルリスと申す。貴様の書いた物語『追放された辺境の鍛冶師が最強だった件』……読みふけってしまったぞ」
「いや読んだんかい!」
「で、続きを所望する。我が軍の士気が上がるのだ」
「いや、使い方よ!!」
──さらにその夜。
「俺の小説が……王国で教材として採用された!?」
「そして勇者様が嫉妬してるそうですよ〜〜、ナロー先生」
そう言って現れたのは、小さな編集精霊・エディナ。
手には赤ペンと無限の修羅場を握りしめている。
「次の更新、明日までにお願いしますね! “語りの賢者”って、今バズってますんで!」
「ちょっと待て、俺、異世界でまで締め切りに追われるの!?」
こうして俺は、異世界で小説家として“なろう”ことになった。
魔王に褒められ、王女に読まれ、勇者にライバル視される日々――
俺の異世界スローライフ(全然スローじゃない)が、いま始まった。