帰宅
もう少しのんびり描写も描きたいのですが、そろそろイベントがないとダレるかなぁ。
明日は飲み会なので、次の更新は明後日になると思います。
翌朝、目が覚めてカーテンを開ける。
ちょうど窓から見える方角に灯台があり、朝の光を受けて真っ白に光っていた。
「ラックー!朝ごはん出来てるわよー。顔を洗っていらっしゃいな。」
階下から呼ぶ叔母さんの声と美味しそうな食事の匂いに誘われ、
急いで着替えを済ませた僕は、階段を降りてゆく。
洗面所で蛇口をひねると、冬の近さを感じられるような、冷たい水が勢いよく流れた。
「おはよう!よく眠れたか?」
「叔父さんおはよう。お陰様で、グッスリだったよ。」
「そうか。それはよかった!朝飯食ったら、灯台まで送ってやるな。」
叔父さんは伸び放題の頭をワシワシと搔きながら、食堂の方へ歩いて行った。
今年で50歳を迎えるはずだけれど、日々飛行船を操るからか、張りのある筋肉は衰えを感じさせない。
僕も顔を洗い終えると、叔父さんの後を追って食堂へ急ぐ。
「新しいタオルを出してなくて悪かったねー!勘弁しておくれよ。」
「大丈夫!ドライヤーで頭を乾かすついでに、顔も乾かしちゃったよ。」
フライパンで焼いていたベーコンを叔母さんがお皿によそい、食卓へもってきてくれた。
「さぁ、みんなで食べましょ!ラックが昨日採ってきてくれたマホベリーで、蒸しパンも作ったよ!」
「「「いただきまーす!」」」
3人の声が揃い、束の間の朝食時間。
マルバ鳥の目玉焼きにボックリーのベーコン、マホベリーの蒸しパンと搾りたてのミルク。
素朴だけれど、とってもいい味だった。
「蒸しパンは多めに作ったから、あとでお義父さんに持っていってあげてね!さぁ!遠慮なくたくさんお食べ!」
美味しくてにぎやかな朝食を済ませると、叔父さんと灯台に向かって出発した。
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小一時間ほど歩くと、灯台はもうすぐそこだ。
さっきまでは天辺付近まで見えていた灯台も、ここまで来ると見上げるだけで首が痛くなる。
この灯台の根元に僕の生まれ育った家がある。
うちは代々灯台守をして来た家系で、この灯台を見守るのが仕事だ。
「じいちゃん、ただいま!」
「おぉ、ラック。帰ったか。ゾルもお疲れ様だったのう。」
「なんの何の!親父のかわいい孫をお連れしましたぜ。」
叔父さんがニカっと歯を見せて笑う。
「そうそう!嫁さんから蒸しパンの差し入れだ!昨日ラックがマホベリーを大量に採ってきてくれたから、美味いぞ!」
「ミーザの作る料理はどれを食べても美味いからのぅ。ありがたくいただくわい。
ラックもマホベリー、ありがとう。」
「今回はとっても良い穴場を見つけたんだ!また採ってくるよ。」
「湖の北の方だから、迎えに行くのにはちょいとばかし気を使うがな!がはははは。」
湖の北のそのまた北には大きな山脈が控えていて、これからの季節は時折北から山越えの突風が吹くことがある。
そんな日には叔父さんの飛行船ではパワーが足りず、なかなか進めないんだそうだ。
「傷薬のストックが少なくなってきておるから、あと1回か2回は採集に行ってきてもらえると助かるんじゃがな。」
じいちゃんは灯台守をやりながら、薬師としても働いている。
町にも薬師はたくさんいるけれど、じいちゃんの薬が良く効くといって、わざわざうちまで足を運んでくれるお客さんも少なくない。
「まぁ、この調子だと、あと一週間くらいは大丈夫だろうさ!」
「気象部も、来週からは寒くなるって言ってたからね。」
「よろしく頼むわい。さてさて、立ち話ですまなんだ。お茶を入れるから座っておくれ。」
じいちゃんは奥の台所へ蒸しパンを置きに行くと、代わりにハーブのお茶を用意してきた。
独特の香りがするハーブのお茶だけれど、我が家では昔から伝わる伝統レシピのお茶らしい。
少し舌先にピリリとするけれど、後口はさわやかだ。
のんびりと3人でお茶を飲んでいると、突然激しく扉をたたく音が響いた。
「サークリさん!大変だ!灯台の明かりが変だよ!」
扉を開けると、いつも薬を買いに来てくれるサルトさんが、息を切らせて立っていた。
どうやら走ってきてくれたらしい。
僕らも慌てて天窓から灯台を見上げる。
すると、いつもは真っ白に光っている灯台の明かりが、真っ赤に変わっていた。
「こりゃ、大変じゃ!」
1200年以上もこの地を見守り続けてきた灯台だが、赤く光るという事象はじいちゃんも聞いたことがないらしい。
のんびりとしていた毎日が、この日を境に大きく変化してゆくのだった。